トレーダーの資格・試験とは?業務に必須な証券外務員 資格試験の概要と合格の秘訣
トレーダーになるためには、まずは投資銀行や証券会社においてトレード関連部署へ配属される必要がありますが、実務を行うために必要な資格はあるのでしょうか。トレーダーに求められる資格とその難易度、キャリアアップのための関連資格について紹介します。
トレーダーの資格とは?
株やFX投資などの金融商品の売買のタイミングを顧客である投資家へアドバイスする仕事であるトレーダーには、どのような資格が必要なのでしょうか。
証券外務員の資格が必須
投資家へ金融商品を紹介するトレーダーは、「証券外務員」の資格を取得することが必要です。
証券外務員は日本証券業協会が主催する公的資格であり、投資銀行や証券会社といった金融商品取引業者において、有価証券の売買や委託についての勧誘・営業を行う際に所持が義務付けられています。
証券外務員には二種・一種の2つの種類があります。
証券外務員二種とは
証券外務員二種は、現物の有価証券の募集や売買について取引・勧誘を行うことが認められる資格です。信用取引のような専門性の高い商品の取引・勧誘を行うことはできません。許可されていない金融商品を扱った場合には金融商品取引法違反として処罰の対象とされます。
二種の試験では、金融商品取引法や関連法令、協会・取引所の定款や諸規則といった法令類、株式・債券等に関する業務、証券市場の基礎知識や企業分析といった関連科目についての基礎知識を身につけていることが求められます。
その試験内容は投資銀行や証券会社に勤務する上で基礎知識とも言える内容であることから、一回で合格することが強く求められる資格であるといえます。
証券外務員一種とは
証券外務員一種は、二種で扱える現物有価証券に加え、証券会社が投資家に融資して取引を行う信用取引、先物取引・スワップ取引といった派生商品を扱うデリバティブ取引も売買や勧誘の対象とした営業活動ができます。
一種の試験では二種試験範囲の専門的な応用問題に加え、デリバティブ取引に関する科目も対象となり、より実践的かつ専門的な知識が求められます。
一種の試験を合格することで広い範囲の金融商品を扱えるようになります。二種の許可範囲では投資家の要望に対応できないこともあるため、一種を取得してようやく本格的なトレーダーとして働けるといっても過言ではないでしょう。
トレーダーの資格の難易度・合格率
トレーダーに求められる資格である証券外務員はどの程度の難易度の資格なのでしょうか。一種・二種それぞれの試験科目と合格率を紹介します。
試験科目
日本証券業協会がホームページ上で公表している試験科目は以下の通りです。
二種 | 一種 | |
---|---|---|
法令・諸規則 | 金融商品取引法及び関係法令 | 金融商品取引法及び関係法令 |
金融商品の勧誘・販売に関係する法律 | 金融商品の勧誘・販売に関係する法律 | |
協会定款・諸規則 | 協会定款・諸規則 | |
取引所定款・諸規則 | 取引所定款・諸規則 | |
商品業務 | 株式業務 | 株式業務 |
債券業務 | 債券業務 | |
投資信託及び投資法人に関する業務・法律 | 投資信託及び投資法人に関する業務・法律 | |
付随業務 | 付随業務 | |
– | デリバティブ取引(一種外務員資格試験のみ) | |
関連科目 | 証券市場の基礎知識 | 証券市場の基礎知識 |
株式会社概論 | 株式会社概論 | |
経済・金融・財政の常識 | 経済・金融・財政の常識 | |
財務諸表と企業分析 | 財務諸表と企業分析 | |
証券税制 | 証券税制 | |
セールス業務 | セールス業務 | |
出題範囲 | 出題科目についての基礎的な知識 | 出題科目についての実務的・専門的知識 |
コンプライアンスの基本的かつ重要な事項 | コンプライアンスの基本的かつ重要な事項 |
デリバティブ取引に関する科目以外は一種・二種に差はありませんが、基本的な知識を求める二種と実務的・専門的な知識を求める一種という形で難易度に差がつけられています。また、一種・二種ともに受験資格はなく、誰にでも受験が認められています。
証券外務員二種の試験難易度・合格率
二種の試験はPCによる選択肢および○×選択式で行われ、全300問中210点以上正答で合格です。
日本証券業協会の発表による2012~2017年の合格率は以下の通りです。
年度 | 合格率 | 受験者数 |
---|---|---|
2017 | 51.6% | 21,683 |
2016 | 51.8% | 25,447 |
2015 | 53.8% | 26,018 |
2014 | 53.4% | 27,312 |
2013 | 54.1% | 27,740 |
2012 | 54.9% | 33,176 |
受験者数とともに合格率も低下している傾向にあり、試験の難易度が上昇していることが伺えます。
証券外務員一種の試験難易度・合格率
一種の試験は二種同様に、PCによる選択肢および○×選択式で行われ、全440問中305点以上正答で合格です。
日本証券業協会の発表による2012~2017年の合格率は以下の通りです。
年度 | 合格率 | 受験者数 |
---|---|---|
2017 | 45.6% | 62,381 |
2016 | 45.2% | 62,174 |
2015 | 45.6% | 58,379 |
2014 | 44.0% | 59,088 |
2013 | 40.1% | 67,586 |
2012 | 39.1% | 33,176 |
以前は一種試験の受験条件として二種試験の合格が必要でしたが、2012年1月より二種試験の合格が不要になったために受験者数が増加し、合格率が一時的に30%台まで低下ました。現在はそれ以前の水準とほぼ同程度になっています。
二種とは反対に受験者数が増加している傾向にあり、二種を受験せずに一種から挑戦する傾向が強まっているようです。
その他のトレーダー関連資格
証券外務員のほか、トレーダーの業務に役立つ資格はいくつか存在しますが、どのような資格があるのでしょうか。
証券アナリスト
日本証券アナリスト協会が主催する民間資格です。証券・投資の分野における高度な専門知識と分析技術を評価する資格として、人気を集めています。
第1次レベルと第2次レベルの2つの段階が存在し、第1次の合格者だけが第2次を受験することができます。
経営学修士(MBA)
経営学修士を修めることで認定される学位です。厳密には資格や免許ではありませんが、経済、経営に関する専門的な知識を持っていることが証明されるため、非常に高い権威があると言えます。
海外のビジネススクール、または日本の大学院を修了することで得ることができます。入学には3年以上の実務経験が要求されることがありますので、キャリアの構築のために一時退職や海外留学といった選択が求められる場合があります。
FP技能士
日本FP協会が主催する金融資産の運用に関する知識・経験を認定する国家資格です。1級から3級までの3つの段階があり、ファイナンシャルプランナーを名乗り活動している人の多くが資格取得者です。
内部責任管理者
日本証券業協会が主催する資格です。直接トレーダーとしての業務にかかわる資格ではなく、金融商品取引法や関連法令の遵守状況を管理するための業務従事者に求められる資格です。
将来に向けたキャリアパス構築のために取得しておくことが望まれる資格の一つといえるでしょう。
トレーダーの資格が取れる学校
証券外務員といった、トレーダーに関連する資格を取得するために、どのような学校に通うといいのでしょうか。
経済・理数系の大学
トレーダーには経済・経営、金融工学やマーケティングといった分野の専門知識が求められるため、トレーダーとなった人の多くは大学でそれらを学んだ経歴がある傾向があります。
証券外務員や証券アナリストといった専門資格に共通する知識も得られるため、自分の希望と得意ジャンルを見極めた上での大学選びが望まれます。
資格専門の学校
証券外務員や証券アナリスト、FP技能士といった有名資格の取得を目的とした専門学校に通うのが最短のルートと言えます。
知識の範囲も重複する資格が多いため、1つの講座を受ければ他の資格の取得も楽になるはずです。社会人対象の講座を行っている学校も多いため、取得したい資格の優先度をつけて学校を選ぶとよいでしょう。
トレーダーの資格まとめ
証券外務員一種は必須
トレーダーとして就業するためには証券外務員一種は必須の資格です。
トレーダー候補として配属されたあとに会社が取得させてくれる場合もありますが、あらかじめ二種だけでも取得したり、試験勉強を進めておくだけでも大きなアドバンテージになるでしょう。
試験の合格率は5割程度
試験の合格率は一種二種ともに5割前後であり、しっかり勉強しておけば十分合格が狙える資格と言えます。
その他の関連資格も取得に必要な知識が重複することが多いため、在学中に簡単な資格から取得したり、証券外務員取得後に徐々に勉強範囲を広げて取得し、自身の知識を高めていくのもキャリア構築のために有効でしょう。
トレーダーの参考情報
平均年収 | 1000万円~7000万円 |
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必要資格 |
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資格区分 | 公的資格 |
職業職種 | 金融 |
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