イラストレーターの資格・試験とは?取得しておくと役立つ資格の特徴などを解説
イラストレーターの仕事を始めるに際しては、特に免許や資格の取得は不要です。しかし、イラストレーターとして激しい競争を勝ち抜くには、資格取得によるスキルの可視化も大切になります。才能と技能が求められるイラストレーターに関する資格はどういったものがあるのでしょうか。本記事では、イラストレーターに役立つ資格など、資格試験についてご紹介します。
イラストレーターに必要な資格とは?
イラストレーターを始めるにあたって必須となる資格や試験は存在しない
イラストレーターは、広告のイラストや書籍の挿絵、販促物やグッズ用のイラストなど、主にイラストを描くことがメインの職業です。
キャラクターデザイナーのようにキャラクターそのものをオリジナルで創る職業ではなく、既に別のデザイナーが創出した版権があるキャラクターのイラストを担当することが多い仕事となっています。本の挿絵やオリジナルポスターなどに絵を提供する場合は、イラストそのものがオリジナルとなる場合もあります。
こうしたイラストレーターの仕事を行うにあたって、特別な資格や免許は必要ではありません。国家資格も存在せず、資格を取得する義務もありませんし、実力さえあれば資格は考慮されません、ある程度イラストが描ければ、誰でもイラストレーターになることができます。
会社員イラストレーターとして就職するなら資格が有利になることも
基本的に会社員イラストレーターとして企業に就職する際のプロセスとして、高校なり大学なり高等教育を行う学校を卒業したのち、出版社、広告制作会社、商品メーカー、アニメ制作会社、ゲーム会社、デザイン事務所、遊技機メーカーなどの採用試験や面接を受けて、就職するというのが代表的です。
企業が募集する求人には、必ずしもイラストレーターがメインとして押し出されているものは決して多くはありません。イラストレーターの果たす役割は、原画家やグラフィッカー、グラフィックデザイナーなど、他の分野のクリエイターが兼任することも少なくない世界であることが要因としてあげられます。
特にグラフィックデザイナー、CGデザイナーとして採用される場合が比較的多く、デジタルソフトで絵が描けるイラストレーター志望者がそうした求人に応募して、グラフィック制作を担当する部署に入り、パソコンを使ってイラストを描くというのは少なからずありうることです。
そうした際にグラフィック系の資格、デザイン系の資格、色彩に関する資格などがあれば、採用において少なからず有利になる可能性はあります。しかし基本、イラストレーターは完全なる実力主義。そんな世界で、資格を得るとしたらどういったものがあるのでしょうか。
イラストレーターに役立つ資格・試験
グラフィックソフトウェアのスキルがあれば就職に有利
イラストレーターは究極を言えばビジュアルイメージとして優秀なものが生み出せればなんでもありな職業です。そのため、自分が描いたオリジナルの絵をポートフォリオという形で冊子やデータに纏め、企業担当者に見せることである程度のスキルを示す事が可能な世界です。
しかしながら時代は刻一刻と移り変わり、今や企業におけるビジュアルイメージ制作はPC上のグラフィックソフトウェアを用いて行うことが一般的となってきています。納品・入稿もデジタル環境で行うことが殆どで、クラウドベースで管理するドローイングソフトウェアなど時代に沿った新しい機能が次々とリリースされています。
合理的、効率的に仕事をこなしていくには、こうした時代の変化に常に対応していかなければならないので、いくらイラストが上手かったとしても、PCやグラフィックソフトウェアが扱えないと、就職には不利になってしまう可能性があります。
Adobe社のグラフィック制作ツールに関する資格
現代においてイラストレーターが企業においてイラスト制作を行う場合、ほぼ必ずといっていいほど、コンピュータにインストールされたグラフィック制作ソフトウェア(ドローイングソフトウェアとも呼ばれる)のスキルが求められます。また、殆どの場合、クリエイティブ職に共通して必要なグラフィック制作ソフトウェアはAdobe社のソフトです。
Adobe社がリリースしているグラフィック制作ソフトウェアとして代表的なのが、PhotoshopやIllustratorです。現在はパッケージ式ではなくクラウドベースで動く月額制のソフトウェアとなっていて、月額数千円払えば誰でも使うことが可能となっています。
Adobe社のグラフィック制作ソフトウェアに関する資格では、「Photoshop(R)クリエイター能力認定試験」「Illustrator(R)クリエイター能力認定試験」などが代表的な例として挙げられます。
Adobe社の「クリエイター能力認定試験」の概要・難易度・合格率
「Photoshop(R)クリエイター能力認定試験」「Illustrator(R)クリエイター能力認定試験」は、サーティファイソフトウェア活用能力認定委員会(株式会社サーティファイが主催する組織委員会)が認定を行う資格検定です。認定試験の受験資格は特になく、誰でも受けることができます。
これらのクリエイター能力認定試験は、等級が2段階あり、各ソフトの基本的かつ簡単な使い方や知識を問う「スタンダード」と、より専門性の高い応用技術や知識を問う「エキスパート」に別れています。
「スタンダード」は、提示された作業指示書に合致するように、基本操作を駆使して画像ファイルを作成する実技試験と、問題文の指示に従って編集を行う実践試験に別れます。
「エキスパート」はより発展的な資格で、ソフトウェアの操作方法のみならずDTP、Webデザイン等の総合的知識を問う筆記試験(多肢選択式)と、作業指示書を元に画像データを制作する実技・実践問題に別れ、クライアントの需要に応える創造的かつクオリティの高いコンテンツを制作できる能力が求められます。
「スタンダード」は、実技問題において65%以上、かつ実践問題において70%以上の得点が合格基準となり、「エキスパート」は知識・実技問題を総合して65%以上、かつ実践問題において70%以上の得点が合格基準となっています。
平成28年度末の能力認定試験において、「スタンダード」の合格率は72%、「エキスパート」の合格率は68.9%で、しっかりと操作に慣れていて、ちゃんと勉強をしていれば合格は比較的容易な試験であると考えられます。
その他、イラストレーターに役立つ可能性が高い資格
「色彩検定」や「カラーコーディネート検定」と言った色に関する資格も
イラストレーターは、原画家やデザイナーとは異なり、イラストそのものを線画から彩色まで一貫して対応することが多い仕事ですので、色彩に関する感性や知識は絶対に必要になってきます。
色に関する資格試験としては、「色彩検定」や「カラーコーディネーター検定」などが挙げられます。
色彩検定
「色彩検定」は文部科学省後援の公的資格として1990年に認定がスタートしました。色彩検定は色そのものの理論や知識を問う試験であり、配色技法や色によって変わる利用の仕方など、色を用いた制作の基礎となる土台としての知識や感性を磨くことで合格できます。
等級は4つあり、UC級の合格率は92%、3級の合格率は74.9%、2級は67.4%、1級は42.9%となっていて、級が上がるごとに難しくなって行きます。特に1級は途端に合格率が5割を切るので、しっかり勉強して挑む必要があります。
カラーコーディネーター検定
「カラーコーディネーター検定」は東京商工会議所が認定する資格で、化粧品や照明、ファッション、環境デザインや工業的な分野に至るまで、より実践的な色彩利用のための知識を認定する資格となっています。
カラーコーディネーター検定の特徴としては、非常に合格率が低く専門性が高い資格というところで、等級の別れ方も色彩検定とは異なります。例えば3級の合格率は60%、2級の合格率は31.3%と、2級の時点で相当合格率が落ちていることがわかります。
1級は「ファッション」「商品」「環境」とそれぞれ分野が別れた1級が別々に設けられていて、「ファッション」1級は27.4%、「商品」1級が34%、「環境」1級が13.3%となっていて、特に環境色彩に関する等級が際立って合格率が低くなっています。
カラーコーディネーター検定に認定された人の中で、カラーコーディネーターそのものを職業にする人は少なく、サービス業、販売業、商品管理、環境デザイン、工業デザインなど、それぞれの色を用いる仕事に際してカラーコーディネーター検定で培った知識を活かす場合が多いようです。勿論イラストレーターもその中の一つです。
イラストレーターに役立つ資格やスキルを学べる学校
時代に即した実践指導なら専門学校、みっちりと絵を学ぶなら美大
イラストレーターには資格や学歴は問われません。必要なものはただ一つで、需要に応えるセンスとスキルです。それさえあれば、一切学校に通うことなくキャリアをスタートさせてもいいと言っていいでしょう。
とはいえ、センスやスキルを磨くためには、ある程度の表現のセオリーや客観的な視点や基準をしっかりと把握しておくことが必要になってきます。学校に通う一番のメリットは、様々な生徒や講師の作品を見ることによって等身大の作品制作水準を学ぶことができることです。
もし高校卒業時点で絵に関するスキルが不安であれば、基本的なところから絵をじっくり学ぶことを考えてもいいかもしれません。そうした場合に適しているのは美術大学、芸術大学です。そうした大学では、様々な授業を履修できるので総合的かつ多様な表現手段を学ぶことが可能です。
しかし美術大学、芸術大学は入試の時点である程度の絵のスキルが問われますので、不安であれば教育学部の美術専攻など絵のスキルがあまり高く求められない学科を目指すといいでしょう。学科によっては小論文とデッサンのみで入れるところもあります。
より目指す分野がはっきりしている場合には、よりカリキュラムが細分化され、時代の流れに即した実践的な指導を受けたいならアート系・デザイン系の専門学校が一番です。専門学校のメリットは非常に密度が濃くフィードバックが頻繁に行われるところ、現役のプロが講師を務めていることが多いのでより真に迫った指導が受けられるところです。
他にも、アート系の私塾やイラストレーションスクールなどもあります。こちらはイラストレーターを目指したい社会人や、大学や専門学校を出た後にさらに技術に磨きをかけたい人など、働きながら学びたい人に向いています。
イラストレーターの資格・試験まとめ
とにかく実力主義の世界!PCを使った制作スキルを磨きましょう
現代のイラストレーターは、すべて手描きで製作する人は主流ではありません。今では殆どのイラストレーター、グラフィックデザイナーなどのクリエイティブ職の人は、DTPと呼ばれるPCを用いたデジタル環境での制作が殆どです。
イラストレーターは純粋に需要を満たす実力を求められる世界のため、特に資格や試験は不要です。入稿もデジタル環境が殆どとなっているので、特にイラストレーターとして就職する際には、PCを用いたイラスト制作が出来ると非常に有利になります。
資格取得も無駄にはなりませんが、デザイン分野にも裾野を広げ、知識を幅広く深く身につけるとより一層可能性が拡がるでしょう。
イラストレーターの参考情報
平均年収 | 250万円~400万円 |
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必要資格 | 必要資格なし |
資格区分 | - |
職業職種 | マンガ・アニメ・ゲーム |
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