ピアニストの資格・試験とは?主に指導者として役立つ資格や習熟度を証明する資格が人気
一言でピアニストといっても、管弦楽と共演での協奏曲演奏やリサイタルで活躍する有名な演奏家から、近所の愛好者向けにピアノ講師をしつつ地域行事や合唱の伴奏で演奏する方など、仕事のスタイルは様々です。この記事では、それぞれの仕事のために取得すれば有利な資格や試験についてご紹介します。
ピアニストの検定は自分の能力を試すためのもの
一般にはあまり知られていませんが、ピアノを学ぶ生徒さんや、将来ピアノを演奏する仕事をしたいという人のための検定があります。
ピアニストになるためには、必ずそれらの試験を受けて合格しなければならないわけではありませんが、自分の演奏能力を確認したり、さらに能力を高めるための目標にしたりして検定を受けるのは、ピアニスト志願者にとって有意義なことでしょう。
また、ピアノの検定にはピアノ講師に特化したものもあります。ピアノ講師のための資格は、高い能力をもつ指導者であることの証明となり、生徒さんを獲得するためのアピール材料としても有効です。
ピアノ演奏のプロとしてのピアニストを目指すためには、検定で採点される基本的な能力よりも、むしろ高い音楽性(表現力や音楽的センス)が求められます。ピアノ演奏をどのように学び、どのようなコンクールや演奏会で実績を残していくかが成功のための鍵となります。
ピアノを学んでいる人が受けられる検定
ピアノを習ったり、独学で練習したりしている人が受けられる検定では、ヤマハやカワイなど、大手のピアノ教室が行っているグレードテストが、その代表的なものでしょう。どちらの検定も「演奏グレード」と「指導グレード」が用意されています。
ヤマハグレード(ヤマハ音楽能力検定制度)は、年齢・学歴・国籍を問わず誰でも受験ができますが、カワイピアノグレードテスト(カワイグレード認定制度)は学習者向けのグレードがカワイ音楽教室の生徒さん、演奏家を目指す人のための演奏グレードは制限なし、指導者を目指す人のためのグレードが18歳以上(音楽教育とリトミックは16歳以上)と受験資格が設定されています。
その他、演奏のみを審査する検定として、日本現代音楽芸術協会が主催する「クラシックピアノ検定」や英国王立音楽検定などがあり、ピアノ学習者の意欲向上に役立っています。
ピアノ講師を目指す人が受けられる資格・試験
ピアノの検定には、ピアノ講師を目指す人が受けられるものもあります。上記のヤマハやカワイのグレードテストにも「指導グレード」があることを紹介しましたが,どちらの資格も知名度が高くて誰でも受けられるので、指導者を目指す人にはお勧めの資格といえるでしょう。
それから、ピアノ指導者及びピアノ指導者を目指す人を対象にした検定として、社団法人全日本ピアノ指導者協会が主催する「ピティナ・ピアノ指導者検定」があります。参加資格は「18歳以上。大学・専門学校等において、ピアノ・教育に関する専門教育を受けた者、または同等の能力を有する者。学籍・国籍不問」となっており、18歳以上で知識と能力に自信があれば、誰でも受験できます。
また、ローランド・ミュージック・スクールで活動するために必要な「ローランド講師資格」もあります。このローランド・ミュージック・スクールは、クラシックピアノ以外にポピュラー・ジャズピアノを指導するコースもあります。
演奏家としてのピアニストを目指すなら学歴とコンクール
ピアニストが出演するコンサートのチラシやプログラムを見ると、プロフィール欄にはその演奏家の学歴やコンクール受賞歴、演奏実績などが書かれています。
プロのオーケストラと協奏曲で共演したり、大きなホールでリサイタルを開いたりする有名なピアニストは、そのほとんどが留学経験を持ち、国際的なピアノコンクールで上位に入賞したり、名だたる指揮者やオーケストラと共演したりした実績を持っています。
学歴やコンクール受賞歴はピアニストに必要な資格というわけではありませんが、演奏のプロとしてたくさんの仕事を受けるためのアピール材料にもなっていきます。
しかし、ピアニストの方々が留学したりコンクールを受けたりするのは、自分をアピールするためではなく、ピアノ演奏と真剣に向き合って自らの音楽性を高めたいという願いからであり、演奏の機会がたくさん欲しいと願うのは、実績を積めば積むほど自分自身の音楽経験が豊かになり、音楽性の向上のためにも有意義だと考えるからなのです。
ピアノ検定や音楽大学受験の難易度とコンクール上位入賞への道
ピアニストにとって持っていると有利な資格は、指導者は検定、プロの演奏家は学歴とコンクールであるとお伝えしました。それでは、検定に合格したり、音大に入学したりする上での難易度はどれくらいなのでしょう。
また、プロとして活躍するために必要なピアノコンクールに入賞するためには、どのような努力が必要なのでしょうか。
音楽検定合格の難易度
グレードテスト
ヤマハやカワイの音楽教室で行われているグレードテストは、学習者グレードと演奏者グレードの段階に分かれています。学習者グレードは、先生が生徒さんのレベルに合わせて受験級を選び、受験に向けてのレッスンをするので、練習した通りふつうに演奏できれば合格します。
一方、演奏グレードは課題の難易度も高く、演奏技術だけでなく音楽性も評価されます。課題曲や自由曲を高いレベルで演奏できるだけではなく、即興演奏などの課題もあり、より高いセンスが求められます。合格するためには、ピアノの演奏技術だけでなく、メンタル面も重要なポイントです。
ピアノ指導者検定
ピアノ指導者検定で最もメジャーなのは、社団法人全日本ピアノ指導者協会が主催する「ピティナ・ピアノ指導者検定」でしょう。この検定は初級・中級・上級の段階があり、試験内容は指導実技・演奏実技・筆記試験・エッセイ(小論文)となっています。
中でも特徴的なのは「指導実技」の試験で、これは初対面のピアノ学習者を実際に指導するという内容のものです。生徒さんの課題を瞬時に見つけ、適切に声をかけるなど、指導の様子を評価されます。演奏実技は、曲の難易度や表現力など演奏家としての力量ではなく、自分の力量に見合った曲を選んでいるか、指導者としてふさわしい演奏になっているか等が評価のポイントです。
この試験はピアノの演奏技術だけでなく、指導力や音楽観など幅広い観点で評価されるため、ピアノ講師をしている会員さんでも合格どころか受験さえも難しいと感じているとのこと。ちなみにこの協会はコンクールにも力を入れているため、生徒さんのコンクールでの成績も指導者としての評価の対象になります。
音楽大学
ピアノに限らず、音楽のプロとして生きていこうとする人は、音楽大学や大学の音楽家を目指します。
現在全国には教育学部等の音楽科も含め、音楽を学べる大学が80校程あります。大学なので入学試験には音楽以外に一般科目の試験もありますが、偏差値は高くても50台と、それほど高い学力は求められていません。
しかし、必ず実技試験があり、演奏者としての力量が評価されます。受験者数が定員に満たない場合でも、大学が求めるレベルの演奏ができる受験生がいなければ、合格者がいないこともあります。
音大入学の難易度を判断する基準は、競争率や合格率ではなく、受験者一人ひとりのレベルがどのように評価されるかだといえるでしょう。
コンクール上位入賞への道
プロのピアニストとして知名度を上げるには、大きな国際コンクールで上位入賞を果たすのが、いちばんの近道です。しかし、近道とは言っても、その道は決して簡単に進める道ではありません。
子どもの頃からチャレンジできる
ピアノコンクールとはいっても、ショパン国際コンクールやチャイコフスキー国際コンクールのような伝統と権威のある国際コンクールだけではありません。ピアノを習っている小さな子どもさんから出場できるアマチュア向けのコンクールや、プロ・アマを問わず出場できて子ども部門も用意されている国際コンクールもあります。
現在プロのピアニストとして活躍している方々は、子どもの頃からこのようなコンクールに出場して優勝した経験を持っています。プロのピアニストは、当然のことながらコンサートホールの大きなステージで、たくさんの聴衆に向けて演奏する仕事です。そのためには、プレッシャーに負けず、人前でも自分の力を発揮できるだけのメンタルも必要です。
子どものころからたくさんのコンクールに出場するという経験は、演奏技術の向上だけでなく、メンタル面を育てるためにも良い方法だといえるでしょう。
予選を勝ち抜いてファイナリストへ
コンクールのスケジュールは、どのような人を対象としたものであっても、大体同じような流れで進行していきます。
全ての参加者が、最初に予選で演奏します。参加者が全国各地から集まる国内の大きなコンクールは、各地域での1次予選が行われます。そしてその予選を通過した人が本選会場での2次予選に行き、そこを通過した人が最終選考対象者(ファイナリスト)として本選での演奏の機会を得ることができます。
大きな国際コンクールでは、1次予選が世界各地で行われる場合や、1次予選の代わりに演奏DVDによる予備審査が行われ、通過した人が予選の出場権を得るというケースもあります。
コンクールで上位入賞を果たすには、数多くの出場者の中から予選を勝ち抜き、ファイナリストとして、本選で素晴らしい演奏ができなければなりません。限りなく険しい道だといえるでしょう。
その他の音楽関連の資格
ピアニストのための資格というわけではありませんが、音楽の知識やある程度の能力があることを証明するための検定や資格もあります。
クラシックソムリエ検定
クラシックソムリエ検定とは、一般財団法人日本クラシックソムリエ協会が主催する検定です。クラシック音楽の愛好者が、その魅力を存分に味わいながら、自ら愛する音楽を選び、その素晴らしさを誰かと分かち合うことができるように知識を身につける、そのステップアップの為の指針となるのがクラシックソムリエ検定です。
この検定には、エントリークラス、シルバークラス、ゴールドクラス、プラチナクラスの4つのグレードがあります。受験資格は、エントリークラスは誰でも受験できますが、それ以上のグレードは、下のグレードを受験した経験が必要です。
また、2つのグレードを同時に受験することができますが、上のグレードが受かったとしても、下のグレードが不合格であれば合格の認定はされません。
音楽検定
音楽検定とは、公益財団法人音楽文化創造が主催する検定です。
平成6年に制定された「音楽文化の振興のための学習環境の整備等に関する法律(音楽振興法)」の理念を広く普及するために、同法人が主催する公益事業として,平成13年にスタートしました。現在は休止中ですが、実施されていた平成23年までの間に全国で6万人が受検したという実績があります。
演奏等の実績がなくても、音楽に関する幅広い知識を持っていることが証明できる検定です。現在再開に向けて準備中です。
生涯学習音楽指導員
音楽検定を主催している公益財団法人音楽文化創造が「音楽振興法」の基で推進している、生涯学習指導員制度に基づく資格です。
生涯学習指導員は、学校教育、市民や市民団体、地域組織に向けて音楽活動の支援や指導を行うという役わりを担っています。この資格にはA級、B級、C級があります。
地域音楽コーディネーター
地域音楽コーディネーターは、世代を超えて地域の人々に音楽の素晴らしさ、楽しさを経験できる機会を創り出し、地域において音楽を用いた文化振興を推進するために、音楽家や地域住民、さらに諸機関などとの連携を推進する役目を担う音楽推進事業のプロフェッショナルです。
ピアニストに関連する資格が取れる学びの場
検定合格のためには主催している教室や協会会員の先生に習う
ピアノの検定には、ヤマハやカワイ等、大手の教室が主催しているものや、ピティナのように指導者の協会が主催しているものがあります。
ヤマハやカワイのグレードテストの合格を狙うためには、やはりその教室で教えている先生にレッスンを受けるのがベストでしょう。先生の中には検定の試験官としての経験も豊富な方もいるので、効果的な練習のしかたや受験の心構えなどもアドバイスしてもらえます。また、検定が近づくと、その検定のためのレッスンをしてもらうことも可能です。
「ピティナ・ピアノ指導者検定」もピアノ指導者を志す人ならだれでも受けられる検定ですが、やはり主催しているピアノ指導者協会の会員の先生に習うのが良いと思います。検定や講習会などの情報も得る上でも有効です。
プロとしてアピールするなら音大や専門学校
学校でピアノを専門に学ばなくても、ピアノの先生にレッスンを受け、検定などで資格を取れば演奏能力や指導力を証明することはできますが、やはり音楽の専門家として信頼を得るには、音楽大学や音楽の専門学校で学び、卒業資格を取るのが一番でしょう。
ピアノの指導がメインの仕事であっても、地域の小さなコンサートに出演したり、たまにはピアニストとしてリサイタルを開いたりする際にも、大学の音楽科や音大を卒業している方が、演奏のプロとして受け入れられやすいのは否めません。
専門学校はどちらかというと指導者の育成がメインのところが多いのですが、中には演奏者を育てる課程を持っているところもあります。音楽の専門教育を高等教育機関で学んだ経歴は、やはりアピールの大きさが違います。
国際コンクールを狙うなら海外留学?
プロのピアニストとして、国際コンクール上位入賞の実績を作るためには、やはり海外留学をするのが最も良い方法でしょう。演奏能力を高めるためにはもちろん、自分が演奏したい曲の作曲家が実際に活躍していた場所で、その時代の文化を継承するために指導している先生方から直接学ぶことができるのが、海外留学の大きな魅力です。
ヨーロッパなどの有名な音楽大学で学ぶのは狭き門と思われがちですが、実は世界中から数多くの留学生を安い学費で受け入れています。留学生はアルバイトで生活費を稼ぎながら、現地の一流の先生から直接指導を受けることも可能です。音楽を学ぶ留学生は、子どもに教えたり教会の礼拝で演奏したりするなど、音楽関係のアルバイトをすることもできます。
クラシック音楽発祥の地であるヨーロッパでは、自分の国の文化を学ぶためにやってきて、それを世界中に広めてくれる留学生というのは、とても大切な存在なのでしょう。留学経験者は、とても充実した良い学びができたと皆さんが語っています。
最近は日本国内の音楽大学のレベルも上がってきており、クラシック音楽を学ぶためにアジア各国から日本に留学する学生さんも増えてきました。また、留学経験のない演奏家の方々が国内で開かれる国際コンクール等のメジャーなコンクールで入賞し、プロとしての道をしっかりと歩んでいるというケースも増えてきています。
まずは国内で活躍してからいつか世界に出ていこうとするピアニストであれば、海外留学の経験は必須というわけではありません。留学の方法には、短期のセミナーを受講しに行ったり、文化庁等から派遣されて視察研修に行ってレッスンを受講したり演奏したりするというものもあります。
また、わざわざ留学しなくても、たくさんの有名な海外のピアニストや指導者が日本を訪れるので、コンサートで生の演奏を聴いたり、公開レッスンなどを受講して指導を受けたりする機会もたくさんあります。
このように、海外に居を移さなくても本物の音楽を学ぶ方法はいろいろあります。欧米に比べるとまだまだかもしれませんが、日本国内で生活しながら演奏活動を行っていても、優れた演奏家になるための学びの環境が整ってきています。
ピアニストの資格まとめ
ピアニストとして目指したいスタイルを明確にして資格やコンクールにチャレンジ
ピアニストの仕事には、演奏をメインとするスタイルと指導をメインとするスタイルがあります。
どのようなピアニストになりたいかを明確にして、資格を取得するのか、コンクール出場経験を増やすのか、どこの学校で学ぶのかなど、自分の方向性を明確にしてレッスンに励むなら、必ず道は開かれます。憧れのピアニストの辿ってきた歩みを参考にして進路を決めるのも良いかもしれません。
ピアニストの参考情報
平均年収 | 200万円~300万円 |
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必要資格 | 必要資格なし |
資格区分 | - |
職業職種 | 音楽・ラジオ |
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