航海士の仕事内容とは?やりがいや魅力について解説
航海士の仕事内容は一体どのようなものなのでしょうか。多くの仕事をこなさなければならない航海士は、階級によって職務が細かく分かれています。今回はこの記事で、階級別の航海士の仕事内容やそのやりがいなどについてご紹介します。
航海士とはどんな仕事?
船舶の安全な運航を担う仕事
航海士の仕事内容は「船舶の安全な運航を担う」ことです。荷物の搬入や搬出・船舶の操縦・安全確認など、様々な運航に関わる仕事があります。
航海の種類によっては何ヶ月も船舶に乗船し続ける勤務スタイルとなるため、体力や忍耐力などが必要とされます。また、数ヶ月続けて船の上で勤務をするため、勤務が終了したら2~3ヶ月のまとまった休暇が取れることがこの仕事の特徴です。
航海士の勤務先は主に3つ
航海士として船上で働く上で、その職務内容に大きな違いはありません。ただし、就職先の船によってその業務内容は異なります。その特徴を見ていきましょう。
海運会社
海運会社の主な仕事内容は、船に荷物を積んで目的地に色々なモノを運んだり、運び出したりすることです。その内容は、石炭・化学薬品・セメント・自動車や大型機械・石油など。またそれら以外にも日用品や生鮮食品まで、その種類は広範囲に及びます。
陸ではトラックや列車、空では飛行機が物流を担いますが、船の場合は海運会社の船がその役目を担います。運ぶモノの種類によって船の種類も異なり、生ものは冷蔵運搬船、車は自動車専門船、コンテナ船など色々な種類があります。
また、国内の運搬は「内航海運」、国外への輸出入は「外交海運」と言われ、国内だけでなく海外が活躍の場となることも珍しくありません。
フェリー会社
フェリーの定義には車両を運ぶ意味も含まれますが、フェリー会社の主な仕事は私たちが一般的に想像する「旅客の航送」が主な仕事です。港と港を結び、旅行や移動の際に人・バイク・車・ペットなどを運ぶ役割を果たします。
また、フェリー会社とは異なりますが、国内外を旅する豪華客船を運航する会社に就職しても、航海士として働くことが可能です。
海上保安庁
国土交通省に属する海上保安庁の主な仕事は、海上で発生した犯罪の捜査や取締・海難救助や火災船の消火・水路の測量などです。海上における警察や消防の働きをする組織と言ってもよいでしょう。混同しやすい組織に海上自衛隊がありますが、こちらは防衛省に属する組織で、外国から受ける侵略にたいして日本を守ることが目的です。
航海士の仕事の具体的な内容
航海士は階級によって仕事内容が異なる
航海士は階級によってその仕事内容が細かく分類されています。階級は船長・1等航海士・2等航海士・3等航海士です。大型船ではその階級がするべき仕事を果たす必要がありますが、小型船では航海士の人数が少ないので、他の階級の仕事を兼務する場合もあります。
航海士になるためには「海技士免許」を取得しなければなりませんが、階級が上がるにつれて免許の階級も高くなります。階級の中でもトップの船長の役割や権限は大きく、それと同時に責任も重くなります。
船長
船長は「キャプテン」「マスター」と呼ばれ、「1級海技士」の海技士免許が必要とされる階級です。船の中で最も責任の重い最高責任者であり、航海士以外にも通信士や機関士などの全員に指示を出しながら監督をし、全てを束ねる重要な任務を果たさなければなりません。
場合によっては乗組員以外の乗客に対し、法律に従って命令や指示を出すことができる大きな権限を所持しています。緊急対応の意思決定・気象や季節による針路の決定・入港や出港・狭い水路の通過時などの操船指揮など、その職務内容は多岐にわたります。
1等航海士
1等航海士は「チーフオフィサー」と呼ばれ、「2級海技士」の海技士免許が必要とされる階級です。船長の次に責任が重く、航海士の中では最も上の階級です。そのため、船長が休憩を取っている間は1等航海士が船長の仕事を兼務することになっています。
普段の主な仕事内容は甲板部の統括。甲板部とは、船体修理・操船・積荷管理を行う部門を指し、安全に荷物の積み降ろしがされているか、操舵手と組んで船が港を出たり着いたりする時に安全が配慮されているか、などを確認して指揮や命令を行います。
2等航海士
2等航海士は「セカンドオフィサー」と呼ばれ、「3級海技士」の海技士免許が必要とされる階級です。主な仕事内容は1等航海士の補佐・海図の整備や管理・GPSやレーダーなどの機器の整備や管理です。また、入出港時に1等航海士が船頭に位置して管理を行うのに対し、2等航海士は船尾に位置して船の監督や指揮を行います。
3等航海士
3等航海士は「サードオフィサー」と呼ばれ、「4級海技士」の海技士免許が必要とされる階級です。全ての階級の中では一番責務が小さいので、小さな船や航海によっては3等航海士がいない場合もあります。
主な仕事は防火設備や救命設備(救命用いかだ・救命ボート)などの整備や保守管理。航海日誌の記録・色々な書類の管理や記録を行い、1等航海士や2等航海士が効率良く仕事を進めるための補佐的な仕事を行います。
航海士は階級によって肩章や袖章が異なる
航海士は主に1~3級に分けられていますが、その証は制服(夏服の場合は肩・冬服の場合は袖)にある肩章や袖章の金筋の色で見分けることができます。金筋3本は1等航海士・2本は2等航海士・1本は3等航海士を表し、階級が下がるにつれて金筋の数が少なくなる特徴があります。また、船長は4本の金筋で表します。
航海士の仕事は24時間体制
船は24時間運航しているので、航海士は交代しながら24時間体制で働く必要があります。必ず「甲板部員」とペアを組みながら職務にあたり、4時間働いて8時間休憩をとるサイクルを1日に2回行います。船によって階級による当直の時間は異なりますが、一般的な当直スタイルは次の通りです。
等級 | 当直の時間 |
---|---|
1級航海士 | 4~8時・16~20時 |
2級航海士 | 12~16時・0~4時 |
3級航海士 | 8~12時・20~0時 |
このように階級によって働く時間が分けられ、常時誰かが船や周辺を見守ることで安全な船舶の運行が可能になります。働いていない時は食事を取ったり、個室に分けられている自室で休憩を取ったりします。
自室は階級が低くなるほど船の底に近い場所に作られているのが特徴です。数ヶ月の海上勤務の後は、2~3ヶ月の休暇が与えられ、休暇が終わったら再び船に乗って勤務を行うサイクルを繰り返します。
航海士は陸上勤務もある
航海士の仕事は海上だけでなく、陸上での仕事もあります。配属となる部署はその都度異なり、2~3年の陸上勤務を終えた後は再び海上勤務に戻ります。また海上勤務で航海士として長く働いてきた人は、その経験を生かして後輩航海士の育成に従事する仕事を任せられることもあります。
海上での航海士の仕事は体力面や精神面でもタフでなければならないため、年齢が進むにつれて教育係に異動し、海運業界や企業の活性化の源として活躍する場が与えられます。
航海士の仕事のやりがい
大自然を感じながら仕事ができる
広い海を活躍の場とする航海士の仕事は、常に自然と向き合うことが求められます。潮の流れや気象状態によっては嵐や台風など厳しい環境の中で仕事をしなければならないこともあります。
そのような困難を乗り越えながら大自然を身近に感じつつ、大海原に出て働くことができる航海士は、自然の醍醐味を感じることができるでしょう。また、安全に目的地に着いた時には達成感や安堵感に包まれること間違いありません。
人やモノを運ぶことで社会貢献できる
船を動かすことでモノや人を運ぶことは、同時に日本経済を大きく支える一端を担うことにもなります。大型船で自動車やエネルギー資源などを運ぶには、何億という大きな金額が動きます。日本国内だけでなく海外と日本を結ぶ場合は、日本だけでなく外国の社会や人々の生活にも大きな影響を与えるといっても過言ではないでしょう。
また、人を目的地へ運んだり豪華客船で楽しい船旅を満喫してもらったりすることは、人々の生活に潤いを与えることにもなります。
航海士の仕事内容まとめ
航海士は24時間シフトと階級別の仕事をこなす
船は常に稼働しているので、航海士は交代制の24時間シフトをこなしながら勤務する必要があります。シフト勤務の中で、自分の階級に与えられた業務に当たることが航海士の仕事と言えるでしょう。
海上以外に陸上勤務もあり、年を重ねた後は後輩の航海士の指導などをする場合もあります。国内外問わず、船を利用して人やモノを運びながら社会に役立ち、大自然を感じられるのが航海士のやりがいと言えるでしょう。
航海士の参考情報
平均年収 | 500万円〜800万円 |
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必要資格 |
|
資格区分 | 国家資格 |
職業職種 | 運輸・乗り物 |
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