彫金師になるには?必要スキルや向いている人の特徴などを具体的に解説
アクセサリーやインテリアの装飾金属を手掛ける職人が彫金師です。彫金師は、金属加工の中でもデザイン装飾に特化した専門職です。この記事では、彫金師になるにはどんな能力が必要なのか、向いている人の特徴、彫金師になるための学校・教室などを紹介します。
彫金師になるには何が必要?
彫金師の仕事は、金属に彫金加工を施す仕事です。彫金とは、読んで字のごとく、金属に彫刻を施すことです。鏨(たがね)という専門の道具を使い金属を彫り美しい彫刻を施します。
彫金師が手掛ける金属には、金・銀・銅・プラチナなどがあり、彫金の技術を使い、ジュエリーやアクセサリー、金属食器を制作したリ、インテリア、仏具、建築物などの装飾用金具を制作します。とりわけ、仏壇・仏具の世界ではこの分野の職人は「錺金具師」(かざりかなぐし)と呼ばれています。
本来、ジュエリーデザインに関係するヤスリがけ、ロウ付け、石留めなどの工程は「飾り職」と呼ばれる職人の仕事です。しかし最近では、ジュエリーやシルバーアクセサリー制作に関係するこれらの工程も「彫金」と呼ばれるようになっており、彫金教室などでは、彫金本来の金属を彫る技術だけでなく、ジュエリー制作に関係するすべての工程を「彫金」として勉強します。
ですから、彫金師としての仕事には、こうしたジュエリーやアクセサリーの制作、教室で講師として技術を教える仕事なども含まれます。
では、彫金師として仕事をするためにはどんな能力が求められるのか紹介します。
彫金師は器用さが必要
小さなアクセサリーに細工を施す彫金師には手先の器用さが求められます。
例えば指輪にダイヤモンドなどの石を留めるという作業があります。留める石の大きさに合わせて金属を彫り、合わせてみて、調整が必要ならばさらにまた彫るという作業を繰り返します。
この作業は石を単に穴に埋めるという作業ではなく、簡単に落ちないようにする作業です。石を指輪などのアクセサリーに留めるこうした作業を行うには、まさに手先の器用さが求められます。
彫金師は集中力が必要
先ほど紹介したリングを石に留める作業は、石がひとつの場合でも、きれいに仕上げるためには集中力が求められます。注文によっては1.0mm程度のサイズの細かい石を留める場合があります。
また、複数の石をひとつのアクセサリーに留めるという場合もあります。一見同じような形の宝石でも、それぞれの大きさや高さ、形には違いがあります。それぞれの石に合わせて、金属を彫り、調整し、また彫って留めていくという作業を繰り返します。
扱う素材は高価な貴金属が多いので簡単に失敗することもできません。高価な素材を扱いながら、こうした細かい作業をこなしていくためには高度な集中力が求められます。
彫金師は忍耐力が必要
彫金師の仕事には手先の器用さや集中力が求められます。コツコツと作業を長時間行い続ける必要があります。そのため、忍耐力も求められます。
さらに見習いか職人として一人前になるまでには長い年月の修行期間も必要です。こうした点でも彫金師には忍耐力が求められます。
彫金師はデザインセンスを磨く必要がある
彫金師の仕事は石を留める作業だけでなく、本来の彫金師の仕事である、金属を彫刻し美しい模様を施すという仕事があります。
日本の彫金の歴史は古く、古墳時代にまでさかのぼります。武士の時代には刀剣装具のための技術として彫金は広く用いられました。明治政府が出した廃刀令以降、こうした仕事の依頼は減りましたが、伝統的なデザインやそれを施す彫金の技術は職人たちにより連綿と現代にいたるまで受け継がれてきました。
彫金師として仕事する場合、和彫りの伝統的なデザインを学び、それを表現する技術が求められます。もちろん海外にも彫金の技術はあり、洋彫りスタイルの彫金にはそれ専用の鏨(たがね)があり、デザインも和彫りとは異なります。
洋彫りの彫金師として仕事しようと思う場合、洋彫りのデザインや彫刻技術を学ぶ必要があります。
彫金師は道具を愛する気持ちが必要
彫金師の仕事を支えているのが鏨です。
例えば、仏壇仏具の彫金の場合、彫る模様や材料の大きさに合わせて鏨を使い分けます。道具をきちんと管理するのはもちろんですが、すぐれた職人はそれを自分で磨き、いつでも最高度の仕事ができる状態にしておきます。
長年の経験に基づき試行錯誤しながら自分オリジナルの鏨を作る彫金師もいます。一流の仕事は道具を使いこなす技術とその道具を大切することにより生み出されます。
彫金師は独創性も必要
彫金師として必要なデザインセンスを学び、それを表現する技術を身に着けたなら、その腕を活かしジュエリー作家やシルバーアクセサリーデザイナーとして活躍するという方法があります。また、お客様からの注文を受けてジュエリーやアクセサリーを制作することもあります。
和彫り・洋彫りの両方を学んだならそれを融合させたデザインのジュエリーやアクセサリーを制作することができます。伝統的な彫金のデザインをベースとし、それを現代的にアレンジさせたデザインを生み出すことができます。彫金師にはこうした新しいデザインを生みだせる独創性も必要とされます。
講師になれば教える技術も必要
彫金師としてジュエリー制作などの仕事に携わるかたわら、彫金教室の講師として働く方もいます。講師として働くには、彫金の技術を分かりやすく丁寧に指導しなければなりません。彫金師の講師として働く場合、教える技術も求められます。
彫金師に向いている人、適性がある人
彫金師にはどんな能力が求められるのか紹介しました。必要とされる能力を分析すると、おのずとどんな人がこの仕事に向いているのか、どんな人に適性があるのかが分かります。
次にどんな人が彫金師の仕事に向いているのか紹介します。
ものづくりが好きな人
彫金師はデザインを考え、それを金属に鏨を使い彫刻し、作品として仕上げます。たくさんの細かな作業をコツコツ丁寧にこなしていきます。
作業で使う鏨などの道具も自分で手入れしなければなりません。こうした点を考えるなら、ものづくりが好きという人は彫金師の適性があります。
細かな作業が好きな人
彫金師は細かな作業の積み重ねです。先ほども紹介したように、ひとつの指輪にいくつもの石を留めるという作業を行うことがあります。また、ジュエリーやアクセサリーの制作には、普通の大きさの鏨では彫刻できないような細かな彫刻を施す場合もあります。
彫金師には、こうした細かな作業を求められるので、コツコツ作業が好き、細かな作業が好きという方はこの仕事に向いています。
先輩から学べる人
先輩職人から多くを学ぶのも彫金師です。人から何かを教わるという事に抵抗がない人、素直に人から学ぼうという性格の人は、彫金師の仕事の適性があります。
責任感のある人
ジュエリー制作やアクセサリー制作など仕事に納期があるので、クオリティの高い仕事が求められるものの、納期を守る必要があります。ですから責任感のある人、予定管理ができる人はこの仕事に向いています。
体力のある人
彫金机に向かいコツコツと作業をする仕事です。目や腕が疲れる仕事でもあるので、ある程度の体力も必要です。
彫金師になるための学校・教室
彫金師になりたい人は、どんな学校で勉強すればいいのかを最後に紹介します。
以下の学校で彫金師に関する技術を学ぶことができます。
- 工芸科の高校
- 専門学校
- 大学
工芸科の高校
彫金の知識を学べる高校が日本にはいくつかあります。
例えば東京都立工芸高校やアートクラフト科では、授業ではデザインから制作までの理論と技術を学び、美術造形に欠かせない構成力やデッサン力、自由な感性も磨くことができます。彫金室の設備もあり、専門的な知識や技術を学ぶことができます。
こうした彫金を学べる高校で基礎的な知識や技術を身に着け、工房やジュエリー制作会社などに就職し彫金師を目指すことができます。
専門学校
専門学校でも彫金師に必要な知識や技術を学ぶことができます。彫金師に関する技術を学べる専門学校としては、「ヒコ・みずのジュエリーカレッジ」「日本宝飾クラフト学院」が有名です。
日本宝飾クラフト学院
日本宝飾クラフト学院には、2年制の総合学科ジュエリークラフトコースがあります。このコースでは、鏨の作り方、彫金、石留めを学ぶことができます。また打出しや象嵌などの日本の伝統的な彫金技術を学ぶことができます。
彫金以外にも、貴金属加工、ワックス加工、デザイン、宝石鑑別などのジュエリー関連の仕事に役立つ知識や技術が学べます。
大学
工芸科のある大学でも彫金に関する知識や技術を習得でき、それを就職に活かせます。
東京芸術大学
東京藝術大学工芸科では彫金を専攻できます。鏨などの工具の整備、「彫り」「打ち出し」「象嵌」「接合」「七宝」「色金」等の彫金の伝統技法を学べます。
基礎課題を通じて素材に関する基礎知識を深めることができます。彫金技法とジュエリーのそれぞれの分野が設けられており、現在の生活スタイルに調和した専門性の高い指導を受けることができます。
彫金師になるには?まとめ
ものづくりが好きな人は彫金師に向いている?
彫金の持つ繊細さや美しさは人を引き付ける魅力にあふれています。彫金師として腕を磨けば、ジュエリーデザイナーやアクセサリーデザイナーとして独立することも可能です。また、彫金教室などで講師として働くこともできます。
ジュエリーやアクセサリーを完成させるまでには、集中力を必要とする細かな作業がいくつもあります。ですから、彫金師はものづくりが好きで忍耐力のある人にぴったりの仕事です。この機会に彫金師の仕事を目指してみるのはいかがでしょうか。
彫金師の参考情報
平均年収 | 300万円~400万円 |
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必要資格 | 必要資格なし |
資格区分 | - |
職業職種 | 広告・デザイン・アート |
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