速記者の資格・試験とは?速記技能検定など取得しておくと役立つ資格を解説
会話を聞き取って文章にする速記者は、会話をリアルタイムで書き留めるスピードと文字起こしの正確性が求められる職種です。速記者には技能検定があり、初級からプロ級までレベルが分けられています。このページでは、速記者の資格・試験などについてご紹介します。
速記者の資格には速記技能検定がある
速記技能検定の3級合格以上で仕事に生かせることが多い
速記者の資格には、公益社団法人日本速記協会が行っている速記技能検定があります。民間資格ですが、速記者として働く人の多くはこの検定を受験し仕事に生かしています。
資格は必須というわけではありませんが、速記者事務所などの求人で役立つ場面があります。特に、6〜1級まである検定資格のうち3級以上を求められることが多く、保有していると採用に有利といえます。
中でも2級、1級に合格すると「速記士」に認定されるため、実力の証明となります。2級とはアナウンサーがニュースを読むときの速さに対応できるレベルです。議会や法廷などで速記者として活躍できるほど高度な技術であり、2級以上はプロ資格と言っても過言ではありません。
試験は年3回、級によって制限時間や総文字数などが変わる
試験は毎年5・8・11月の年3回あり、東京・名古屋・大阪をはじめとする主要都市で受験が可能です。また、東京と大阪では同じ日に異なる級を受験するダブル受験ができます。予約なしの当日受験が可能なことがありますが、確認が必要です。
試験内容は、出題された録音内容を聞き取って記録し、文章にして提出します。問題文のスピードや長さは受験する級によって変わります。通常は聞き取った内容の記録に速記符号を用い、後から「反訳」と呼ばれる書き起こし作業を行います。そうしなければ朗読スピードについていけません。
なお、速記符号とは、「日本」を「=」と記したり、「困る」を小さい「◯」で表現したりすることで記録スピードを上げる記録技術のことです。速記文字とも呼ばれ、流派によって大きく4種類の書き方があります。
各レベルごとの試験の概要は、次のとおりです。
1級 | 2級 | 3級 | 4級 | 5級 | 6級 | |
---|---|---|---|---|---|---|
分速 | 320字 | 280字 | 240字 | 180字 | 120字 | 80字 |
朗読時間 | 10分 | 10分 | 5分 | 5分 | 5分 | 5分 |
総字数 | 3200字 | 2800字 | 1200字 | 900字 | 600字 | 400字 |
合格ライン | 98% | 98% | 97% | 97% | 96% | 96% |
許容失点 | 64字 | 56字 | 36字 | 27字 | 24字 | 16字 |
誤字・脱字などは1文字1失点となります。また、誤訳・未訳などは文字数に応じた失点となるため、正確性が重要です。
速記技能検定は級が上がるほど難しい!
検定には6〜1級まであり、1級は合格率15%と難関
速記技能検定の難易度と合格率は、6級と1級ではまったく異なります。各レベルの試験の概要を見ただけでは難易度にピンと来ないかもしれませんが、簡単にいうと次のような朗読スピードの目安があります。日本速記協会ホームページで実際の朗読音声を聴くことが可能です。
- 1級:2級よりも15%速い
- 2級:アナウンサーがニュースを読む速さ
- 3級:政治家が街頭演説を行う速さ
- 4級:映画のナレーションの速さ
- 5級:文節ごとにポーズを入れて読む速さ
- 6級:速記文字を使わなくても何とか記録できる速さ
等級 | 合格率 | 備考 |
---|---|---|
6級 | 85% | 個人利用目的程度のレベル |
5級 | 60% | 個人利用目的程度のレベル |
4級 | 45% | 事務系の仕事で役立つレベル |
3級 | 30% | 事務系の仕事で役立つレベル |
2級 | 20% | 速記士の認定を受けられる |
1級 | 15% | 速記士の認定を受けられる |
合格率は、最も易しい6級で85%程度、5級で60%程度と言われています。6・5級は個人利用が目的とされていますから、比較的取り組みやすいレベルです。4・3級は事務系の仕事で役立つレベルとされ、合格率は4級で45%、3級で30%程度です。事前に速記文字を習得し、記録と反訳の練習を行うなど試験対策が重要度を増してきます。
2級以上はプロ級の資格です。合格率も2級で20%、1級で15%程度と、対策を行っても必ず受かるとは限らないため難関といえます。しかし、2級以上を取得すれば「速記士」の認定を受けることができ、仕事にも大いに役立つことでしょう。
その他の速記者に関連する資格
パソコン速記検定試験
パソコン速記検定試験は速記技術よりもタイピング能力の指標として用いられる
速記者の関連資格として、パソコン速記検定試験というものがあります。
音声を聞いて直接パソコンに文字を入力するため、速記符号は使用しません。このため、速記技術というよりはタイピングの能力を測る指標として用いられる検定といえます。実際の仕事では聞き取った音声をパソコンで直接文章化するする機会が増えていますから、実務上の需要が見込まれます。
開催主体である一般財団法人全日本情報学習振興協会のホームページではタイピングの体験と練習用ソフトが有償頒布されています。ただし、2018年度以降は検定の開催が休止されています。一方で、同協会が開催する「パソコン検定タイピング試験」でタイピング能力を測ることが可能です。
かつて衆議院速記者、参議院速記者という国家資格があった
速記者の資格で現在主に利用されているのは民間資格ですが、かつては国家資格もありました。国会での討論内容を速記する「衆議院速記者参議院速記者」というものです。
国会速記者とも言われます。デジタル技術の向上により、2011年から衆議院では自動音声認識システムを運用して記録を残す方法が採用され、参議院では映像と音声データから文章入力を行う方法となりました。
そのため、2006年には衆院・参院の速記者養成所が廃止となり、現在では国家資格の試験も行われていません。地方議会においても速記者が出向くことは減り、民間の業者が録音・文字起こしすることが増えています。なお裁判所には裁判所速記官という職種がありますが、こちらも1998年に新規の養成をやめています。
デジタル技術の発展によって速記者の数や働き方が変わってきていることは事実として知っておかなくてはなりません。その一方で、速記者ならではの技術を生かした新しい仕事が発生していることもまた確かです。例えばメディアコンテンツの字幕制作、テープ起こしと内容の校閲、マスコミ関係の取材同行などです。
雑音の多い環境や曖昧な発音の入った音声データ、専門用語を多く含む録音などは、まだまだ人間の手に頼るところが大きいものです。身近な例では、スマートフォン搭載の音声アシスタント機能(AIの一種)もよくできているようで聞き間違いや意味の取り違えが多々あります。
速記者は総数こそ減っていますが、必要とされるフィールドを変えながら今なお数多くの場面で活躍が期待されています。
速記学校、専門学校などは資格試験にも有利
速記学校をはじめ、専門学校や通信教育で速記法を学べる
速記者になるために資格は必須ではありません。しかし、実際に速記者として働くためには速記符号を覚えるなど速記法を習得する必要があります。速記法には大きく分けて4つの種類があり、それぞれ中根式、早稲田式、衆議院式、参議院式と呼ばれていますが、このうちいずれかを学びます。
速記法を学ぶには、独学ではなく速記学校や専門学校に入って学ぶことをおすすめします。正しい速記法を身につけることができ、体系化された授業のため効率的に学ぶことができます。速記法を自分のものにするために必要な期間は2年間、1,500時間以上の練習が必要だといわれています。
長い期間、自分一人で集中して取り組めるという人はそう多くありません。モチベーション維持のためにも学校へ通う方がいいでしょう。なお、仕事や学業で通学が難しいという人のために、通信教育で速記法を学ぶこともできます。
学校によって、学べる速記法は異なります。戦前から速記の専門校として知られる早稲田速記医療福祉専門学校では早稲田式を、考案から100年以上の歴史がある中根速記学校では中根式を学ぶことができます。
何か手に職をつけたいと考えたとき、速記の技術は役立つ場面が多いものです。電話や会議で内容を書き取る機会はビジネスパーソンなら多々あります。速記者として働く以外に、事務職や秘書業務などをはじめとしたオフィスワーク全般で生かすことができる能力ですから、保有していると多くの職種で有利です。
速記者の資格・試験まとめ
必須の資格はないが、速記法を習得すると役立つ場面はさまざま
速記者として働くために必須の資格はありませんが、多くの速記者が保有する民間資格として速記技能検定があります。6〜1級のうち2級以上はプロ資格とされ、「速記士」に認定されます。
速記者として働くために速記法が欠かせないのはもちろんですが、他のオフィス系職種などでも速記が役立つ場面は多くあります。特に会議の議事録作成などで速記技能が生かせることから、事務職などでは保有していると役立ちます。
速記者の参考情報
平均年収 | 400万円~500万円 |
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必要資格 | 必要資格なし |
資格区分 | - |
職業職種 | 出版・報道 |
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