医療秘書の資格・試験とは?役立つ資格の特徴や試験の難易度、合格率などを解説

医療秘書の資格・試験とは?役立つ資格の特徴や試験の難易度、合格率などを解説

医師や看護師と違い、医療秘書になるために合格しなければいけないという国家試験はありません。しかし統一された基準がない分多くの民間資格が乱立しています。その中でもどの資格が有利なのでしょうか? この記事では医療秘書の資格の中でもメジャーなものをご紹介します。

医療秘書の資格とは?

医療秘書に必要な国家資格や免許はない

医師や看護師と違い、医療秘書に就くためにはこの資格をとっていないといけないというような条件はありません。

医療サービスに関わる仕事と言ってもあくまで事務の仕事なので、一般的な事務職や秘書職と同じようなものと考えて良いでしょう。4年制大学を卒業していなければいけないということもなく、学歴や資格的な意味ではハードルの低い職業と言えます。

しかし、医療秘書は医療に関する専門的な知識や経験が必要な職業でもあります。主な仕事の1つであるレセプト業務は診療報酬点数表を用いて診療報酬明細書を作成して提出する仕事で診察についての知識や経験が必要になります。

そのため、医療秘書としての知識や技能を認定する民間資格は数多くあります。医療秘書として仕事をしている人の多くはこれらの資格を取得しています。その中でも特に有名な資格を紹介します。

医療秘書の資格の難易度・合格率

医療秘書教育全国協議会による「医療秘書技能検定」

医療秘書技能検定を主催する医療秘書教育全国協議会は全国の専門学校や各種学校などが加盟している協議会で、医療秘書の質の向上のために設立されました。

医療秘書技能検定は3級、2級、準1級、1級と分けられており、医療事務としての専門知識と技能を認定するものです。準1級以上に合格することで医師事務作業補助技能認定の1つの条件を満たすことができます。

受験料が一番高い1級でも5,100円(日本医療秘書学会会員だと3,570円)、3級だと2,800円と安めなのも受験者にとってはありがたいところです。

医療秘書技能検定の難易度と合格率

等級 難易度 合格率
1級 医療秘書として、それぞれの領域について高度な知識と技能をもち、複雑多岐な業務を専門的に遂行することができる。 10%前後
準1級 医療秘書として、それぞれの領域について専門的な知識と技能をもち、やや複雑多岐な業務を遂行することができる。 20%前後
2級 医療秘書として、 それぞれの領域について一般的な知識と技能をもち、やや複雑 な業務を遂行することができる。 45%前後
3級 医療秘書として、 それぞれの領域について基礎的知識と技能をもち、一般的な業務を遂行することができる。 70%前後

試験科目は領域Ⅰ、Ⅱ、Ⅲにわかれており、領域Ⅰは医療秘書実務と医療機関の組織・運営、医療関連法規、領域Ⅱは医学的基礎知識と医療関連知識、領域Ⅲは医療事務です。それぞれ100点ずつで、合計点が180点以上かつ、それぞれの領域の正解が60%以上で合格になります。

年2回試験は開催され、受験資格はとくになくいきなり2級から試験をうけることも可能ですが、一般的には3級から順番にステップアップするのが普通なようです。

試験科目は全て同じですが等級が上がれば上がるほど難しく専門的なところから出題されます。例えば領域Ⅰの医療秘書実務ですが、3級試験だと

  • 医療秘書の初歩的な業務を、指示通り確実に実行することができる。
  • 医療従事者の守秘義務の重要性について、理解している。
  • 医療秘書の、職務と役割を理解し、マナー・接遇の基本を心得ている。
  • 医療機関における受付業務に関する知識と技能を持ち、基本的な応対ができる。

となっていますが、1級試験だと

  • 医療秘書の高度な専門的技能を持って、複雑な業務を総合的に判断、遂行、行動する能力がある。
  • 医療機関における医療秘書の職務と役割を熟知しており、細部にわたり上司の補佐ができる。
  • 十分な情報処理能力・知識のもとで文書作成ができ、特に各種届書、報告書、申請書の作成について専門的レベルの知識がある。
  • 医療関連業務で、不測の事態に対しても正しい応対ができ、業務全般の必要な改善及び連絡調整を図ることができる。
  • 医療従事者として高度な倫理判断ができる。

となっています。

医療秘書教育全国協議会による「医事コンピュータ技能検定試験」

医事コンピュータ技能検定試験は医療事務で必要なコンピュータの知識とオペレーション技能を認定する検定試験で1991年から実施されています。

医事コンピュータを用いたレセプトの作成業務は医療事務に携わる者には必須の能力なのでこうした専門試験が生まれました。検定試験は現在準1級、2級、3級が実施されています。

医事コンピュータ技能検定試験の難易度と合格率

等級 難易度 合格率
準1級 医療事務及び医事コンピュータに関する専門的な知識を有し、やや複雑多岐な業務を遂行することができる。併せてDPC制度全般についての正しい理解と深い知識を有し、やや複雑なカルテより、専用ソフトを用いて、DPCレセプトが作成できる。 19%前後
2級 医療事務及び医事コンピュータについての一般的な知識を有し、カルテ及び診療伝票を基に医事コンピュータを用いて正しいレセプトを速やかに作成することができる。 55%前後
3級 医療事務及び医事コンピュータについての基礎的な知識を有し、カルテ及び診療伝票を基に医事コンピュータを用いて正しいレセプトを作成することができる 74%前後

試験科目は全級に共通して領域Ⅰ:医療事務、領域Ⅱ:コンピュータ関連知識、領域Ⅲ:実技(オペレーション)の3つです。等級が上がるほど専門的な知識を要求されます。それぞれ60点で合計180点満点のテストで、全ての科目に60%以上正解していると合格になります。

日本医師会による「日本医師会認定医療秘書」

日本医師会による医療秘書の認定制度です。1983年から実施されていて現在1万人以上の認定者がいます。専門的な医療事務の知識と最新の情報処理技術を兼ね備えていることを認定するもので日本医師会が認定した養成機関でカリキュラムを修了しないと試験を受けられません。

日本医師会が認定した養成機関は宮城県、群馬県、富山県、福井県、山梨県、静岡県、愛知県、滋賀県、岡山県、広島県、香川県、福岡県、宮崎県にあります。

日本医師会認定医療秘書の難易度と合格率

合格率は毎年90%以上です。一見受かりやすそうな試験に見えますが認定養成機関に1年間通学して(通信制講座の場合は2年間)カリキュラムを修了しなくては試験をうけることができないという中々ハードルの高い試験です。

試験科目は以下のようになっています。

試験科目 出題範囲
医療・保険・福祉基礎教科
  • 健康とは、疾病とは
  • 患者論と医の倫理
  • からだの構造と機能
  • 臨床検査と薬の知識
  • 医療に関わる用語
  • コミュニケーション論
医療秘書専門教科
  • 医療秘書概論
  • 医療秘書実務
  • 医療情報処理学
  • 医療関係法規概論
  • 医療保険実務

医療福祉情報実務能力協会による「医療秘書情報実務能力検定試験」

医療福祉情報実務能力協会が実施している試験で合格すると「医療秘書管理実務士」の称号が与えられます。医療秘書の専門家であることを認定し、医局秘書や医師専属秘書、病棟クラーク業務などが総合的に判断されます。

2018年から一般受験の受付が終了になり、協会指定校による団体受験のみの受付になりました。試験は2級と1級に分かれており、2級は年4回、1級は年3回実施されます。

医療秘書情報実務能力検定試験の難易度と合格率

合格率は2級は約60%、1級は約58%と難易度の低めな試験です。試験科目は以下のようになっています。

試験科目 出題範囲
学科(20問)
  • 医療秘書実務
  • 医療機関の組織、運営、医療関連法規、医療保険制度
  • 医学の知識
  • 医療事務
明細書作成(2問)
  • 診療報酬明細書作成(外来)
  • 診療報酬明細書作成(入院)

その他の医療秘書に関連する資格

医療事務技能審査試験

医療事務の知識や技能を認定する試験で、合格するとメディカルクラークと名乗ることができます。医療事務関連の資格の中でも受験者数が多くメジャーな資格です。

診療報酬明細書(レセプト)作成能力と患者応対能力など医療事務に必要な能力を全般的に測る試験です。医療秘書としての実務経験があるか認定されたガイドラインに沿った教育を受けていないと受験できません。

診療報酬請求事務能力認定試験

公益財団法人日本医療保険事務協会が実施している厚生労働省後援の検定試験で、診療報酬明細書(レセプト)の作成技能を審査する試験です。合格率30%前後と医療事務関連の中では最も難易度が高い部類の試験であり、医療事務関連で一番評価の高い資格でもあります。

医療秘書の資格・試験まとめ

国家資格はないが民間資格は多数。医療事務の資格と合わせて取得を目指そう

医療秘書には国家資格はありませんが、基準となる国家に認定された試験がない分多くの民間資格が乱立しています。その中でも有名な資格は「医療秘書技能検定」や「日本医師会認定医療秘書」、「医療秘書情報実務能力検定試験」など。

また、医療事務系の資格の中で最も評価の高い資格は「診療報酬請求事務能力認定試験」であり、この試験に合格していると評価が高くなります。

医療秘書の参考情報

平均年収250万円~360万円
必要資格
  • 診療報酬請求事務能力認定試験
資格区分 公的資格
職業職種医療

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