航空管制官の仕事内容とは?やりがいや魅力について解説
航空管制官は、各地の空港の管制塔などに常駐し、レーダーや無線を用いてパイロットとやりとりを行いながら、航空機が適正で安全な運航を維持できるように努める仕事です。24時間365日常駐し空の安全を監視するハードな仕事です。この記事では、航空管制官の仕事の内容や特徴、将来性についてご紹介します。
航空管制官とはどんな仕事?
定時運航している旅客機などを適正かつ安全に運航させる仕事
航空管制官とは、国土交通省に所属する国家公務員で、無数に飛ぶ旅客機などの飛行機の運航に関して、異常接近や衝突を防ぐために、適正に運航が維持できるようにそれぞれの飛行機の飛行位置を俯瞰し、管制よりパイロットに指示を出すことで飛行位置を調整する仕事です。航空管制官は主に全国の空港の管制塔に常駐し、24時間365日、交代制で空の安全を見守っています。
航空管制官は必ずしも全ての空港に配置されているわけではありません。自衛隊や米軍などが管制する軍民共用空港もあれば、地方であっても国土交通省の航空管制官が管制する空港もありますし、航空管制運航情報官が対空援助業務を行う空港もあります。航空管制官が常駐する空港は、全国に33空港あります。
航空管制官の勤務地は、各地の空港の管制塔をはじめ、空港内の事務所、航空交通管理センター、航空交通管制部などがあります。
航空管制官の仕事の具体的な内容の例
航空管制官の主要な仕事は、航空管制業務
航空管制官の行う仕事としては、大きく3つにわかれます。飛行場管制業務、進入・ターミナルレーダー管制業務、航空路管制業務です。飛行場管制業務とは、国土交通省の航空局飛行場管制所にて行われる航空交通管制業務を指します。
進入・ターミナルレーダー管制業務は、主に旅客機などの出入時に行われる航空交通管制業務で、進入管制業務は一般的にレーダー管制下でない飛行機に対して行われる管制業務であり、比較的交通量の少ない空港において行われます。
ターミナルレーダー管制業務は、羽田空港、成田空港、関西国際空港など交通量が多く、非常に多くの旅客機が出入りをする場合に、レーダ管制下にて行われる管制業務です。航空路管制業務は、主に航空路を飛行中の飛行機に対する管制業務です。
飛行場管制業務は空港の管制塔で、進入・ターミナルレーダー管制業務は空港事務所にて、航空路管制は国内4箇所にある航空交通管制部にて行うのが一般的となっています。空港の近くでリアルタイムに行われる仕事もあれば、全国の航空路に関する状況を一元管理する、遠隔的な仕事もあります。
航空管制業務は原則として英語で行われる
航空管制業務においては、原則として航空英語と呼ばれる、航空管制に特化した英語が用いられます。
ですので、航空管制官は、英語が読めるよりも、英語がある程度話すことができないと、文字通り話になりません。そのため、採用試験においてもリーディングだけではなく、リスニング、スピーキング(面接形式)にて英語力を厳しく見られることとなります。
また、高度な作業記憶能力、状況判断能力、空間認識能力、一定以上の視力、また細かなトラブルや警告も聞き逃さないよう一定以上の聴力を、採用試験段階でかなり厳しく判断されることになります。航空管制官は、こうした一般の公務員試験とは一線を画した、特殊な能力を求められることになります。
先に見てきた通り、航空管制においては、レーダーを駆使して飛行中の飛行機の動きを細やかに観測しながら、遠隔的に状況を把握し、パイロットに知らせる必要も出てきます。非常に迅速、かつ効率的な指示対応が重要となってきます。
緊急時における航空管制を如何に行うかが最大の重要事項
航空管制官は、空の安全を守り、航空状況を逐一、一手に把握する必要があり、言うなれば「空のパトロール」を行う仕事です。ですので、緊急事態が発生した際は、いかに状況が悪くならないように保ちながら、迅速かつ的確に対応が行えるかが航空管制官の腕の見せ所であり、存在意義でもあります。
航空管制官が遭遇する緊急事態には、以下のようなものがあります。
- 航空機の機体の故障や損傷が発生してしまった場合
- 自然災害など、飛行機が正常かつ安全な飛行に支障がある場合
- ハイジャックなど、犯罪組織などによって飛行機が乗っ取られた場合
- 管制システムにトラブルが生じたり、システムがダウンした場合
- 自然災害などによって空港施設や航空保安施設が使用不可になった場合
- パイロットの操縦ミス、管制の指示ミスなどが発生した場合
航空機の機体の故障や損傷で最も多いのは、飛行機の着陸時、接地によって発生するタイヤのパンクです。タイヤのパンクが発生した場合、管制は直ちにその滑走路を閉鎖し、破片など危険物が落ちていないかを点検します。
続いて後続機を他の滑走路に着陸させるため、即座に後続機など、全ての部署に対して、滑走路閉鎖の旨を伝え、後続機を着陸させる滑走路の調整を行います。
航空機に重大な悪影響を及ぼす自然災害としては、強い乱気流、強いスコールライン、台風(あるいは熱帯低気圧)、強い雷電、雹、砂塵嵐、火山の噴火などがあります。アイルランド島の噴火など、世界規模の災害が起きた場合などには、管制承認は慎重に行わなければなりません。
しかしアイルランド島の噴火が起こった際は、各国の管制上の承認が慎重に慎重をきすあまり対応が遅れ、最終的にユーロコントロール(汎ヨーロッパ的な航空交通管制を行う国際機関)によって作成された危険度別空域案をヨーロッパ連合理事会が承認したことで、危機が回避されました。
ハイジャックは、過去における対応事例をもとに、非常に緊迫した状況下における対応が求められます。ハイジャックが発生した旨を管制が受信した場合、即座に関係各機関へ通報、情報の共有を行い、パイロットからのどんな些細な合図、音声、徴候、レーダー上の変化、気配なども見逃さないよう、静かに状況を監視し、対応を各機関に委ねます。また燃料の残量や通信手段などの状況も非常に重要な情報源となるため、速やかに管制の方で調査します。
航空管制官の仕事のやりがい
空の安全を守り、効率よく適正かつ安全に飛行機を動かす仕事
軍用にしろ、民間用の旅客機にしろ、飛行機は毎日のように、無数に、国際線も合わせると24時間365日、世界のどこかで指定の航空路に沿って飛行を続けています。
管制の指示なくして、それらの飛行機が飛び続けることはできません。パイロットの状況把握の範囲には限界があり、また、逐一状況がわからないと、危険が大きく飛行機を飛ばし続けることができないからです。
飛行機は、便利な移動手段として一般化して長い年月が経ち、様々な過去の事例を参考にしながら、航空管制官は航空交通管制を、24時間365日、休みなく行なっています。空の安全を守り、効率よく合理的に飛行機を移動させるのが航空管制官の仕事です。
飛行機の問題ない運航、定時運航を守ることができた時、航空管制官として大きなやりがいを感じることができるでしょう。
非常事態が発生した時、如何に人命を守り、飛行機を安着させるか
万が一非常事態や、管制の指示ミスなどが起きた場合は、速やかに周りの飛行機のパイロット、および関係各機関に状況を共有しなければなりません。定時運航はもちろん、有事の際にいかに人命を守るかも、航空管制官の腕一つにかかっています。
観測衛星、航空衛星などが発達したとはいえ、空の状況は非常に繊細かつ、何がいつ起きるのか予想がつきにくいところがあります。航空管制官は、高度な専門知識を活かし、できる限り早いうちから気候を調査し、運行に支障がないかどうかを判断しなければなりません。これがまた非常に難しいことで、刻一刻と変化する気候、航空状況にいち早く対応、報告を行うのが、航空管制官の責務であり、かつ大きなやりがいでもあります。
今の技術では、非常事態を100%防止できることは到底あり得ません。しかし非常事態が起きてしまった時、できる限り危険を防ぎ、起きなくてもいいトラブルが起きないように努めることも、航空管制官の責任であると同時に、腕の見せ所でもあります。
航空管制官の仕事内容まとめ
管制業務は人命に直結する仕事、効率と安全のバランスを大切に
航空管制官の仕事は、いざ大きなミスが起きた場合、多くの人命が失われる可能性もある、非常に責任重大な仕事です。飛行機は非常に高い高度の空域で、雲の上を飛行するため、どうしても視界確保に限界があります。
そうした中で、パイロットよりもより広い意味で、パイロットの「目」の代わりとなるのが、航空管制官です。目が見えない人を誘導していて事故にあわせてしまっては元も子もないように、航空管制官の仕事は些細なミスも許されません。様々な状況を即座に把握し、慎重にかつ安全を重視した対応を行っていくことが、航空管制官の責務です。
航空管制官の参考情報
平均年収 | 600万円〜700万円 |
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必要資格 |
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資格区分 | 試験合格 |
職業職種 | 運輸・乗り物 |
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