歌舞伎役者になるには?求められることや向いている人の特徴などを具体的に解説
歌舞伎は日本の伝統文化の1つで、一般的に世襲制で閉鎖的なイメージを持たれていることも多いです。しかし、歌舞伎役者の家系でなくても歌舞伎役者になる方法があります。では、歌舞伎役者になるためにはどのような方法があるのでしょうか。本記事では、歌舞伎役者になるために求められること、向いている人の特徴などについてご紹介します。
歌舞伎役者になるには何が必要?
歌舞伎役者になるためには主に3つのルートがあると言われている
歌舞伎役者になるためには主に3つのルートがあると言われています。
歌舞伎役者の家系に生まれること
1つ目は歌舞伎役者の家系に生まれることです。歌舞伎は400年前から行われている、歴史ある文化です。世襲制が基本で、実子が名跡(みょうせき)を受け継ぐことが多いです。
実子以外には、兄弟に受け継がれたり、血縁関係のない養子や弟子が継いだりすることがあります。幼いころから歌舞伎役者に必要な稽古を受けることができ、舞台に出演する子役も多いことから、最も有利なルートです。
師匠に弟子入りする形で歌舞伎の世界に入ること
2つ目は師匠に弟子入りする形で歌舞伎の世界に入ることです。特に子どもの場合、劇団で活躍している子役が歌舞伎の舞台に出演することがあります。
そこで、歌舞伎役者の目に留まれば、「部屋子」という形で目をかけてもらえ、本格的に稽古をすることになるでしょう。この方法も、歌舞伎役者とのパイプや関係者との口利きがないと難しいです。
る歌舞伎役者の養成所で研修生になること
最も一般的な方法は3つ目の研修生になることです。「日本芸術文化振興会」が運営している歌舞伎役者の養成所は、1970年(昭和45年)から開始されています。はっきりとした合格率はわかりませんが、養成所に入るのも容易ではないと考えられます。面接や作文、技能試験が行われます。
研修が始まり、歌舞伎の実技などを8か月間学んだあと適性審査が実施されます。不合格となった場合、研修生の身分を失います。審査に合格すれば研修終了後は歌舞伎俳優に入門して舞台に出演することになります。「伝統歌舞伎保存会」が入門先を斡旋してくれるうえ、適性審査合格者は研修期間中、奨励金を受けられる資格が与えられます。
現在では歌舞伎役者の人材不足などが問題となっており、養成所の募集も、以前は3年に1回だったのが2年に1回に頻度を増やすなど対応を行っています。しかし、実際に看板を背負うほどの歌舞伎役者のほとんどは世襲から歌舞伎役者を志した人であるのが現実です。
閉鎖的ともいえる伝統的な歌舞伎役者の世界で、外部の人間が目指せるルートが確保されているのも事実です。伝統的な日本文化を継承していくために今後も養成所出身の歌舞伎役者の活躍が期待できそうです。
女性の歌舞伎役者について
歌舞伎の長い伝統の中で、女性の歌舞伎役者が全くいないわけではないようですが、現在の制度では女性は歌舞伎役者になれないと思ってよいでしょう。
歌舞伎に必要不可欠な演奏をする人もすべて男性です。ただし例外として、子役の間は女の子を起用することができます。
歌舞伎「子役」になるには?子役専門のスクール「寺子屋」がある
歌舞伎子役を目指すのであれば、いくつか条件があります。役によって求められる要素は異なりますが、身長の目安は100~135cmの役が大半です。
また、独特の発声や行儀作法、日本舞踊に基づいた動作を要求されます。歌舞伎子役指導講師による集中的な稽古を経て舞台に立つことになりますが、基礎や素質がないとこなすのは難しいでしょう。
子役専門の児童劇団などを通して、歌舞伎子役のオーディションやスカウトがあります。その他、日本舞踊を習っていて見込みがある子どもに歌舞伎子役のお誘いがあるケースもあるようです。
子どものころから歌舞伎に触れ、歌舞伎子役を目指すのであれば「寺子屋」に通わせる方法もあります。歌舞伎の興行を手掛ける「松竹株式会社」が運営するこども歌舞伎スクール「寺子屋」は、東京都にある「歌舞伎座」で開かれています。今まで、児童劇団の子役や部屋子にしか開かれていなかった歌舞伎子役の門戸をさらに広げる形になりました。
もちろん、歌舞伎子役を目指すだけでなく、伝統的な和の文化に触れられます。浴衣の着付けや日本舞踊の基礎など子どもの頃から学ぶことができます。
歌舞伎役者に向いている人、適性がある人
日々の練習と公演に耐えうる精神力と体力は必要!看板級はかなり多忙
歌舞伎役者が表舞台に立つ姿は華やかで、役者たちが日々積み重ねる努力や苦労はなかなか見えづらいです。歌舞伎の1公演は25日ほどが通常です。
初日から千秋楽まで休みは基本的に1日もありません。もし体調を崩して舞台に穴をあけてしまえば、来てくれるお客さんや舞台を作り上げる演者たちに迷惑が掛かります。
歌舞伎だけでなくテレビやメディアに多く出演している有名な歌舞伎役者もいます。公演中は時間の合間を縫ってメディア出演や取材に答えていることが多いです。特に、看板となる売れっ子の歌舞伎役者であればなおさら忙しいでしょう。
忙しくても稽古や次回の公演に向けた準備を行う必要があります。日本舞踊など、踊りの弟子をとっている人も少なく、弟子に稽古をつける時間も確保する必要もあります。
歌舞伎役者に向いているのは忙しいスケジュールと稽古に耐えられる体力と精神力を持った人であると言えるでしょう。
日本の伝統的な文化に理解があり、歌舞伎を後世に伝えていきたいと思っている人
日本の伝統的な文化を深く理解し、追求し、後世に伝えていきたいと思っている人でなければ、歌舞伎役者になるのは難しいでしょう。
歌舞伎の演目は歴史的な背景を持つ武士の世界を描いたものや、江戸時代の町人の世界を描いたものがあります。日本の伝統的な考え方や、昔の風習・習わしなどに興味がなければ役を演じるのは難しいです。
その一方で、歌舞伎という伝統を敬いながら、新しいことにチャレンジする風潮も高まっています。例えば「スーパー歌舞伎」です。日本の大人気少年漫画を演目にしたことから話題になり、ニュースでも取り上げられました。
歌舞伎の踊りや立ち回りなど、古典的な演出を取り入れながら、従来の歌舞伎にとらわれず題材を選び、脚本を作ったものです。日本の伝統的な、素晴らしい芸術文化である歌舞伎を現代も親しむきっかけとなれば、時代とともに形は変化しながら、後世へ歌舞伎を伝えていけるきっかけにもなるでしょう。
歌舞伎役者になるための学校・教室
日本芸術文化振興会 歌舞伎役者養成の研修生になる!養成所出身の役者も多い
1970年(昭和45年)から始まった「日本芸術文化振興会」が行っている歌舞伎役者を養成するための研修生募集です。
歌舞伎役者の研究生募集とともに、音楽や歌舞伎以外の伝統芸能の研修生を募集しています。歌舞伎で使われる音楽演奏をする研修生の募集も定期的に行われています。
- 歌舞伎俳優
- 歌舞伎音楽(竹本)
- 歌舞伎音楽(鳴物)
- 歌舞伎音楽(長唄)
- 大衆芸能(寄席囃子)
- 能楽三役
- 文楽の技芸員
歌舞伎役者の研修生になるためには、作文や面接などを受け、合格する必要があります。その後、8か月に及ぶ研修を受けます。
平日10時~18時の全日、8か月に及び歌舞伎実技や衣装・化粧のことまで、実践的な内容を広く学びます。8か月の研修後は適性検査がおこなわれ合否が確定します。
応募条件は中学校卒業以上の男子で、原則23歳以下という厳しい年齢制限もあります。長期間に及ぶ全日の研修もあることから生半可な気持ちで受けられる試験ではありません。
養成所が始まって以来、96名の研修修了者が歌舞伎役者として活躍しています。これは就業者全体の約3割に当たる数字です。
松竹株式会社 歌舞伎アカデミー 「子ども歌舞伎スクール寺子屋」で子役を目指す
寺子屋は主に小学生までの子どもを対象としたスクールです。歌舞伎の実技的な内容だけでなく、1年間で歌舞伎を通して和の文化を学ぶことを目的としています。
- 梅(基礎コース)
- 竹(発展コース)
- 松(前進コース)
1年間かけて1つのコースを修了することで次のコースへ進めます。基礎コースである「梅」は1年間のカリキュラムで4歳から小学4年生までの子どもが受講可能です。
「松 前進コース」になると、本格的に舞台出演を目指す子ども向けのコースです。歌舞伎子役の演技だけでなく、伴奏の竹本や鳴物に関して知識を深めたり、実際に稽古をしたりするカリキュラムが組まれています。小学校卒業まで寺子屋に在校可能です。
歌舞伎役者になるには?まとめ
一般人でも目指せる!養成所や子役のためのスクールがある
歌舞伎役者になるためには、いくつかルートがあります。一般人でも歌舞伎役者を目指すことは可能です。
「日本芸術文化振興会」が行っている養成所の研修生になり、試験に合格するのが最も身近な方法と言えるでしょう。しかし、23歳以下の男子で、研修期間も2年を要することから、道のりは厳しいです。
その他、子どもが演じる歌舞伎子役を目指すのであれば、歌舞伎界とパイプがある児童劇団に入ったり、松竹株式会社が運営している「寺子屋」でレッスンを受けたりする方法があります。
歌舞伎役者の参考情報
平均年収 | 400万円~1000万円 |
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必要資格 | 必要資格なし |
資格区分 | - |
職業職種 | 芸能 |
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