通訳の給与や年収は?同時通訳スキルの向上と対応分野拡大が年収アップに繋がる
通訳は語学という専門スキルを使った仕事であり、国際化が進む現在需要の高い業務です。しかしただ2か国語が話せるというだけでは専門性が高いとは見なされず、厚遇には遠いようです。通訳者として企業に所属している場合の給与やフリーランスとして活動する場合の年収など、通訳の給与・年収について紹介します。
通訳の初任給は
一般社員と大きな差はない
大手求人サイト「Indeed」に掲載されている通訳の新卒採用初任給を調査したところ、17.5万円~21.5万円と、一般社員と大きな差はありませんでした。学生時に修得した語学能力では、ビジネスの現場で通訳ができるレベルにはないと判断する会社が多いようです。
実際に通訳としてビジネス会話をある程度同時通訳できるようになるには3~5年のキャリアが必要と言われますので、この結果は仕方ないのかもしれません。一人前の専門職として扱われるには、最低3年は頑張る必要がありそうです。
経験を積みフリーランスになるのが王道
キャリアを積み、活躍の場が広がると給与も上がってきますが、3~5年程度の経験を積んだ後、フリーランスとして独立する人の割合も多いようです。企業向けの通訳をこなせるようになり、コンスタントに仕事を獲得できるようになると年収600~800万円も目指せるようになってきます。
一般旅行客相手の通訳ガイドの場合には1日2~3万円を稼ぐことができますが、年間通じて常に仕事があるわけではないので、年収として考えるとやや低いと言わざるを得ません。
年収アップに必要なスキル
通訳が年収をアップさせるために必要なポイントは「同時通訳のスキルの向上」と「対応分野の拡大」です。様々なジャンルの通訳に対応でき、国際会議レベルの同時通訳が可能になると単価は大きく上がり、年収アップにつながるでしょう。
また、「医療用語」や「国際的な法律用語」など、専門性の高い内容は通訳者の数が少ないため、非常に高単価が狙えます。
言語によっても差が出る
人気の言語は仕事の需要も多くありますが、通訳者の数も多いために競争が激しく、単価も上がりにくい傾向にあるようです。
共通言語として日本人ほぼ全員が勉強する英語や、人気のある韓国語は比較的単価が安く、イタリア語やスペイン語は高い傾向にあります。中国語も現在はまだ単価が高い状態ですが、人気が高く、修得人口が増えている言語のため、今後は安くなる恐れがあるでしょう。
通訳の平均給与の統計
厚生労働省の統計調査では39万円
厚生労働省が発表した「平成29年賃金構造基本統計調査」においては、通訳が含まれる「専門サービス業(他に分類されないもの)」の平均賃金は全年代・性別合わせて約39万円となっています。そのうち、男性平均は約45万円、女性平均は約31万円と男性側に大きく傾いています。
年代別で見た場合、男女計において20~24歳は約23万円、25~29歳は約28万円と一般的なサラリーマンと大きな差はありません。その傾向はその後の年代でも続き、50歳代でも50万円中盤と、他の業種と比べても突出して高いという訳ではありません。
通訳には多くの能力が求められます。語学力はもちろんですが、正確に発言を聞き取り意図を把握する理解力、一つの言葉に対し豊富な表現の選択肢を持つ語彙力、類似の単語から最も適切な一語を選ぶ表現力、発言の中の要点を拾い上げ最小限の文章量にまとめる構成力など、必要とされる能力は多岐に渡ります。
それだけの要求をされる専門職の割には、高い給与とは言えないかもしれません。
経験で大きく変化
通訳の昇給にはその経験と能力が大きく影響し、単純に年を重ねたから年功序列で昇給するというわけではないようです。重要な会議の同時通訳を任されたり、業界で必須の専門的な知識が豊富といった、他に代用のきかない人材になることが昇給への近道です。
先に挙げた平均給与の中でも、国際会議を任されるようなトップランナーは月給100万円超えもありますが、逐次翻訳のみ対応の場合は20万円台と、その差は大きいのかもしれません。
通訳の年収統計
全年代の平均は600万円
「平成29年賃金構造基本統計調査」における平均給与と年間賞与額から年収を算出すると、全年代平均で約600万円になります。ただし男女別でみると男性は697万円、女性は468万円と、大きな差があるようです。年収がピークに達する50~54歳の平均給与だけ見ても、男性は951万、女性は605万と、さらに大きくなっているようです。
男女差の原因の一つに、女性は結婚・出産を機に一度職場を離れ、復帰・再就職をするという動きがあることが考えられます。男性は継続して勤務するためキャリアを形成しやすい傾向にありますが、女性は一度中断することから平均した給与の伸びに繋がりにくいようです。
大手転職サイトの年収統計
ここまでは厚生労働省の統計を基にお話ししましたが、民間の企業による給与・年収調査では、また違った結果が出ています。
大手求人サイト「doda」が発表した「平均年収ランキング 最新版」によると、「翻訳/通訳」業の平均年収は352万円。男女別にみても男性377万円、女性343万円と、厚生労働省の発表とは大きくかけ離れています。
このデータはdodaの転職エージェントに登録したサラリーマンのデータをベースにしているとのことなので、転職の意思がある人のデータということから、給与面に不満がある人の割合がある程度多いものと推測できますが、それでもかなり安めであると言わざるを得ません。
給与の額は就職する企業の規模によっても大きく左右します。「平成29年賃金構造基本統計調査」における「専門サービス業(他に分類されないもの)」の平均給与・年間賞与額から類推すると、1,000人以上の規模の企業の年収は平均846万円になるのに対し、10~99人の企業では531万円と、実に1.6倍の開きがあります。
大企業になればそれだけ事業における国際分野の比率も高く、活躍の場も増えるため、高い年収につながる見込みがあります。就職・転職活動を視野に入れる時には、企業の規模も判断材料の一つとにすべきでしょう。
通訳派遣会社の料金から予測する年収予測
通訳として企業に属し経験を積んだ後、フリーランスとして独立したり、派遣社員として不特定の企業で働くという選択肢もあります。その場合の収入はどのようになっていくのでしょうか。
通訳の派遣エージェント大手「サイマル」の通訳派遣料金表は下記の通り。
クラス形式 | 1名 半日 (3時間以内) |
1名 1日 | 延長 1時間 |
---|---|---|---|
クラスS (医療などの特定分野のみ) |
¥80000 | ¥120000 | ¥19000 |
クラスA | ¥67000 | ¥100000 | ¥16000 |
クラスB | ¥53000 | ¥80000 | ¥13000 |
クラスG | ¥34000 | ¥50000 | ¥8000 |
通訳者のグレードにもよりますが、国際会議・シンポジウムといった複雑な対外的案件の対応が可能なクラスAにおいて、
- 通訳者の報酬は料金の50%
- 1日と半日の案件が月に5日ずつ
という条件で派遣されると仮定した場合、
¥100,000×5日+¥67,000×5日×12か月
=¥5,010,000
と、年収500万円相当が想定できます。
この料金はフリーランスが受け取る報酬金額の参考にもなり、もし派遣エージェントを通さずに直接同額で請け負うことができれば収入は2倍になるため、1,000万円以上の大きな年収が期待できるでしょう。
また、指定した期間だけ高額の時給で企業に派遣される就業形態も選択肢の一つです。求人サイトで募集されている案件を見ると、地域や業種により時給の上下はありますが1,500円~3,500円での募集が多いようです。
仮に条件を
- 時給3,000円
- 1日8時間 月22日出勤
- 派遣期間6ヶ月
と仮定した場合、
¥3,000×8時間×22日×12か月
=¥3,168,000
と、半年で300万を超える収入が期待できます。派遣期間が終了した後に必ず仕事がある状態ではないという恐れもありますが、上手く契約期間を繋ぐことができれば高額の収入を得られるでしょう。
通訳の給料・年収まとめ
スキルアップ必須!専門性を高めて高額収入を狙う
通訳の平均給料や年収はサラリーマンとしてみた時には特別高いものではありません。しかし専門性や同時通訳のスキルを高め、市場価値を上げることで代わりのきかない存在となり、高い収入を得られるようになる可能性があります。
通訳の活躍の場は一企業の中だけにあるわけではありません。自身の市場価値を高めた後は、フリーランスや派遣を通じてさらに大きな活躍の舞台を求めていけるのが通訳の醍醐味と言えるでしょう。
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通訳の参考情報
平均年収 | 400万円~1000万円 |
---|---|
必要資格 | 必要資格なし |
資格区分 | - |
職業職種 | 国際 |
統計情報 出典元:
- 職種・性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額
- 職種別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額
- 年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額
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