車掌の資格・試験とは?役立つ資格の特徴や試験の難易度、合格率などを解説
鉄道の運転士等と異なり、車掌が担当する仕事自体には、特別な資格の取得は不要です。しかし車掌になるには、所定の登用試験を受験し合格し、研修を修了する必要があります。今回は、車掌の資格・試験の特徴や、登用試験の内容などをご紹介します。
車掌の資格とは?
車掌の仕事そのものには特別な資格は不要
鉄道機関において、運転士以外の、車両運行に携わる仕事の全般を担うのが、車掌の仕事です。ドアの開閉、運行上の安全確認、適正かつ円滑な運行管理、車内放送や車内での検札など、その仕事は多岐に渡ります。
車掌業務そのものには特別な国家資格などは必要ありません。しかし、車両の応急処置や乗客対応、車内検札をはじめとした諸対応を適正かつ円滑に行っていく必要があるため、車掌として仕事を開始するためには、駅員(駅係員)として鉄道運行に際する幅広い業務の経験を重ねた後で、鉄道会社における所定の車掌登用試験を受験し、合格する必要があります。
車掌は運転士への登竜門的な立ち位置でもある
鉄道会社において、一般的な車掌へのプロセスは、正社員となった後、駅員としての経験を積んで、その後車掌の登用試験を受け、合格することで車掌になることができる、というものです。車掌になるために資格は必要ありませんが、一定の経験やスキルが必要ということになります。
鉄道会社によってその詳細な基準などは異なるようですが、一般的には1年半〜2年ほどの駅係員業務を経て、知識と経験を習得したと判断されて初めて、登用試験の誘いがかかるようです。
そして、車掌よりもなるのが難しいのは鉄道車両の運転士で、「動力車操縦者運転免許」という国家資格を取得する必要があります。運転士になるためには、一般的には車掌としての経験を積み、運転士に必要な知識や技術をしっかりと身につける必要がありますので、車掌よりも運転士の方が経験豊富であり、立場が上です。
車掌の資格の難易度・合格率
車掌登用試験(乗務員登用試験)の概要
鉄道会社においては、駅など直接現場に携わる仕事のうち、車掌や運転士など車両の運行に関わる人たちを「乗務員」として区別しています。乗務員は、鉄道会社における花形的な職業で、鉄道運行の仕事の醍醐味でもあります。鉄道が好きな人にとって、運転士は好きな車両を運転できるわけですから、まさに最高の仕事と言えます。
乗務員職へステップアップするためには、まずは駅係員として駅に配属され、駅の運営や鉄道運行に際する、特別な専門性を必要としないありとあらゆる業務の経験を積む必要があります。駅員の仕事は、駅内清掃から乗客対応まで様々なものがあり、駅員としての経験を積むことで、鉄道運行に携わる者としての基本的な感覚、価値観などをしっかり身につけることができるでしょう。
駅員として1年半〜2年(鉄道会社によっては1年程度の場合もあり)経験を積むと、上司から「乗務員登用試験」へのお誘いがかかります。乗務員登用試験を受けるためには、所定の経験、知識が必要なだけでなく、客観的な「評価」も大きく必要となっています。
なぜなら、一般的に乗務員登用試験を受けるためには、上司の推薦が必要となってくるからです。ただ業務をこなすだけではなく、経験の多い先輩社員からしっかり評価されないと、乗務員登用試験へのお誘いはなかなかかからないでしょう。
乗務員登用試験は各鉄道会社それぞれの基準に沿って行われ、試験に合格すると、所定の研修が始まります。研修センターなどで最初(1〜2ヶ月)は座学、座学研修を修了したのち、直接主任車掌の下について、車掌業務に必要なスキルや知識を直接的な現場指導によってみっちりと教え込まれることになります。
こうした研修を経て「単独作業確認試験」を課され、合格すると晴れて一人前の車掌として独り立ちができるのです。
車掌登用試験(乗務員登用試験)の具体的な内容
乗務員登用試験の具体的内容としては、まず1次試験として筆記の学科試験及び適性試験が課されます。
具体的な内容は鉄道会社によって異なりますが、鉄道会社社員のブログなどを参照すると、学科試験の内容としては、数学(運転関係の仕事を行うために数学への理解度は極めて重要となります)、営業規則や規定に関する設問、沿線案内に関する試験などが出題されるようです。
適性試験の内容としては、横並びの数字の足し算をひたすらこなしていく「クレペリン検査」や、視力検査、反射速度と注意配分に関する検査など。反射速度の検査は、所定の色の光が表示されるのに合わせて、所定の色のボタンを押すという反射神経の問われる試験で、注意配分の試験は、所定のマス目にランダムに並べられた沢山の数字(例えば1〜48までの全ての数字)を1から順番に正確に指差して行くというものであるようです。
2次試験は面接となり、人間性を含めて考査されることになります。面接試験に合格すると、その後の車掌になるに向けての研修期間へ突入します。研修の内容は先述の通りですが、研修に合格して一人前の車掌になるまでに、一般的には半年弱〜1年ほどかかるようです。
登用試験は、然るべき知識を身につけていれば問題ない内容
乗務員登用試験は、駅員として然るべき知識をちゃんと身につけていれば受かる内容と言われています。
上司の推薦も含め、一定の仕事経験による習熟度を評価された上で乗務員登用試験への受験資格があると判断され、その上で登用試験へのお誘いがかかる形となりますので、受験資格が得られるほどの知識と経験があれば、まず問題ないレベルということです。
ですので、受験資格が得られた人が試験を受ければ、まず間違いなく受かる内容ということなのでしょう。ネックとなることがあるとすれば、学科試験ではなく、適性検査や医学適性でしょう。学科がいくら出来ても、これらが基準に達していなければ、乗務員登用試験の合格が出来なくなってしまいますので、注意が必要です。
その他の車掌関連資格
新幹線の車掌になるにはどうすればいいのか
これまでは、一般的な在来線の車掌への道について説明してきましたが、新幹線の車掌になるためには、どういったステップをたどる必要があるのでしょうか。
大まかなプロセスとしては駅員から車掌へステップアップする形式で、そこは在来線とあまり変わりません。しかし最終的なゴールとして新幹線の乗務員職を考えている場合は、まず大前提として、当然のことながら新幹線を運行させている鉄道会社へ入社する必要があります。
例えば、「のぞみ」や「ひかり」の場合だとJR東海(東京〜新大阪間)かJR西日本(新大阪〜博多間)、「はやて」や「とき」の場合だとJR東日本、といったように、入社した鉄道会社によって、どの新幹線の車掌になれるかは変わってきますので注意が必要です。
そして新幹線の車掌になるためには、いきなり新幹線の車掌への登用が行われるわけではありません。新幹線の運行にはよりシビアな基準が設けられているため、まずは在来線の車掌としての経験が必要です。在来線で経験を積み、単独作業を問題なく行えるようになって一人前の車掌になって、さらに暫く経験を積み重ねてはじめて、上司から声を掛けられます。
あくまでも登用試験は社内での評価制度を基準として行われるものであるので、上司からの推薦制度をとっているケースが多く見られます。新幹線車掌への道に進むためには、本人の希望はもちろん、上司からしっかりと評価されることでようやくステップアップへの一歩を踏み出せます。
車掌の資格を取るための学校
鉄道会社を目指す上で有利となる学校は特にない
車掌となるために必要な条件は鉄道会社に入ることが大前提となりますので、まずは鉄道会社の採用試験を受ける必要があります。その際には、一般的な民間企業などと変わらず、特別な学校を出ている必要はありません。しかし目指す職の種類によって、必要な学歴などは変わってきます。
高校卒業程度の学歴があれば鉄道会社の採用試験を受けることができますので、高卒の時点で入社してしまうのも一つの手です。基本的に鉄道会社での現場実務に必要な知識や技術は入社後に学べばいいという姿勢の鉄道会社が多いので、採用試験の際に工業系や機械系を出ていれば有利ということも特になく、高校の普通科を出ていてもなんら問題はありません。
専門学校卒は就職実績も多く、専門学校卒のための一定の採用枠を設けている鉄道会社も少なくありませんので、高校を出た後に専門学校へ進学するのもいいでしょう。鉄道に関する実務に特化した専門学校もありますし、そうした学校には求人も多く集まりますので、現場での業務にしっかり関わるなら、専門学校への進学は身になると言えるでしょう。
ただし総合職や管理職を志望するのであれば、大学以上への進学も考えるべきです。例えばJRなどもともと国の機関であった鉄道会社の場合では大学の学部卒、修士卒だと給与など待遇面でも有利になりますし、最終的なゴールが現場専門でなく管理職以上にあるのであれば、大学へ進学しておくことは重要な条件となってきます。
車掌の資格・試験まとめ
まずは鉄道会社へ入ることが大前提、そこから着実にステップアップを
当然のことながら、鉄道機関における車掌になるためには、鉄道会社の社員にならないといけません。何であれまずは鉄道会社への入社試験を突破しなければなりません。入社できればそこから本人の希望や適性によって、車掌を目指すことが可能となります。
車掌の仕事は多岐にわたるので、車両や運行管理上の様々な知識と経験を問われます。車掌になる資格を得るために、まずは駅係員として、必要なスキルや知識を地道に磨いて行くことが大切となります。
車掌の参考情報
平均年収 | 500万円〜600万円 |
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必要資格 | 必要資格なし |
資格区分 | - |
職業職種 | 運輸・乗り物 |
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