歯科医師の資格・試験とは?歯科医師国家試験の概要と合格の秘訣

歯科医師の資格・試験とは?歯科医師国家試験の概要と合格の秘訣

歯科医師の資格は、大学の歯学部を卒業して国家試験に合格しなければなりません。近年は歯科医師の過剰問題から、国家試験の難化などで合格率が低下しています。激化する競合を乗り越えるために同業者との差別化を図るべく、専門医や認定医という新たな資格についても紹介します。

歯科医師の資格とは?

歯科医師の資格を取得するには、まず大学の歯学部を卒業して歯科医師国家試験の受験資格を満たさなければなりません。

その後、歯科医師国家試験に合格すれば歯科医師免許を取得できます。近年では歯科医師が過剰に供給されている問題があり、対策として歯科医師国家試験の難易度は年々上がっていて、それに比例して合格率は下がっていく傾向にあります。

歯科医師国家試験に合格した後、歯科医籍に登録すると厚生労働大臣から歯科医師免許が発行されます。その後一年間研修医として臨床経験を積むと、正式に歯科医師として医療行為を行うことが出来るようになり、開業することも出来るようになります。

歯科医師国家試験

歯科医師国家試験を受験するためには、大学の歯学部を卒業して歯学の学士の学位を取得し、歯科医師国家試験に合格しなければなりません。大学を卒業しただけでは歯科医師になることは出来ません。

歯科医師国家試験の受験資格が得られる大学の歯学部は、医学部と同じく六年制です。歯科医師は医師という言葉がついていますが、医師とは別の国家資格になります。

歯科医師の資格の難易度・合格率

歯科医師になるためには大学の歯学部を卒業して歯科医師国家試験に合格し、歯科医籍に登録し、厚生労働大臣から免許を付与されなければなりません。近年では歯科医師の過剰供給問題から、歯科医師国家試験は難易度が大幅に上がっています。それに伴い、合格率も以前とは比べ物にならないほど低下しています。

また、日本国内の大学の歯学部を卒業して歯科医師国家を受験する人が大半ですが、2004年に行われた第97回歯科医師国家試験では、約3000人の受験者の中で5名が日本国内の大学の歯学部以外を卒業して歯科医師国家試験を受験しています。

歯科医師国家試験の難化は歯科医師過剰問題が背景に

歯科医師過剰問題とは、歯科医師免許を取得して歯科医師として働く人達が増えすぎて、需要と供給のバランスが成り立たなくなる社会問題のことを指します。医師は外科や内科などの専門分野に分かれた診療科が存在していますが、全ての診療科を合計しても医学部の定員は約9000人です。それに対して診療科が単独である歯学部の定員は約2500人です。

医学部の約9000人が多いと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、診療科ごとに分かれて就職するので、実態としてはあまり人気がない診療科は人手不足に悩まされています。それに対して、歯学部は診療科が歯科の単独です。そのため、歯科以外に就職することはありません。なので、約2500人が同じ診療科に集中するため、どうしても医師に比べて人員が過剰になりやすい傾向があります。

定年される歯科医師の方も存在するため、現在の歯科医療体制を維持するには、約1200人ほどの新しい歯科医師が毎年必要であると言われていますが、歯学部の定員は約2500人です。維持するのに必要な倍以上の卒業生が毎年歯科医師国家試験を受験しているので、過剰供給になるのも必然の問題でした。この状況を放置し続けた厚生労働省にも非難の声があがっていましたが、私立大学などでは安易に定員削減に踏み切ることは出来ないなど、過剰供給問題は今後も続いていくことが予想されています。

実際に歯科医師の過剰供給を証明する根拠として、全国、特に都市部での歯科医院の乱立などが問題となっています。歯科医院は全国でコンビニエンスストアの店舗数より1.6倍も多く存在しています。東京都では一日に一軒のペースで歯科医院が廃業しています。かかりつけにしていた歯科医院が廃業してしまい、新たに探さなければいけないということも日常茶飯事になりつつあります。

このように、歯科医師の数が過剰になった結果によって、競合が激化していることもあり、歯科医師の労働環境の悪化が問題になっており、労働時間が長くなったり賃金の低下などが顕著です。歯科医師の労働環境が悪化すると、患者さんに対して最高の歯科医療を提供できなくなるなどの問題も起こってきています。

歯科医師国家試験の難化と合格率の低下

歯科医師が過剰供給されて様々な問題が起こっていることから、厚生労働省は対策として歯科医師国家試験の難易度を以前よりはるかに上げています。そのため、1997年に約90%でほとんどの人が受かっていた国家試験は、2018年には約65%ほどの合格率にまで下がりました。

少数精鋭なので入学するのが難しく、教育の質も高い国公立大学の歯学部であっても、近年では合格率が90%を超える大学が1校も存在しないなど、難易度は急激に上がっています。

私立大学の歯学部はさらに深刻な問題が生じている

歯科医師国家試験の合格率が低い大学は翌年以降、国からもらえる学校法人運営の補助金が減らされてしまいます。そのため私立大学の歯学部では、進級試験の難易度をどんどん上げていき、卒業時に学部生を留年させて、確実に合格する見込みのある生徒しか国家試験を受けさせず、合格率が高くなるように調整しているところが少なくありません。

私立の歯学部では歯科医師国家試験の難化の影響もあり、国家試験合格率が全体の半数以下にまで落ち込んでいるところが多数あります。そのため歯学部に入学してから歯科医師の国家資格を取得するまでにかかる期間が延長されている大学が多くなっています。

歯学部の最低就業年数である6年間で卒業して国家試験に合格している学生の割合は92.5%から8.5%まで、大学によって大きく異なっています。そのため、補助金目当てに留年や浪人などを面接で排除するなどの行為を行っている私立大学の歯学部が、問題から目をそらしているという批判もあります。

歯科医師になると自動的に付与される資格がある

歯科医師の国家資格を取得すると、試験を受けなくても自動的に付与される資格があります。食品衛生管理者・衛生管理者・衛生検査技師の3つの資格は、歯科医師の国家資格を持っていることにより付与されます。

また、試験はありますが一部免除になったり、所定の学校を卒業していなくても受験資格が与えられる資格として、歯科技工士、臨床検査技師、労働衛生コンサルタントなどがあります。

歯科医師免許を取得した後に取得出来る専門医の資格

歯科医師の免許を取得した後、指定されている期間で数年間の臨床経験や症例についての論文や研究発表、講義を受講することなど、一定の基準を満たしてから試験に合格することで専門医の資格を得ることが出来ます。

専門医には、難しい手術を中心に行う口腔外科専門医や歯科麻酔専門医、日本矯正歯科学会専門医など、様々な団体が認定している専門医資格があります。専門医の資格を取得できると、ホームページなどに記載できるため、歯科医院の競合が激しい近年では専門医資格の人気が高まっています。

認定医も専門医と同じような扱いですが、医師の専門医や認定医と違い、歯科医師の専門医、認定医は歯科医院の競合が加速してきたために、他の歯科医院との差別化を図るために急速に広まった制度です。そのため、認定している団体の歴史が浅かったり、数日講習を受けるだけで認定医の資格を取得することが出来るなどの中身のない資格が増えているという指摘もあります。

歯科医師の資格が取れる大学について

歯科医師の資格を取得するのに必要な歯学部歯学科がある大学は、全国に29校あります。国公立大学が12校、私立大学が17校となっています。

国公立大学に人気が集中

国公立大学は学費が安いことや学生の国家試験合格率が高いこともあり、受験生から人気です。

歯科医師の過剰問題で私立大学歯学部の留年率や退学率が以前より上昇していることもあって、今後国公立大学歯学部の人気はますます上昇していくと予想されています。

歯科医師の資格についてのまとめ

難化する歯科医師国家試験

歯科医師は、多くの人にとって身近な頼れる存在だと思います。近年では国家試験の難化や過剰供給問題による労働環境の悪化など、良いことばかりであるとは言えません。ですが、歯科医師を目指している多くの方は患者さんを救いたいという理想を掲げて歯科医師を目指しています。

国家試験の難化は今後も続いていくと予想されていますが、患者さんの命を預かる歯科医師の仕事の大切さと向き合うためには、必要な事であるともいえます。

歯科医師の参考情報

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