考古学者の資格・試験とは?取得しておくと役立つ資格の特徴などを解説
考古学者は遺跡から遺物を取り出し、昔の人々の生活を読み解くために研究や発表をします。では、考古学者にはどのような試験や資格があるのでしょうか?一般的な考古学者の教授として働く場合は、博士号の取得をする必要があります。本記事では、考古学者として求められる資格、取得することで役立つ資格などについてご紹介します。
考古学者の資格とは?
考古学者になるために、特別な資格や試験はありません。しかし、考古学者は歴史的な文化財を多く扱う仕事なので、相当の知識やノウハウ、技術が求められます。そのため、最低でも4年制大学で考古学を勉強しておくことが大切です。
ここでは考古学者としての技量の目安となる「考古調査士」の資格と、博物館で学芸員として働くときに必要な「学芸員」の資格について解説します。
考古学者に役立つ資格「考古調査士」
考古調査士の資格とは
「考古調査士」の資格は考古調査士資格認定機構が管理・運営を行っている民間資格です。考古学における専門知識や技術力をはかるため、埋蔵文化財関係に長く携わった人に対して付与される資格です。
大学や大学院の専門課程の学生、または社会人になって考古学を学んだ人が申請をし、考古調査士資格認定機構が内容を審査して内容やレベルに応じて「上級考古調査士・1級考古調査士・2級考古調査士」の3つの資格を付与しています。
日本では今まで考古学に関する試験が存在しませんでしたが、考古調査をする人がこの資格を取得することで社会的に信頼や評価を得ることができるとされています。
社会人課程
社会人からの履修条件は22歳以上となります。機構が定めた教育機関や大学等研究において「キャリアアップコース(2級)・リカレントコース(1級)・マネジメントコース(上級)」で資格科目の履修および必須単位を取得した人のみが申請を行うことが可能です。
学生課程
2019年7月現在、考古調査士資格認定機構に加盟している大学は早稲田大学、国士舘大学などをはじめとした13校です。加盟大学に在学している大学生や大学院生は、授業で必要単位を取得すれば資格申請をすることが可能です。学生課程は「学部コース」と「大学院コース」の2種類があり、学部コースは2級、大学院コースは1級へと決められています。
考古調査士の資格の難易度・合格率
考古調査士の資格に関する正確な合格率は発表されていません。考古調査士資格認定機構発表による資格所有者数は以下の通りです。
考古調査士の累計数
等級 | 資格取得者数 |
---|---|
累計 | 938人 |
上級 | 5名 |
1級 | 63名 |
2級 | 870名 |
2008~2017年における考古調査士の累計人数は938人。内訳は上級5名・1級63名・2級870名です。
2級の資格取得者が圧倒的に多いことに対し、上級と1級の資格所有者は両方を合わせても全体の10パーセントに満たないことから、上級や1級に関しては難易度が相当高いことが予測されます。
考古学者に役立つ資格「学芸員」
学芸員の資格とは
「学芸員」とは博物館で働く専門知識を持ち合わせた職員をさします。博物館には動物園・水族館・科学館・美術館・天文台・植物園などが含まれ、考古学者の就職先は歴史的博物館や考古博物館などが一般的といえるでしょう。
考古学においては、遺物や関係資料の収集・管理・展示・保管・調査・研究が一連の仕事内容です。考古学者は博物館に遺跡や史料を展示することで、研究内容の普及や社会的な教育に貢献しています。
学芸員資格を取るための条件
学芸員の資格を取るための方法は以下の3つです。
- 学芸員資格を習得できる大学において、文部科学省令の指定した「博物館に関する科目」を履修し、学士の学位を有している
- 大学に2年以上在学し「博物館に関する科目」を62単位取得していることに加え、3年以上「学芸員補」の職歴がある
- 学芸員資格認定試験に合格している
資格取得希望者はこれら3つの中のいずれかの条件をクリアしていれば学芸員の資格を所有することが可能です。1番目の学芸員資格を取得できる大学は日本国内において2019年7月現在、4年制大学の国立大学57校・公立大学20校・私立大学218校・短期大学8校あります。また履修条件となる「博物館に関する科目」は以下の通りです。
- 生涯学習概論
- 博物館概論
- 博物館経営論
- 博物館資料論
- 博物館資料保存論
- 博物館展示論
- 博物館教育論
- 博物館情報・メディア論
- 博物館実習
博物館実習の単位は3つ、その他の単位は2単位ずつ履修する必要があります。
2番目の条件である「学芸員補」とは特別な資格を指すのではなく、博物館法で指定された博物館で学芸員や職員のアシスタント的な立場で働く職種を指します。
学芸員資格認定試験とは
学芸員の資格取得方法の一つ「学芸員資格認定試験」の試験は毎年1回行われています。願書の受付は例年7月中旬から8月下旬までです。
試験方法は2つあり、筆記で行われる「試験認定」とそれまでの業績や学識で判断される「審査認定」があります。試験認定は毎年12月初旬で、年が明けて1月になると審査認定の審査が行われます。
試験認定を受けるには
学芸員資格認定試験の試験認定を受験するためには、以下にある5つの条件のうちどれかに該当している必要があります。
- 学士の学位を持っている
- 大学に2年以上在籍かつ指定の62単位以上を取得、なおかつ2年以上学芸員補としての経験がある
- 教員職員普通免許状(教職員免許法第2条第1項に該当する)があり、なおかつ2年以上教育職を経験している
- 学芸員補として4年以上働いている
- 文部科学大臣が記述の条件と同等以上の資格があると認められている
筆記試験の試験認定に合格し、その後に1年間学芸員補としての職を経験することで、文部科学大臣から学芸員の合格証書が与えられます。
審査認定を受けるには
審査認定を受けるにも以下の受験資格のいずれかを満たす必要があります。
- 学位規則による修士・博士・学位・専門職学位いずれかを有し、なおかつ2年以上の学芸員補の経験がある
- 大学で教授・准教授・助教授・講師として生涯学習概論以外の博物館に関する科目を担当、なおかつ2年以上学芸員補の経験がある
- 都道府県の委員会が推薦する条件に該当する
- 学芸員補の経験が11年以上ある
筆記試験がない審査認定は書類審査に加え面接も行われます。それまでの博物館に関する業績や知識が判断材料になりますが、学芸員としての向上心や仕事に対する意欲や態度なども重要です。審査認定に合格した人は合格証書と学芸員の資格が与えられます。
学芸員資格の難易度・合格率
学芸員の資格を取得する方法は記述の通り3つで、そのうちの2つは大学で指定の単位を取得したり、学芸員補の経験があれば資格が取得できるので、「学芸員資格取得試験」を受ける人は全体の数パーセントともいわれています。
平成30年度の試験認定・審査認定合格者の割合
学芸員資格取得試験の「試験認定」における平成30年度の受験者数は107名、そのうちの合格者は82名で約76パーセントの合格率でした。同年度の「審査認定」の受験者は40名、そのうちの合格者は22名で合格率は55パーセントでした。
試験認定と審査認定ともに受験者数の約半数以上が合格をしているので、極端に難易度が高い試験とはされていませんが、高い専門性が問われる試験なので、気軽に受けてかんたんに合格できることはないでしょう。
その他の考古学者に関する資格
考古学者になるには、最低でも学士の学位を有しているのが一般的とされています。ここでは、修士と博士の取得について解説します。
修士・博士の学位
修士の学位は4年制大学を卒業して2年間の修士課程を修了した人に与えられるもので、30単位以上の取得と修士論文の提出が必須です。博士は修士の学位を取得した人が博士課程へ進んで学位を取得するもので、論文の作成を主とし、最短3年間で取得できる学位です。修士に比べて博士は卒業するのが難しく、人によっては何年もかけて卒業することも珍しくありません。
考古学における修士課程と博士課程では知識や技術の専門性を高めることが可能となり、学芸員などに就職する際に必要となる論文や研究結果の提出において有利になることが考えられるでしょう。また、大学で考古学の教授や助教授などを目指す場合も修士や博士の称号は不可欠です。
考古学者に関する資格が取れる学校
考古調査士の資格を取得するためには、考古調査士資格認定機構の加盟大学で単位を取得する必要があります。学校名と設置コースは以下の通りです。
加盟大学13校の内訳
考古調査士資格認定機構の加盟校13校の中で社会人課程(大学院・学部コースを含む)を設置しているのは、早稲田大学のみです。
大学院コースと学部コースの両方を設置しているのは、札幌大学・國學院大學・昭和女子大学・愛知学院大学の4校です。
また、学部コースのみの設置は、金沢学院大学・国士舘大学・札幌学院大学・札幌国際大学・京都橘大学・大正大学・京都造形芸術大学・金沢大学の8校です。
考古学者の資格・試験まとめ
考古学者に役立つ資格取得には勤勉な取り組みが必要
今回取り上げた「調査考古士」と「学芸員」の資格は、どちらも短期間の勉強で取得できるものではありません。
考古学に関係する資格の取得は高い専門性を必要とするので、大学などの教育機関で指定された単位の取得や学芸員補としての職歴などが求められます。
これらの資格を取得するためには、考古学に対して勤勉に取り組む姿勢が重要となるでしょう。
考古学者の参考情報
平均年収 | 250万円~1200万円 |
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必要資格 |
|
資格区分 | 国家資格 |
職業職種 | 教育・保育 |
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