ピアノ調律師になるには?必要スキルや向いている人の特徴などを具体的に解説

ピアノ調律師になるには?必要スキルや向いている人の特徴などを具体的に解説

ピアノ調律師になるには、ピアニストやピアノそのものへの深い理解と、厳密な音感、繊細な感性が求められます。ピアノの調律や保守は非常に難しく、細かいところにまで気が回らないと務まりません。今回は、ピアノ調律師に向いている人の適性や、必要な能力、資格についてご紹介します。

ピアノ調律師になるには何が必要?

ピアノが好きであり、ピアノという楽器への深い理解が不可欠

ピアノ調律師は、主にピアノの調律を行い、またプロのピアニストに最適な調整を施すピアノの専門家であり、別名で「ピアノ技術者」と呼ばれます。ピアノの調律だけでなく、ピアノそのものの保守管理も全般的に担当することから、ピアノを専門にした職人的な存在として、今もピアノの業界において重宝されています。

ピアノの調律はチューニングハンマーと呼ばれる工具を用いて、一つ一つ手作業で行わなければなりません。ピアノの普段隠れている弦の部分を開き、弦のチューニングピンをチューニングハンマーで回し、張力を一本一本、細かく調整していきます。

グランドピアノ、アップライトピアノ、電子ピアノなど複数の種類のピアノありますが、一般に全て88の鍵盤を持っています。88本の弦を調整して、1音、1音、細かく調律を施していくためには、ピアノの音程や響き方など、様々な要素に研ぎ澄まされた感性が必須となります。

ピアノは「鍵盤」を押すことで演奏する楽器です。鍵盤を押すと、ピアノの中央部にあるピンを支点に、テコの原理のような動きをし、奥の方が持ち上がります。これが力を伝達する「アクション」と呼ばれる、7,000もの部品からなる複雑な機構を作動させます。

アクションを通して、鍵盤を押した力が「ハンマー」へと伝えられます。そして力を引き継いだハンマーが、弦を打ち鳴らします。これが音の源となって、響板を振動させ、周囲にピアノの音として鳴り、響くこととなります。

ただ1音鳴らすだけでも、一瞬の間に非常に複雑なプロセスを経るのが、ピアノという楽器なのです。こうした細かく複雑な機構を理解し、最適な音はどんな音なのかを理解しないと、ピアノ調律師になるのは難しいでしょう。

ピアノ調律師は豊富な経験をもとに、完璧な調整を施し、それぞれのピアノやピアニストにとって最適な音となるようにチューニングを仕上げていきます。

ピアノ調律師は、ピアノの異常を即座に察知しないといけない

ピアノ調律師は、定期的にピアノの様子を見て、細かな調整を加えていきますが、その発見の仕方はまるで、不健康な人の病気を定期検診で発見するような感じです。例えばギターやベースなどの別の弦楽器は、構造上、些細な刺激ですぐにチューニングが狂ってしまいます。また、調の変化などに合わせて演奏者が頻繁に調整を施します。

しかしピアノは、指で弾いて鳴らすギターやベースに比べると非常に複雑な構造をしている上、普段弦のある部分は隠れているので、あまり頻繁には狂いは生じません。日数や演奏回数を重ねるごとに、少しずつ、少しずつ狂っていきます。

ピアノの調律の頻度は、一般家庭で趣味で弾く場合は、1年に1回程度でよく、頻繁に弾く場合で、音の狂いに敏感な人であっても、年に2回程度で十分と言われています。複雑で繊細な機構をしているがゆえに、そんなに頻繁に狂うものではないのです。

しかし、年に1度の健康診断で、些細な数字の変化から病気の兆候を察知する医者のように、ピアノの調律師は、表面的に見える少し大きめの狂いに着目しながら、それを足がかりに非常に細かい、非常に微妙な音色の異常、音程の狂いを察知していきます。

こうした繊細な感性を発揮したチューニング技術によって、ピアノの音はまともな音程を取り戻し、また細やかなメンテナンスによって、響き方も最適なものに復活を遂げます。プロのピアニストは些細な音の狂いにも敏感ですから、ピアノを頻繁に弾いているうちに、どうしても極小数の変化でも気になってしまいます。そのため、定期的にピアノ調律師の力を欲しているのです。

ピアノ調律師に向いている人、適性がある人

ピアノの音に対する強いこだわりを持っている人

ピアノ調律師には、ピアノの音や響き方に対する強いこだわりと、美学を持っていることが求められます。また、ピアノへの愛が強く、ピアノはこう響かなければならない、調整によって、最適な音の響きを取り戻さなければならない、といった強く明確な使命感が必要です。

普段人が扱うピアノには、一般的なグランドピアノの他に、さらにそれよりも高品質で高水準の音の鳴りを誇る「コンサートグランド」と呼ばれるピアノが存在し、コンサート会場のステージにおかれる特別なグランドピアノを指します。

このコンサートグランドを調律するピアノ調律師を特別に「コンサートチューナー」と呼び、普通のピアノよりも高品質なこのピアノを扱うことが、ピアノ調律師としての一つのステータスとなっています。

コンサートではプロが存分に実力を発揮できるようにきわめて繊細な調律が必要になりますから、コンサートチューナーという立ち位置は一種の憧れとしてピアノ調律師なら誰もが目指す夢の舞台です。

こうしたプロ水準の調律を常日頃から意識しながら技術を磨くピアノ調律師だからこそ、普段からピアノの音程や響き方に対して特別なこだわりを持っていないといけないのです。そうした意識で調律を行うピアノ調律師には、いい加減な投げやりな態度や、妥協は一切許されないのです。

音を完璧に整えるために、類稀なる集中力と根気が必要

調律の過程においては、複数のアプローチで徐々に音の調整を施していきます。最初から1弦ずつ音を整えていくのではなく、まずは大まかなピッチの狂いを把握するために、第49鍵目のラの音(Aの音)を叩いて、それと音叉(チューニングフォークとも呼ばれる)を叩いたときの音の差をチェックします。ずれていたら、完全に一致するまでチューニングハンマーで細かく調整していきます。

この作業はピアノ調律師の耳だけが頼りです。些細な響きの違い、音のうなりがなくなるまで、完全に音が一致するまで、なんども確認しながら調整していきます。そして、さらに、1オクターブ下のラの音にあたる第37鍵目のAの音を合わせます。この二つのAの音を基準ピッチと呼び、これを基準としていくつかの鍵盤を叩いて和音を作り、1音1音を調整していきます。

その後にアクションの機構やハンマーがきちんと動作しているかを調整する整調、整音の作業に入ります。整音作業においては全ての弦の音が正しい調和を作れているかを確認しますが、この音の良し悪しはハンマーの硬さ・柔らかさで決まるといいます。そうした硬さが違うだけで、響きに不調和が生まれてしまうのです。

こうした事象を解消するために、ハンマーのフェルトの部分に針を刺すことで柔らかくしたり、逆に柔らかすぎるときはヤスリでフェルトを削ったりします。

こうしたピアノの繊細な調和を保つために、ピアノ調律師は長い時間をかけて音を徐々にゆっくりと整えていきます。その過程は非常に職人的であり、しっかりとしたプロセスが確立されていますが、恙無く調律を終えるまでには、類稀なる長時間にわたる集中力と、根気が大切になります。気が短い人は、ピアノ調律師の仕事は耐えられないでしょう。

ピアノ調律師になるための学校・教室

大手ピアノメーカーが認定する調律師養成校への進学がベスト

ピアノ調律師が職業として確立していく中で、大手ピアノ製造メーカーなどが調律師養成校を設立し始めました。そしてそれに続いて、音楽系の総合専門学校や音楽大学など、様々な場所で調律技術を指導する学科を設置するようになりました。

ピアノ製造メーカーが直営する調律師養成学校の例としては、ヤマハピアノテクニカルアカデミー(静岡県)や、カワイピアノテクニカルセンター(静岡県)などがあります。専門学校では、ESPミュージカルアカデミー(東京都)や横浜ピアノ調律学院(神奈川県)、京都ピアノ技術専門学校(京都府)などがあります。

こうした専門学校の他に、東京の国立音楽大学は、独立した学科として調律専修を設けています。

ピアノ調律に大事なのは、音感も含めた専門的な技術のみといっても過言ではないので、上記のようなピアノ調律師を養成する学校に進学するのが最適と言えるでしょう。

ピアノ調律師になるには?まとめ

ピアノの綺麗な音を、類稀なる高度な技術で維持し管理する仕事

ピアノ調律師になるためには、斯様な繊細な工程を内包する調律作業ができるようにならなければなりません。まず必要なのはピアノに対する深い理解を、知識だけでなく実際に耳で感じられるレベルにまで研ぎ澄ませておく必要があります。

ピアノ調律師は日本が豊かになるに従って専門的な職業として認知が広がり、幸いにも非常に専門性の高い教育を受けられる体制が整っています。類稀なるピアノの音へのこだわりのある人は、ピアノ調律師を目指してみてはいかがでしょうか。

ピアノ調律師の参考情報

平均年収300万円~400万円
必要資格 必要資格なし
資格区分 -
職業職種音楽・ラジオ

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