航空管制官の資格・試験とは?航空管制官採用試験の概要と合格の秘訣
航空管制官は国土交通省に属する国家公務員として、国に雇用されます。各地の空港の管制塔などに勤務し航空機の動きを監視。無数の旅客機に対して航空交通管制に係る指示を出すことで、日夜空の安全を守っています。今回は、航空管制官になるための資格やプロセス、採用試験の情報をご紹介します。
航空管制官の資格とは?
航空管制官は国家公務員
日本国における航空管制官とは、国土交通省航空局に所属する国家公務員、あるいは防衛省の各自衛隊に所属する特別職国家公務員で、航空交通管制業務に従事する者を指します。諸待遇については、業務の特殊性から、専門行政職俸給表が適用されます。
ただし航空保安大学校での研修受講中、および修了後正式に航空管制官として任用されるまでの間は行政職(一)俸給表の適用となります。
航空管制官の行う仕事は主に飛行場管制業務、進入・ターミナルレーダー管制業務、航空路管制業務に大別されます。飛行場管制業務は空港の管制塔で、進入・ターミナルレーダー管制業務は空港事務所にて、航空路管制は国内4箇所にある航空交通管制部にて勤務し行うのが一般的となっています。
航空管制官が配置されている空港は全国33空港で、必ずしも全ての空港に配置されているわけではありません。自衛隊や米軍などが管制する軍民共用空港もあれば、地方であっても国土交通省の航空管制官が管制する空港もありますし、航空管制運航情報官が対空援助業務を行う空港もあります。
航空管制官になるための大まかなプロセス
航空管制官になるためのプロセスを大まかにいうと、国家公務員専門職試験である航空管制官採用試験(大卒程度)に合格し、国土交通省の国家公務員としての任用を受けた後、航空保安大学校において航空管制官基礎研修課程に係る諸々の研修を受けます。研修を修了したら、各官署の先任航空管制官付として転任、技能証明取得を経て晴れて正式に航空管制官として任用されます。
国では航空管制官、航空管制運航情報官・航空管制通信官、航空管制技術官の3者を総称して、航空保安職員と呼んでいます。似たような名前ではありますが航空管制官と、航空管制運航情報官・航空管制通信官・航空管制技術官では受ける採用試験が別個となるので注意が必要です。
大前提として、航空管制官は国家公務員です。そのためまずは国家公務員の共通の資格、わかりやすい例でいうと「日本国籍を有する者」などの受験資格を満たす必要があります。またそれ以外に航空管制官独自の受験資格が課され、その受験資格は毎年変わるものとなっていますので(受験できる生年月日の範囲など)、自分が受ける年の採用試験の要項はしっかり目を通さなければなりません。
航空管制官採用試験の難易度・合格率
航空管制官採用試験の概要
先に見てきた通り、航空管制官になるには航空管制官採用試験を受ける必要があります。採用試験には国家公務員共通の基本的な受験資格と、毎年変わる航空管制官採用試験独自の受験資格が課され、それに該当する者は受験ができないシステムになっています。
航空管制官採用試験の受験資格の例として、2019年度の航空管制官採用試験の受験資格を見ていくと、「1989(平成元)年4月2日〜1998(平成10)年4月1日生まれの者」および「1998年(平成10)年4月2日以降生まれの者で、大学・短期大学・高等専門学校を卒業した者及び2020年3月までに卒業する見込みの者、ならびに人事院がこれらの者と同等の資格があると認める者」となっています。
毎年受験資格が変わるのは、この受験できる者の生年月日の範囲が日付単位でしっかり定められているからです。また、国家公務員になるための基本的な条件に見合わない者は受験できない旨もしっかり明記されています。
採用試験は1次試験、2次試験、3次試験に分かれ、1次試験に受からないと2次試験を受けることはできず、3次試験の詳細は2次試験の合格通知書に明記されます。
1次試験は筆記試験となり、基礎能力試験(多肢選択式)、適性試験I部(多肢選択式)、外国語試験(聞き取りおよび多肢選択式)が出題されます。2次試験は人物試験、および外国語の面接試験も課されます。3次試験は適性試験II部、身体検査、身体測定が行われ、航空管制官としての更なる適性を試されます。
1次試験、および3次試験にて課される適性試験では、航空管制官として必要な記憶力、空間認識力について、1次試験は筆記にて、3次試験は航空管制業務シミュレーションにて考査が行われます。3次試験で課される身体検査、身体測定では、航空管制官として最も重要となる、胸部疾患の有無、視力、色覚、聴力などの測定および検査がしっかり行われます。
例えば視力では、「どちらか一眼でも0.7に満たない者」「両眼で1.0に満たない者」「色覚に異常がある者」など細かく規定された視力の基準に満たない場合や、片耳でも所定の周波数領域、デシベル値の範囲に失聴が認められる場合は容赦なく落とされます。
試験の合格率は13〜15%前後を推移しており、かなりの狭き門となっていますが統計では近年では受験者数が減り合格者数が増えている傾向にあるようで、倍率は少しずつ下がってきています。
航空管制官採用試験 試験概要
合格率 | 13〜15%前後 |
---|---|
受験資格 | 年次により異なる |
受験費用 | 無料 |
出題範囲 | 学科試験
■第1次試験
■第2次試験
■第3次試験
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その他の航空管制業務関連資格
航空管制運航情報官・航空管制通信官、航空管制技術官
航空管制官と同じく航空保安職員に属する職業として、航空管制運航情報官・航空管制通信官、航空管制技術官があります。
航空管制運航情報官は飛行機が安全に飛行できるように、飛行に必要な情報を集め提供することが主な仕事です。滑走路、誘導路に異物が落ちていないかを確認し、パイロットから提出される飛行計画の審査、飛行機の駐機場所の調整、花火やロケットの打ち上げが空港周辺にあった場合の調整、滑走路の除雪作業の調整など、運航に支障が出ないように諸処の調整業務も含めて行います。
また航空管制官が配置されない一部空港の管制業務も、航空管制運航情報官が代行する形で担当します。
航空管制通信官はレーダーの届かない範囲の海上などで遠くまで届く無線を使ってパイロットと交信することで、実際の飛行機の位置を航空管制官へ伝達する仕事です。また航空管制官からパイロットへの高度変更などの指示の伝達、また逆にパイロットから航空管制官への要望の伝達を行ったり、乱気流などの気象情報をパイロットに共有したりして、安全な飛行をサポートしています。
これらの仕事は飛行を任されているパイロットと、管制を任されている航空管制官双方にとってなくてはならない手助けとなり、縁の下の力持ち的な役割を果たします。
航空管制官とは別の試験(航空管制運航情報官採用試験)を受験するか、航空保安大学校の学生採用試験を受け、航空情報科に進学し研修を修了したのち所定の資格を取得することによって任用されます。採用試験には所定の無線通信士、無線技術士の資格が必要で、年齢制限は原則26歳までを上限とします。
航空管制技術官は管制施設や航空保安無線施設などの運用、保守、整備を行う技術者です。航空管制技術官も航空保安大学校の学生採用試験を受け航空電子科(研修期間2年)に進学するか、国土交通省航空局が行う採用試験に応募するかのいずれかの方法で所定の研修を受ける資格を得て、研修終了後に航空管制技術官試験を受け、合格する必要があります。
航空管制官の資格を取るための学校
航空管制官は大学・短大・高等専門学校への進学が必須
先述通り、航空管制官は国家公務員であるため所定の学歴が必要となります。航空管制官は航空管制運航情報官や航空管制官とは異なり、航空保安大学校への進学を経てではなく、大卒程度の学歴を持った者を対象として独自の採用試験を突破しなければなりません。
基本的に所定の単位の取得や所定の学科の卒業といった制限はないため、基本的に大学、短期大学、高等専門学校を卒業し国家公務員としての資格に反しなければ、誰でも受験はできます。
国土交通省が管轄する航空保安大学校など専門的な学校があるためか、航空分野を専門にしたコースを設けている学校は少ないのが現状です。しかし法政大学には、理工学部機械工学科に、航空操縦学専修というコースが用意されています。
主に工学部や、外国語学部で、機械系や語学系の技能や知識を磨いておくと、航空管制官になるにあたり大いに役立つでしょう。
航空管制官の資格・試験まとめ
航空管制官になるには学歴が必須。年齢制限にかからなければ修士号取得も視野に
航空管制官は高度な知識と高い適性能力が必要な専門職です。国家公務員であることから人気が高い上に、学歴、年齢制限、身体的な制限、人物試験など多様な適性が求められ、採用されるだけでもとても狭き門となっています。
しかし正式に任用されれば安定した雇用が望めます。また学部卒と修士卒では待遇も大きく変わってくるのも公務員の特徴です。年齢制限に引っかからない範囲で大学院への進学も考えてみてはいかがでしょうか。
航空管制官の参考情報
平均年収 | 600万円〜700万円 |
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必要資格 |
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資格区分 | 試験合格 |
職業職種 | 運輸・乗り物 |
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