国家公務員の資格・試験とは?国家公務員採用試験の試験概要と解説
国家公務員として働くには、必須試験として実施されている国家公務員採用試験を受けて合格する必要があります。国家公務員として就職するための資格が得られるのが国家公務員採用試験です。本記事では、国家公務員を目指す上で必ず合格しなければいけない国家公務員採用試験などについてご紹介します。
国家公務員に必要な資格とは?
「国家公務員」という資格制度はないものの試験への合格が必須
国家公務員とは、一般的にいう「公務員」のうち、国が運営する機関や行政執行法人などに所属する職員のことで、その職務や給与に関しては(特別職を除き)国家公務員法によって規定されています。
「国家公務員」という一律の資格制度はありませんが、ある程度共通した国家公務員採用試験に合格しなければ、国家公務員になることはできません。
国家公務員採用試験には職種によって様々な内容があり、資格試験というよりは一定程度の勉強や専門技術が必須となる職員採用試験となっています。
国家公務員は一般職と特別職に分かれている
国家公務員は特別職と一般職に分かれており、一般職の場合は国家公務員法が適用されます。一般職は、一般省庁や行政執行法人の職員など、特別職以外の全ての国家公務員を指し、就業人口も多くなっています。
国家公務員 一般職
基本的に一括の国家公務員採用試験を課せられるのはこの一般職です。一般行政職などに勤務する給与法適用職員をはじめ、検察や国立印刷局などに勤務する行政執行法人の職員、航空管制官や皇宮護衛官などがこの一般職に含まれています。
特別職 特別職
特別職は、国会議員、特に内閣総理大臣、国務大臣などの特別な役職のある国会議員や、裁判官、裁判所職員、国会職員、自衛官、大使館に勤める大使・公使など特別な専門性をもって仕事に従事している職業を指します。
国家公務員採用一般職試験の概要
国家公務員採用一般職試験には所定の年齢制限がある
国家公務員採用一般職試験を受けるにあたって受験資格が設けられていますが、受験資格として掲げられているのは基本的にある程度の学歴と一定の年齢制限のみとなっていますので、比較的門戸は広く設けられていると言えるでしょう。
試験 | 受験資格 |
---|---|
高卒者試験 | 高校卒業見込み、または卒業後2年以内の方(中学卒業後2年以上5年未満の場合も受験可能) |
大卒程度試験 | 21歳以上30歳未満 |
社会人試験 | 40歳未満の方(高卒者試験の受験資格を有する方を除く) |
例えば、大卒程度試験においては「21歳以上30歳未満」となっています。(大学・短期大学または高等専門学校卒業および卒業見込みの場合は21歳未満でも受験可能)
大卒程度試験を受ける人が最も多いのですが、試験にはもう2種類あって「高卒者試験」と「社会人試験(係員級)」があります。高卒者試験の場合は、「高校卒業見込み、または卒業後2年以内の方」となっていて、中学卒業後2年以上5年未満の場合も受験が可能であるとのことです。
また、社会人試験というものも用意されていて、この場合は「40歳未満の方」が受験資格として挙げられています。なお、高卒者試験の受験資格を有する方を除く、という規定があります。
国家公務員採用一般職試験は「行政職」と「技術職」に分かれる
国家公務員の中でも、「一般職」に属する「給与法適用職員」向けの試験としては、まず大きく分けて、「行政職」と「技術職」に分かれています。
行政職 | 技術職 | |
---|---|---|
職種 | 行政のみ | 電気・電子・情報、機械、土木、建築、物理、化学、農学、農業農村工学、林学 |
試験 | 地域別に試験がある | 全国共通の試験 |
試験内容 |
■一次試験
■二次試験
|
|
行政職区分の場合は「行政」の区分のみで、技術職区分の場合は、電気・電子・情報、機械、土木、建築、物理、化学、農学、農業農村工学、林学に分かれています。
行政区分は地域別に試験があり、技術職区分の試験は全国共通の試験として実施されます。また、試験内容も区分によって分かれています。
行政区分の試験内容は基礎能力試験、専門試験、一般論文試験を一次試験として課せられ、二次試験は人物試験という個別面接試験を課せられます。
技術職区分の試験内容は、基礎能力試験、専門試験、記述式の専門試験(区分に応じた必要な専門知識に関する専門試験)となっています。
国家公務員採用一般職試験の大まかな流れ
- 2月頃に受験案内を確認し、4月ごろにインターネットで受験申し込み。6月に第一次試験を受ける
- 第一次試験に合格後、希望する官庁訪問を行う
- 7月中旬頃に第二次試験を受ける
受験案内確認~受験申し込み~第一次試験の受験
国家公務員採用一般職試験の場合、受験から採用までに一定の流れがあります。まずは、例年2月頃に受験案内がホームページに載ります。そして4月頃を目処にインターネットによる受験申し込み受付がスタートし、6月に第一次試験が実施されます。
第一次試験は、「基礎能力試験」、「専門試験」「記述式専門試験あるいは一般論文試験」に分かれています。基礎能力試験は択一式40問で試験時間2時間20分、専門試験も択一式の40問で試験時間は3時間です。
一般論文試験は1題出題で1時間の試験となっており、記述式の専門試験は1題出題で、試験時間は試験内容により異なる時間となっています。試験内容は、建築以外は1時間の記述式試験で、建築の場合は建築設計製図に関する問題が課せられ、1題出題で試験時間は2時間となっています。
第一次試験に合格後、行う官庁訪問
第一次試験に受かると「官庁訪問」という、各府省庁での面接を兼ね、希望する官庁への訪問を行います。
官庁訪問は電子メールやウェブシステム経由での予約を受け付けていて(予約を取らない府省等もあります)、予約した日時に各府省を訪問し、業務説明や面接などを受けることになります。志望動機などある程度ちゃんと聞かれるので、自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。
個人面接にあたる第二次試験
7月中旬頃から第二次試験を課せられます。第二次試験は「人物試験」で、要は個人面接です。基本的に一般企業の就職面接と同じようなことを聞かれますので、よどみなく質問に答えられるように対策しておきましょう。事前に所定の性格検査を課す場合もあります。
国家公務員採用一般職試験の倍率
平成30年度に実施された試験のデータが公表されていますので、それをもとに実質倍率を算出すると国家公務員採用一般職試験の実質倍率は3.8倍ほどとなっています。ある程度は高いものの、そこまで極端な狭き門ではありません。
国家公務員採用総合職試験の概要
国家公務員採用総合職試験には所定の年齢制限がある
国家公務員採用総合職試験も国家公務員採用一般職試験と同じく、受験資格にはある程度の学歴と一定の年齢制限が設けられています。
試験 | 受験資格 | |
---|---|---|
大卒程度試験 | 教養区分 | 21歳以上30歳未満(大学卒業および卒業見込みであれば21歳未満でも受験可能) |
教養区分以外 | 21歳以上30歳未満(20歳でも受験可能) | |
院卒者試験 | 法務区分 | 30歳未満で大学院卒業見込みの者(司法試験合格者等) |
法務区分以外 | 30歳未満で大学院卒業見込みの者 |
30歳未満の年齢制限がありますが、社会人試験はなく「院卒者試験」と「大卒程度試験」に分かれています。
院卒者試験は30歳未満で大学院卒業見込みの者、大卒程度試験は21歳以上30歳未満とされていますが、大学卒業および卒業見込みであれば21歳未満でも受験可能、また教養区分は20歳でも受験可能となっています。
院卒者試験は法務区分とそれ以外、大卒程度試験は教養区分とそれ以外に別れています。院卒者試験で法務区分の試験を受ける場合は、司法試験合格者等を対象にした試験となっています。
院卒者試験、大卒程度試験それぞれの試験区分
大卒程度試験 | 院卒者試験 | |
---|---|---|
試験区分 |
|
|
院卒者試験の試験区分は、法務区分(司法試験合格者等を対象)と、法務区分以外(行政、人間科学、工学、数理科学・物理・地球科学など8科目)となっています。
大卒程度試験の試験区分は、教養区分(専門試験を課さない代わりに総合的な判断力を重視し、総合論文試験と企画提案試験を課す)と、教養区分以外(政治国際、法律、経済など9科目)となっています。
第一次試験と第二次試験がある
試験 | 試験内容 | |
---|---|---|
大卒程度試験 | 教養区分 |
■第一次試験基礎能力試験、総合論文試験 ■第二次試験政策課題討議試験、企画提案試験(小論文及び口述式)、人物試験 |
教養区分以外 |
■第一次試験基礎能力試験と専門試験(いずれも多肢選択式) ■第二次試験記述式専門試験、政策論文試験、人物試験、英語試験 |
|
院卒者試験 | 法務区分 |
■第一次試験基礎能力試験 ■第二次試験政策課題討議試験、人物試験、英語試験 |
法務区分以外 |
■第一次試験基礎能力試験と専門試験(いずれも多肢選択式) ■第二次試験記述式専門試験、政策課題討議試験、人物試験、英語試験 |
院卒者試験、大卒程度試験ともに、第一次試験と第二次試験に分かれています。
法務区分以外、教養区分以外の第一次試験においては基礎能力試験と専門試験(いずれも多肢選択式)が課されます。
法務区分以外、教養区分以外の第二次試験では、一般職試験よりも多い試験が課せられます。院卒者試験は、記述式専門試験、政策課題討議試験、人物試験、英語試験となっています。大卒程度試験では記述式専門試験、政策論文試験、人物試験、英語試験となっています。
院卒者試験の法務区分の場合は、第一次試験に基礎能力試験、第二次試験に政策課題討議試験、人物試験、英語試験が課せられます。
大卒程度試験の教養区分では、第一次試験に基礎能力試験、総合論文試験、第二次試験に政策課題討議試験、企画提案試験(小論文及び口述式)、人物試験が課せられます。
国家公務員採用総合職試験の倍率
国家公務員採用総合職試験は比較的倍率が高く、特に大卒程度試験の倍率が高い傾向にあります。大卒程度試験の最終倍率は14.5倍にも登ります。
院卒者試験では最終倍率は4倍となっていて比較的低いですが、それでも大卒程度試験と合わせた最終倍率は11倍で、国家一般職に比べると非常に高い倍率を推移しています。
なお、国家一般職と違って第二次試験の最終合格発表後に官庁訪問があり、最終合格をもらえばほぼ100%官庁訪問は合格すると言われています。
国家公務員採用一般職、総合職以外の試験について
国家一般職、総合職以外の試験の合格率
国家公務員採用試験は、一般職・総合職の他にも多種多様な試験が用意されていますが、基本的に多くの職種について倍率は2倍〜8倍程度を推移しています。例えば、国税専門官が3.4倍、財務専門官が3.9倍、裁判所事務官一般職が7.8倍、などとなっています。
最も倍率が高いのは立法府(国会)実施の試験です。衆議院事務局は総合職が109倍、一般職が32.9倍となっていて、非常に高い倍率を推移しています。
なお国家公務員採用試験の中でも最大の倍率を誇るのが国立国会図書館の試験で、総合職は108.5倍、一般職が168.7倍、資料保存専門職員が57倍と恐ろしく高い倍率になっています。
立法府以外では、皇宮護衛官が11.7倍、裁判所事務官総合職が28.1倍、が比較的高い倍率の試験となっています。
国家公務員の資格試験対策をするための学校等
教科によって専門科目を学べる大学、及び予備校に通うのが定石
国家公務員を目指す上で、何か特別な資格がなければならない、ということはありませんが、国家公務員採用試験を突破しなければ国家公務員になることはできませんし、試験を受けるにはそれなりの学歴が必要です。
学歴に関しては、高卒〜院卒まで、受験区分によって別れますが、科目によっては非常に専門性が高くかつ高倍率の非常に狭き門となる試験もあります。政治・法律・国際の倍率も比較的高いので、法学部や政治学部、経済学部などを出ておくとその分有利となる可能性があります。
国家公務員採用試験は突破するのがある程度厳しいため、高校・大学・大学院に普通に通って専門性を身につける他に、公務員試験対策を行っている専門学校に通うと、試験対策に集中してみっちり取り組むことができます。
公務員専門学校にはダブルスクールができるところもありますし通信講座もあります。必ずしも大学卒業見込み段階で受ける必要はなく、30歳未満であればやり直しも効くので、よほど試験を急がなければ大学卒業後に公務員試験を受けるという選択肢を取るのもよいでしょう。
国家公務員の資格・試験まとめ
国家公務員試験の倍率は試験区分によっては非常に高い。専門知識を磨こう
国家公務員には、所定の年齢制限の範囲で採用試験に受かれば誰でもなることができますが、試験の内容はある程度難しく、区分によっては非常に高い倍率を誇ります。
また、各職種ごとに採用枠の定員も決まっているため、希望する試験の受験者数によってはかなり厳しい競争にさらされる可能性があります。
特に国家公務員は安定してある程度高い年収を得られるということもあり人気が高い職種なので、試験の倍率が高くても勝ち残れる専門知識とある程度以上の勉強への自信をしっかりつける必要があります。
国家公務員の参考情報
平均年収 | 600万円~700万円 |
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必要資格 |
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資格区分 | 試験合格 |
職業職種 | 公務員 |
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