お菓子職人、パティシエの仕事とは?勤務先別仕事の特徴と魅力
子どもたちにも人気の職業、パティシエ。甘い香りに包まれ、華やかなイメージのある職業ですが、実は地道な努力を続けた上に成り立っているようです。今回はこの記事でパティシエの勤務先や、仕事の特徴、魅力などについてご紹介します。
パティシエとはどんな仕事?
お菓子を作る職人をパティシエと呼ぶ
パティシエ(pâtissier)はフランス語で、お菓子(洋菓子)をつくる職人を意味します。本来は男性職人をパティシエ、女性の職人はパティシエールと使い分けますが、日本では男女ともにパティシエと呼ぶのが一般的です。
現在日本でパティシエとして働く人は、学校で基礎的な成果技術を身に着け、製菓衛生師という資格を取得している場合が多いようです。
常に同じクオリティのスイーツに仕上げるのがパティシエ
家庭のお菓子つくりとは違い、パティシエとして仕事をする以上は、同じお菓子を、見た目の美しさ、味の質ともに毎回同じクオリティで仕上げられることが基本です。口にするたびに味が違うお菓子ではお客様の満足は得られないからです。
クオリティを均一にするには、正確な軽量や最適な温度、焼き加減など、それぞれのベストなタイミングを見極める必要があります。
生地やクリームの状態が、どんな状態ならベストかというのは、何度も目で見たり触ったりして体に覚えさせます。パティシエの仕事は、経験や日々の努力によって身に着けた技術が活きる職業といえるでしょう。
スピードや効率も要求される仕事
パティシエの仕事は一日のうちに、素材も工程も異なるお菓子を同時進行でつくることがほとんどです。開店時間や提供するタイミングは決まっているので、限られた時間を効率よく使う能力も求められるでしょう。
仕事場によっては複数のパティシエで作業を分担
スピードや手際の良さが求められるとはいえ、一人ですべてのお菓子をつくりつづけるのにも限界があるため、勤務先によっては複数のパティシエで作業を分担する場合もあります。
分担の方法は経営者の考えにもよります。材料の準備をする人、生地を作成する人、仕上げをする人と工程ごとに分かれる場合や、生菓子担当、焼き菓子担当など商品ごとに分かれるケースもあります。
ローテーションで担当を変わることもありますが、基本的にそれぞれの作業は経験年数やスキルによって任せる人を振り分けることが多いです。
繁忙期は泊まり込みで仕事をすることも
クリスマスやバレンタインなど、イベントやお祝い事が多い時期は、お菓子の需要も多いパティシエの繁忙期です。1年のうち、クリスマスは最も忙しいといわれ、勤務先によっては泊まり込みの作業になることもあります。
通常時でも予約注文が立て込んだり、大規模なパーティに対応するときなどは、残業をするか朝3時頃から出勤して仕込みを開始し、時間に間に合うように作業することもあります。日によっては早く帰れる可能性もありますが、基本的には不規則になりやすく、体力的にハードな仕事といえるでしょう。
パティシエの仕事は意外とハード。体力が必要
パティシエはどちらかというと優雅なイメージがあるかもしれませんが、意外と力仕事が多い職業です。大量のスイーツをつくるには、何キロもの小麦粉や砂糖を運んだり、クリームを泡立てないといけないからです。
勤務先にもよりますが、仕込みや準備、後片付けのために朝早く出勤して夜遅くまで働くことが多く、拘束時間は長めです。
小規模な店舗であれば定休日を設けていることもありますが、予約状況によっては夜が明けるまでに出勤し、深夜まで働くこともあるでしょう。ホテルやレストラン、年中無休の店舗などでは予約に合わせてシフト制の勤務になるケースが多いです。
力仕事もあり、不規則な勤務体制になることも多いので、体力も必要になると考えられます。
パティシエの給料レベルは低めの傾向
勤務場所によるものの、パティシエの給料はほかの職業に比べ低い傾向が多いようです。一般的には15~18万円前後の給与からスタートし、年収200~300万円といわれています。
ただ、自分の考案した商品がヒットしたり、ファンが増えれば一気に年収がアップする可能性もあるので、夢のある仕事には違いないでしょう。
パティシエの仕事はお菓子をつくること
パティシエの仕事は、お菓子をつくることに尽きます。
一般的にはケーキをつくるイメージが強いかもしれませんが、下記の一覧を見ても、パティシエが手掛けるお菓子の種類はさまざまです。
- 生菓子(ババロア・ムースなど)
- 半生菓子(フルーツケーキなど)
- 焼き菓子(クッキー、マドレーヌなど)
- 氷菓(シャーベット、アイスクリームなど)
- 砂糖菓子(ボンボンなど)
- チョコレート製品
- 工芸菓子(シュガークラフトやマジパン、飴細工など)
お菓子作り以外にパティシエがする仕事
パティシエの仕事は、毎日同じお菓子をつくるだけではありません。経験や実績によって、任される仕事は幅広いです。
新しいオリジナルスイーツの研究・開発
日々味を研究し、新しいオリジナルスイーツを開発することもパティシエの仕事のひとつです。
つくりたいお菓子のイメージを絵で描き出し、ルセットをつくります。ルセットとは、料理でいうレシピのようなものです。ルセットをもとに納得いく味ができるまで、食材の組み合わせや、材料の細かな分量調整をしながらベストなバランスを探り、試作を重ねます。
思い描いたイメージを形にして、お客様に食べたいと思ってもらえるような見た目、味をつくりだすまで続けます。新しいスイーツを生み出すには、日ごろから色々なお店のケーキを食べ比べたり、本や雑誌などから情報を集めるなど、常にアンテナを張り巡らせておくことも必要でしょう。
販売・接客から清掃・後片付けまで
勤務先によっては、パティシエでも接客や販売の仕事をすることがあります。小規模な店舗ではお客様と接する機会も多いでしょう。もちろん、業務終了後の清掃や後片付けも大切な仕事です。特に見習いのうちは接客や清掃が仕事の主になることも多いです。
店舗経営
パティシエの中でも、自分でお店を持つなどして店舗経営も請け負うパティシエのことを、オーナーパティシエといいます。
オーナーパティシエの場合は、お菓子をつくる技術や知識だけでなく、新商品の予算を組んだり、仕入れ・発注管理や在庫管理などの経理全般、宣伝、営業も行うことになります。自分ひとりではなく、ほかに従業員を雇う場合は、給与の支払いなどの事務も必要になるでしょう。
パティシエの仕事は勤務場所によって変わる
一口にパティシエといっても、勤務先は洋菓子店や販売専門店、ホテル・結婚式場、レストラン・カフェ、お菓子メーカーの工場など多岐にわたります。それぞれの場所でパティシエたちがお菓子づくりのプロとして活躍しています。中には独立して自分の店を持つ人もいます。
どこで勤務するかによっても、仕事内容は異なります。
洋菓子店・販売専門店
パティシエの就職先として最も多い割合を占めるのが、洋菓子店や販売専門店です。
洋菓子店や販売専門店では、持ち帰り用のスイーツをつくるのがメインです。定番の商品に加え、季節に合わせた商品やクリスマス、バレンタインなどイベントに合わせた商品なども手掛けます。自宅で食べてもらうため、切り分けたケーキに一つひとつ透明フィルムを巻くなど、細かい工程が必要にあるのも洋菓子店や販売専門店の特徴です。
小規模な店舗や、イートインを併設しているお店ではパティシエ自身が接客をすることもあります。お客様の声を直接聞きやすいことも洋菓子店や販売専門店で働くメリットといえます。
忙しさは日によって異なりますが、洋菓子店や販売専門店の場合は早朝から出勤するのが一般的です。出勤後は生地作り、焼き上げ、仕上げの順番に進めていき、開店後は売れ行きに合わせて追加で商品を補充していきます。そのほか、パースデーケーキの予約があれば、引き渡しに間に合うよう準備をします。
閉店後も後片付けや清掃、翌日の仕込み、新商品の試作などにより、帰宅は夜遅くなるケースが多いようです。
ホテル・結婚式場
ホテルや結婚式場で働くパティシエは、おみやげ用や引き出物のお菓子、レストランのデザート用に出すケーキなど、一日のうちそれぞれのお菓子を大量につくるのが一般的です。
パーティやウェディングケーキなどの大きなケーキをつくる機会も、ほかの職場に比べて多いでしょう。勤務先によってはウェディングケーキをオーダーメイドでつくることもあります。
接客は別のスタッフが行うのが一般的ですが、場合によっては、お客様の目の前でケーキを切り分けたり、補充をするなどの機会があるかもしれません。接客のシチュエーションがフォーマルな場であることも多いため、場に合わせて忌み言葉を避けるなど、ビジネスマナーも知っておくといいでしょう。
基本的には予約に応じて作業をしますが、結婚式やパーティなどお祝い事は、大安の日や連休などに予約が重なりやすいです。どちらかというと平日より土日祝日のほうが忙しい傾向の職場と考えられます。
ホテルや結婚式場は作業量が多い分、パティシエの人数も多く、作業を細かく分担する傾向があります。ひとつのお菓子をつくるのに、全ての工程を覚えるまでは時間がかかりやすいですが、工程ごとにじっくり極められるのはメリットです。
レストラン・カフェ
レストランやカフェでパティシエとして働く場合は、主にデザートを担当することが多いです。ブライダル事業も手掛けるレストラン・カフェではウェディングケーキや、パーティイベント用のオリジナルスイーツを考案することもあります。
レストランやカフェの場合は、お皿に美しく盛りつけてお客様に提供することが多いため、味だけでなく盛り付けや配色など、見た目の華やかさや美的センスも求められます。
その他、食事の後や飲み物とともに提供するデザートは、お客様の食事の進み具合や状況を把握して、作業の開始や仕上げるタイミングを見計らう必要があります。ホールスタッフとの連携も大切になるでしょう。ほかの料理担当者と同じキッチンで働く機会が多いのも、レストランやカフェの特徴です。
お店によってはパティシエも接客や、ほかの料理の補助に入る場合もあります。お菓子以外の料理に関する知識も手に入れられる可能性が高いので、スイーツにとどまらず、幅広いスキルを身に着けたい場合は有利な職場といえるでしょう。
お菓子メーカーの工場(ラボ)
工場を持っているお菓子メーカーも、パティシエの勤務先候補のひとつです。製菓会社であれば商品開発をする機会も多いです。工場でつくるお菓子は、洋菓子店の商品を見本につくるのが一般的なので、パティシエの技術やセンス、経験が製品に大きく影響を与えると考えられます。年数を積めばさまざまな経験ができるでしょう。
工場によっては手作業で何かつくるより、機械操作や監視がメインになることもあります。接客などをする機会はほとんどないため、ひとつの仕事をもくもくとこなすのが得意な人には適しているかもしれません。
勤務時間は企業によって差があり、シフト制が主ですが、繁忙時には深夜まで働くこともあります。
下積みからはじまるパティシエの仕事
パティシエの仕事は、地道な下積みから始まります。
多くのパティシエは製菓専門学校や大学など学校を出て就職します。とはいえ、学校で基礎技術を身に着け、資格を持っているからといって、すぐに本格的な洋菓子作りができることはほとんどありません。
中にはコンテストに入賞するなどして早々に独立する人もいますが、およそ3年は下積みをするのが一般的です。3年というのは、パティシエの世界では3年間かけて大体の仕事をこなせるようにするのが目標といわれているからです。
3年かけて徐々に仕事の幅を広げていくイメージ
パティシエの1年目は、先輩が使用する道具の準備や、フルーツのカット、クリームの泡立てなど材料の下ごしらえ、計量、清掃などが主な仕事です。小さなお店では接客や販売から始まることもあります。
最初は先輩のサポートに回ることがほとんどなので、地味な作業ばかりに感じるかもしれません。ですが、一見地味に思える作業も、スムーズな商品提供をするために重要なことばかりです。
地道な作業の積み重ねていくうちに、徐々に仕込みに携わることも増えます。状況にもよりますが、2年目は後輩の面倒を見ながら先輩をサポートし、ある程度仕事の流れや作業工程を覚えつつ、仕込みの精度を高めていきます。
3年目になると、デコレーションや仕上げなど重要な部分を任されたり、在庫や売り上げの把握、商品提案などを求められることもあります。安心して仕事を任せてもらうためには新人のうちから先輩の手元を見て勉強したり、業務終了後も残って練習するなどの努力が大切になるでしょう。
転職も3年が区切りになることが多い
パティシエの一般的な下積み期間が3年であることから、3年や5年を一区切りに転職を考える人も多いようです。スキルアップのために転職を繰り返し、さらにレベルの高い職人のいるところで修業をするという人も多いです。
パティシエの場合はパン職人とともに、インターネットサイトでn特集や専門の転職サイトが開かれてることも多いです。繁忙期はもちろん、年間を通じてアルバイト、正社員問わず求人数は多い仕事です。経験を積んでスキルを高めれば、給料アップや独立などの道も開ける可能性もあるでしょう。
パティシエの仕事のやりがい
幸せな時間を共有するお菓子がつくれる仕事
パティシエの仕事の醍醐味は、誰かの幸せな時間に寄り添えることです。私たちの生活の中で、誕生日やクリスマス、結婚式など、お祝いや楽しいイベントをするとき、お菓子やスイーツがそばにあることは多いでしょう。
あるいは、なんでもない日であっても、スイーツを食べて幸せな気分になる人も多いはずです。特別な日も日常も、お菓子があるだけで場が華やいだり、生活が彩られたりするものです。
パティシエの仕事は、最初は下積みでお菓子づくりに携わることができないことや、仕事の中で壁にぶちあたることも多いかもしれません。辛い時期もあるかもしれませんが、自分のつくったスイーツを通して誰かが喜んでくれたり、幸せな時間を共有できることが仕事のやりがいに感じるパティシエは多いです。
経験や実力が形になる仕事
実力がアップするのに伴い完成度の高いお菓子をつくれるようになることも、パティシエの仕事を続けるやりがいのひとつです。パティシエの仕事は、イメージしたおいしいお菓子を形にすることです。
思い描くお菓子を形にするためには経験や実力が必要ですが、地道に努力を続ければ少しずつ自分のイメージ通りの味を再現できるようになるはずです。スキルを高めれば高めるほど、食べた人においしいと思ってもらえるようなお菓子をつくることにもつながるでしょう。
パティシエの仕事内容まとめ
パティシエは地道な努力やセンスが求められる仕事
お菓子をつくる職人であるパティシエは、毎日いくつものお菓子を同じ質、見た目に仕上げる仕事です。
最初は清掃や単純作業が主ですが、ベテランになると新しい商品の開発も任されるようになるため、日々オリジナルスイーツにつながるヒントやイメージを考える努力、美的センスなども必要になるでしょう。意外と力仕事も多く、生活も不規則になりがちなため、体力的にハードな面があるのも特徴といえます。
パティシエの勤務先は街の洋菓子店だけでなくホテルや結婚式場、レストラン、カフェ、工場など幅広く、主な業務内容も異なります。作業のやり方や、こだわりも勤務先によってさまざまですが、一般的に小規模な店舗ほど一人で多くの業務を担当します。一方で、大規模になるほど作業を細分化し、専門的に取り組むことが多い傾向にあるようです。
クリスマスやバレンタインデーなどイベントのある時期は忙しく、プライベートをゆっくり過ごすことは難しいかもしれません。しかし、おいしいと食べてくれる人がいることや、幸せな時間を生み出すきっかけをつくれることは、何よりのやりがいに感じられるはずです。
パティシエの参考情報
平均年収 | 200万円~400万円 |
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必要資格 |
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資格区分 | 国家資格 |
職業職種 | 飲食 |
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