宇宙飛行士になるには?求められることや向いている人の特徴などを具体的に解説
まだまだ未知の領域も多い宇宙開発の分野で活躍する宇宙飛行士。そんな宇宙飛行士になるには、JAXA宇宙飛行士選抜試験の厳しい応募条件を満たし、合格する必要があります。本記事では、宇宙飛行士になるために求められること、向いている人の特徴などについてご紹介します。
宇宙飛行士になるには何が必要?
JAXAの選抜試験に合格すること
日本で宇宙飛行士になるには、JAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構、Japan Aerospace eXploration Agency)の宇宙飛行士選抜試験に合格する必要があります。
試験は不定期で、応募人数は若干名です。これまでに5回の選抜試験が実施されてきましたが、いずれも倍率は100倍を超える激戦でした。宇宙飛行士になるためには、この狭き門を潜り抜けなければなりません。
なお、海外にもアメリカ、ロシアなどには宇宙飛行士の資格があり、たとえばアメリカのNASAの宇宙飛行士になるためにはアメリカ国籍を有することなどが条件となっています。JAXAの宇宙飛行士は、NASAでは外国の宇宙飛行士として扱われています。
自然科学系の学歴、職務経験など
JAXAの宇宙飛行士選抜試験は、日本国籍を有することや、学歴、職務経験など様々な応募条件があります。
学歴は大学卒業以上で、理学部、工学部、医学部などの自然科学系の学部であることが条件となっています。また、自然科学系の研究等への実務経験が3年以上必要です。宇宙飛行士になりたければ、まずは自然科学系の大学を卒業して実務経験を積むことがスタートラインとなります。
身体能力、特性など
選抜試験の応募条件として、身長や体重などの制限もあります。もっとも最近行なわれた平成20年度の選抜試験の募集要項によると、応募者は以下の身体的条件を満たしている必要があります。
- 身長:158cm以上190cm以下
- 体重:50kg~95kg
- 血圧:最高血圧140mmHg以下かつ最低血圧90mmHg以下
- 視力:両眼とも矯正視力1.0以上
- 色覚:正常
- 聴力:正常
また、25メートル泳げる、10分間立ち泳ぎができる、という泳力も必要です。
心理学的特性や幅広い知識・教養等も必要
心理学的特性も必要で、
協調性、適応性、情緒安定性、意志力等国際的なチームの一員として長期間の宇宙飛行士業務に従事できる心理学的特性を有すること。
が条件となっています。
その他に、以下のような知識や教養、日本文化への造詣なども求められます。
- 宇宙飛行士としての訓練活動、幅広い分野の宇宙飛行活動等に円滑かつ柔軟に対応できる能力(科学知識、技術等)を有すること。
- 日本人の宇宙飛行士としてふさわしい教養等(美しい日本語、日本文化や国際社会・異文化等への造詣、自己の経験を活き活きと伝える豊かな表現力、人文科学分野の教養等)を有すること。
これらは単に自然科学系の学歴や職務経験を積んだだけで得られるものではなく、常日頃から幅広い知見・教養を身につける努力が必要です。
語学力、運転免許など
宇宙ステーションの公用語は英語ですし、地上とのやり取りやチーム内のコミュニケーションのためにも英語が用いられます。宇宙飛行士には、宇宙で行う実験や研究などの専門用語も含め、ハイレベルな英語力が必須です。また、ロシアの管制官と通信することもあるので、ロシア語もできればなお良いとされています。
もちろん、語学力だけではなく、限られたスペースで仲間と生活できる協調性や適応性なども必要です。
ほかに、アメリカでの勤務時に国際免許を取得する必要があるため、日本の普通運転免許を採用時までに取得することも条件となっています。
宇宙飛行士に向いている人、適性がある人
応募条件を満たしている人
宇宙飛行士は宇宙空間で任務にあたるという特殊な仕事なので、宇宙飛行士は、学歴、職務経験、身体的特性、心理学的特性など様々な条件を満たすことが必要です。
選抜試験の応募条件を満たすだけでもかなり難しいと思う人も多いでしょう。応募条件を満たしている人、満たす見込みがある人は、宇宙飛行士としての最低限の適性を持ち合わせていると言えます。
強じんな精神力がある人
宇宙飛行士は、地球から遠く離れた宇宙ステーションの限られた空間で長時間を過ごさなければなりません。宇宙は重力が少ないという地球とは異なる環境ですし、浮遊してくる物体と衝突してしまったり、宇宙放射線を浴びたりするリスクもあります。
このような特殊な環境にある宇宙ステーションで生活し、きちんと任務をこなすためには、強じんな精神力が求められます。すぐにホームシックになる人、孤独感にさいなまれやすい人、落ち込みやすい人、情緒が不安定になりやすい人は、宇宙飛行士としての適性がありません。
冷静な判断力がある人
宇宙飛行士は、様々なリスクを想定して必要な準備をしたり訓練をしたりした上で宇宙へ飛び立つわけですが、それでも思わぬトラブルが起きないとも限りません。
宇宙ステーションという地球から遠く離れた場所で、想定外の事案が発生した場合でも、冷静に状況を判断し、適切に対応することが求められます。すぐにパニックに陥りやすい人、そそっかしい人には不向きの仕事と言えます。
集中力がありマルチタスクが得意な人
宇宙飛行士は、少ない人数で実験や設備の組み立てなどの作業を行ないます。1人で負担の大きい作業をすることもあるので、長時間でも集中力を持続できる人が向いています。
また、特殊な装置を使用して作業をすることがありますが、手順が複雑な場合も多々あるので、マルチタスクが得意な人の方が適性があると言えます。宇宙では必ずしも思い通りに作業が進まないこともありますので、タスクを一つずつこなさないと次に進めないタイプの人には向いていません。
コミュニケーション力がある人
宇宙開発には多くの国が参加しているので、宇宙飛行士の国籍も様々です。宇宙飛行士は、国籍や文化が異なるチームメートと長い時間を共にすることとなります。
英語やロシア語の語学力が必要なことはもちろんですが、相手の意見をよく聞き、自分の意見もしっかりと伝えることが求められます。また、文化的背景が異なる人との協調性も欠かせません。
宇宙ステーションに長期滞在する宇宙飛行士は、これまでのところ多くても6名、少ない時で2名です。この少ない人数で与えられた任務をこなさなければなりません。閉鎖空間の中で、少ないチームメートとともに何か月も過ごすためには、円滑なコミュニケーション力が欠かせません。
宇宙飛行士になるための学校・教室
専門の学校などはなく、訓練は選抜後
宇宙飛行士を目指す人のための専門の学校・教室というのは特にありません。
宇宙飛行士はパイロット、医者、自衛隊員、科学者など様々な仕事で職務経験を積んだ人が目指すことが多いようです。選抜試験でも自然科学系の大学を出て職務経験を積むことが応募条件となっていますので、宇宙飛行士を目指す人の学校としては、まずは自然科学系の大学が挙げられます。
宇宙飛行士というと無重力空間などで特殊な訓練をしているイメージがあるかもしれませんが、そのような訓練はJAXA宇宙飛行士の選抜試験を勝ち抜いた後に専門の施設等で行います。選抜試験の応募人員が非常に少ないのは、宇宙飛行士の育成に多大な費用がかかるためと言われています。
学校・教室で学んで資格試験を受け、合格すればすぐに働けるという仕事はたくさんありますが、宇宙飛行士の場合、学校での勉強は応募条件のひとつにすぎず、専門の訓練などは選抜後となります。そして、一定の訓練を積んだのちにはじめて宇宙飛行士として宇宙へ飛び立てるということになります。
宇宙飛行士の体験スクールなど
宇宙飛行士の訓練の一端を体験してみたいという方向けの体験スクールなどもあります。
筑波宇宙センターでは、宇宙飛行士が使用したのと同じ施設で模擬訓練・体験ができます。体験コースは4種類あり、閉鎖環境下での作業や宇宙での船外活動、無人探査車の遠隔操作などです。体験料金は、1種類なら2,100円、2種類は2,625円、3種類は3,150円です。対象年齢は小学2年生以上なので、子どものうちに体験してみることもできます。
ほかにも体験スクールのツアーなどもあります。いずれも民間企業が実施していますので、興味のある方はインターネット等で調べてみてください。
宇宙飛行士になるには?まとめ
憧れや熱意だけではなく様々な適性が必要
宇宙飛行士は、採用されればすぐに業務に就けるとか、学校を卒業して資格を取ればなれるといった職業ではありません。まずは高倍率の選抜試験を突破した上で訓練を積み、やっと宇宙飛行士として認定されます。
宇宙飛行士になるには、厳しい訓練や宇宙空間での長期滞在に耐えられるだけの精神力や外国語でのコミュニケーション力、幅広い知識やスキルなど時間をかけて身に着ける必要があります。
宇宙飛行士の参考情報
平均年収 | 500万円~800万円 |
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必要資格 |
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資格区分 | 試験合格 |
職業職種 | 運輸・乗り物 |
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