高校教師の資格・試験とは?教員採用試験の概要などについて解説
高校教師は生徒の将来を支えるという夢のある職業です。しかし、人の前に立って指導するという重要な仕事であることもあり、免許の取得や試験への合格など就職への道は険しいものになっています。この記事では、高校教師として働くために必要な資格と試験情報について紹介していきます。
高校教師に必要な資格とは?
高校教師への第一歩は教員免許状
高校教師を目指す上で必ず必要になる資格といえば「高等学校教員免許状」です。一般的に教員免許状は大学が指定する単位を修了することで取得できるようになっており、単位取得中に大学を中退しても、別機関に単位を持ち越して得ることができます。
なにかと教師を目指す人にやさしい印象がありますが、免許取得のために必要な単位数は膨大で、大学卒業までに多くの授業に出る必要があります。基本的に大学は自由に授業を取ることができますが、教員免許状を取得したい人はほぼ授業が固定になってしまうことも多くあります。
大学にて教員免許状を取得した後は、各地方や私立高校が実施する教員採用試験を受け、見事合格できれば晴れて高校教師になれます。しかし、教員採用試験の倍率は高く、しっかりと勉強しておく必要があります。
必要になってくる単位の例
教員免許状を取得するために必要な単位は2つに分けられています。1つは教師になるために必要な知識や関わり方、心理学を学ぶ必須単位科目です。各大学によって科目名や単位に違いはありますが、たとえば心理学や教育指導論などが必須科目に入っていることが多いです。
そして、もう1つは自分が目指したい科目に関する内容を選べる自由単位科目です。高校では教える科目がそれぞれ1人の教師に対して1科目になっており、自分の興味ある科目について専門性を高めながら学ぶことができます。
たとえば、国語教師になりたい場合は古文や国語表現法、日本文化論などを選択すれば教員免許状の単位として認められます。他にも社会科教師ならば地理学や世界史、数学ならば数的処理などが自由科目に該当します。
また、どうしても高校教師になりたい人は国語教師と社会科教師など2つの免許を同時取得することも可能です。しかし、ただでさえ膨大な授業数になることもあり、2つを同時に取得しようとすると留年しなければならない場合もあります。
高卒でも免許は取れるようになっている
教員免許状は大学が定める単位を取得する必要があるため、高卒だと高校教師になれないと考える人もいるでしょう。しかし、各大学などでは通信制の講座を開講していることがあり、その通信課程を修了することで教員免許状を取得することができます。
通信制であれば大学に通うより金銭的・時間的に楽かと考えがちですが、取得必須単位は大学に通う人と変わらないため、免許状の取得には数年を有します。しかし、働きながら免許を取得したい人や大学の卒業単位などは不要のため、その辺りはメリットとも言えます。
自主性がないと難しい通信制
通信制は大学に直接通う必要がないため、経済的に負担はないですし、遠方で通えない人にとってはありがたい制度です。しかし、自宅での勉強が大半となるため、大学に直接通うよりも強い意思が無ければ続かないところがあります。また、働きながらになると仕事と勉強の両立に挫折する人も多くいます。
また、通信制の場合は教育実習などの手続きを自分で行うことが多いようです。大学に通っている場合は教育実習の事務手続きについても大学が行いますが、通信制の場合は自分で学校への挨拶と了承を得るなどの手続きを行うことになります。
高校教師の採用試験について
高校教師は依然として高い倍率
高校教師として働くためには教員免許状を取得した後、各地方自治体や私立高校が実施する高等学校教員採用試験に合格する必要があります。たとえば、各自治体で行われている公立高校の試験の受験者数は35,000人前後で推移しており、平成29年度の試験では34,177人が受験しました。
その中で採用される数はおよそ5,000人前後と言われており、平成29年度試験の採用者数は4,827人という結果になりました。採用倍率でみればおよそ7倍となっており、狭き門となっているのがわかります。年々倍率は低下しているようですが、新卒だけでなく既卒者も受験していることもあって高い倍率は維持されているようです。
ちなみに、平成29年度の高校教師採用試験の受験者を新卒と既卒の比率を見てみると、新卒の比率は29.7%で既卒の比率は70.3%になっています。この数値を見ても、既卒者がかなり受験しているのがわかります。既卒者の中には臨時で働きながら勉強している人も多く、長い時間を掛けないと教師になれないことが多いです。
また、平成29年度の高校教師採用試験の新卒と既卒者の採用率を見てみると、新卒が15.6%で既卒者が13.5%となっています。大きな開きこそありませんが、データを見る限りは新卒のうちに合格しておくほうが得策と言えそうです。
科目別に見ると倍率に違いはある?
教員採用試験は昔から狭き門と言われていますが、2019年時点で考えると昔よりは若干ながら緩和されているようです。また、高校教師は科目ごとに分かれているため、各科目の受験者数によって倍率に多少のばらつきがあります。
人気の科目は地歴公民や日本史、世界史などの社会科科目で、受験者が多いこともあって自然と倍率は高い傾向にあります。その後には音楽、美術、生物、保健体育、国語、英語と続いており、理系科目は他の科目に比べると倍率でみれば受かりやすいと言えます。
また、地歴公民については教員数が余るほどの状態になっており、臨時教員に登録してもなかなか声が掛からないとのことです。どうしても高校教師として働きたい人で理系科目ができる人は、数学や理科科目の受験を考えてもいいかもしれません。
試験の内容・募集は各地域によって異なる
高校教師の採用試験は、各地方にある公立高校の採用試験と、私立高校が実施する採用試験の2つに分けられます。この2つは管轄が違うので行われる試験には違いがありますし、公立高校でも各地方によって採用数などに多少の違いがあります。ここでは、公立高校の試験をベースに受験情報の概要を紹介します。
合格率
約13%
受験資格
- 各地域によって年齢制限が設けられている場合がある(主に50歳や58歳が上限となっている)。
- 教員免許状を取得済、もしくは取得見込みであること。
- 地方公務員法第16条及び教育法第9条の欠陥事項に該当しないもの(18歳未満のもの、成年被後見人または被保佐人、高等学校を卒業しない者、禁錮以上の刑に処せられたもの、懲戒免職の処分を受けたことにより教員免許状が効力を失い、その失効の日から3年をけいかしないものなど)。
受験費用
なし
試験内容
■教職教養試験
教育原理、教育法規、教育心理、教育史、教育時事の5つの分野から出題。
■一般教養試験
主に教科問題、時事問題、一般常識から出題。
■専門教養試験
志望する教科・校種より専門性の高い知識を求める問題を出題。
■論作文
教育に関することや教育論など各自治体によってテーマは様々。
■面接試験
個人・集団面接、集団討論・集団活動・模擬授業・場面指導など様々な方法で面接試験を実施。
■実技試験
音楽・美術・保健体育・家庭科・英語の受験者に実施が課せられる試験。実技試験は二次試験にて行われることが多い。
■適性検査
教員に求められる特性を客観的に調べる試験。クレペリン検査、YG性格検査、MMPI(ミネソタ多面人格目録)など。
高校教師の採用試験対策ができる学校・講座
採用試験の対策を行っている「TAC」
教員免許状を取得するには大学や通信講座にて自力でがんばる他ありません。しかし、教員採用試験については、資格取得の学校で知られる「TAC」が対策講座を開いているようです。
教員採用試験の対策では一般教養だけに止まらず、特に力を入れているのが面接練習です。回答の作成からはじめて自分で話すトレーニングを行い、そして合計18時間に及ぶ面接特訓のプログラムを用意しています。
また、様々な面接の方式に対応しており、対面式によるロールプレイングや集団面接などの練習ができるようになっています。さらに、本試験に合わせて指導実演の練習もできるようになっています。
しかし、面接などのロールプレイングについては実施している校舎のみで提供されているサービスとなります。どうしても面接対策をしたい人は、事前に最寄りの校舎にてサービスの有無を確認しておきましょう。
高校教師の資格・試験まとめ
狭き門を突破しなければ高校教師にはなれない
高校教師はまず大学か通信制の講座にて単位を取得し、教員免許を取得する必要があります。その上で各自治体や私立高校が実施する教員採用試験に合格することで、はじめて教員として働くことができます。
倍率など厳しいところがありますが、面接対策を行っている学校もあるので有効活用して合格を勝ち取りましょう。
高校教師の参考情報
平均年収 | 400万円~700万円 |
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必要資格 |
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資格区分 | 免許 |
職業職種 | 教育・保育 |
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