測量士の資格・試験とは?測量士、測量士補 国家資格試験の概要と合格の秘訣
測量士は国家資格で、建設・土木工事で必要な測量を行います。公共工事を行う測量業者に配置が義務付けられていて、工事の根幹部分を担う大切な役割をしています。今回はこの記事で、測量士の試験・資格の情報や、測量士関連資格、学校などについてご紹介します。
測量士の資格とは?
測量に関する国家資格
測量士は、測量法に基づき国土交通省国土地理院が所管している国家資格です。測量士には測量士と測量士補があり、その資格要件は測量法で定められています。それぞれ以下のいずれかの条件を満たすことが必要です。
測量士の資格要件
- 文部科学大臣の認定を受けた大学で測量に関する科目を修め、卒業して1年以上の実務経験
- 文部科学大臣の認定を受けた短期大学または高等専門学校で測量に関する科目を修め、卒業して3年以上の実務経験
- 国土交通大臣の登録を受けた測量に関する専門の養成施設で1年以上測量士補となるために必要な専門の知識及び技能を修得し、測量に関し2年以上の実務経験
- 測量士補で、国土交通大臣の登録を受けた測量に関する専門の養成施設で高度の専門の知識及び技能を修得
- 国土地理院が行う測量士試験に合格
測量士補の資格要件
- 文部科学大臣の認定を受けた大学で測量に関する科目を修め、卒業
- 文部科学大臣の認定を受けた短期大学又は高等専門学校で測量に関する科目を修め、卒業
- 測量に関する専門の養成施設で1年以上必要な専門の知識及び技能を修得
- 国土地理院が行う測量士補試験に合格
このように、学歴や職務経験を積んで測量士・測量士補の資格を得る方法と、試験を受ける方法があります。まず測量士補の資格を得てから測量士を目指す人もいますが、初めから測量士を目指す人も多くいます。
測量士の資格の難易度・合格率
測量士の試験は誰でも受験可能
測量士試験は、学歴、職務経験、年齢等に関係なく誰でも受けることができます。そのため、高校生が受験することもあります。
試験は年1回で、例年5月第3日曜日に実施されています。具体的な実施日は、前年12月に国土地理院のホームページなどに掲載されます。受験料(試験手数料)は測量士試験は4,250円、測量士補試験は2,850円です。試験会場は以下の都道府県の大学や専門学校です。
試験地(予定):北海道、宮城県、秋田県、東京都、新潟県、富山県、愛知県、大阪府、島根県、広島県、香川県、福岡県、鹿児島県、沖縄県
試験実施 | 年1回(例年5月第3日曜日に実施) |
---|---|
受験料(試験手数料) | ■測量士試験 4,250円 ■測量士補試験 |
試験会場 |
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測量士試験の内容
測量士試験の試験は午前と午後に分かれています。試験時間はそれぞれ2時間30分です。午前の試験問題は択一式で、1問25点の問題が28問、700点満点です。試験科目は以下の通りです。
- 測量に関する法規及びこれに関連する国際条約
- 多角測量
- 汎地球測位システム測量
- 水準測量
- 地形測量
- 写真測量
- 地図編集
- 応用測量
- 地理情報システム
- 上記に関連する一般知識(技術者倫理、測量の基準、基礎的数学、地理情報標準等)
午前の合格ラインは400点以上で、350点以下は足きり(午後の採点をされない)となります。
また、午後の試験問題は記述式で、必須1問と選択2問の計3問に解答します。必須科目は測量法、水準測量などについての計算、法理論、届出事項、予知、防災などに関する問題です。選択科目は計算問題、作図などで、1.基準点測量、2.写真測量や測距に関するもの、3.地図やその他測図に関するもの、4.応用測量の4問から2問を選択します。
午後の試験問題も700点満点で、午前と合わせて1400点満点中910点以上で合格となります。
測量士補試験の内容
測量士補試験の試験問題は択一式で、試験時間は3時間です。試験科目は以下の通りです。
- 測量に関する法規
- 多角測量
- 汎地球測位システム測量
- 水準測量
- 地形測量
- 写真測量
- 地図編集
- 応用測量
- 上記に関連する一般知識(技術者倫理、測量の基準、基礎的数学、地理情報標準等)
測量士補試験は700点満点で、450点以上で合格となります。
測量士試験の合格率
2018年は、測量士試験の受験者数が3,345名、合格者数が278名で、合格率は8.3%でした。また、測量士補試験は受験者数13,569名、合格者数4,555名、合格率33.6%でした。
測量士試験の合格率は年によって多少の変動がありますが、ここ数年は10%前後で推移しています。一方、測量士補試験の合格率は2017年は47.3%と半数近くが合格していますが、2016年は35.9%、2015年は28.0%、2014年は39.7%、2013年は21.2%と年によってかなり違っています。
試験種別 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
測量士試験 | 3,345名 | 278名 | 8.3% |
測量士補試験 | 13,569名 | 4,555名 | 33.6% |
その他の測量士関連資格
土地家屋調査士
測量士と関係が深い資格として、法務省が管轄している国家資格「土地家屋調査士」があります。測量士が主に道路やダムといった建設・土木工事で必要な測量を行うのに対し、土地家屋調査士は、土地の境界をはっきりさせて登記するために測量を行います。
測量士と土地家屋調査士は測量を行うという点では共通ですが、登記についてははっきりと区別があります。土地家屋調査士は登記を目的とした測量のみを行い、登記を目的としていない測量をすることはできません。一方、測量士は登記を目的としない測量のみを行い、登記をすることはできません。
測量士は土地家屋調査士の試験が一部免除される
土地家屋調査士の試験は午前2時間、午後3時間の筆記試験があり、筆記試験合格者は口述試験があります。このうち、午前2時間の筆記試験は測量士、測量士補、一級建築士、二級建築士の資格を所有していると免除されます。1日5時間の試験が3時間になるというのは、集中力、体力の面からも嬉しいですね。
測量士と土地家屋調査士は関連が深い上、測量士補は割と取りやすいということで、まず測量士補を取得してから土地家屋調査士を目指す人もいます。
補償業務管理士
補償業務管理士は、公共工事のために民間の土地を明け渡す際の補償金額を決める専門職です。民間資格ではありますが、補償コンサルタント会社が公共工事を請け負うために必要とされる資格の一つです。
補償業務管理士になるには、一般社団法人日本補償コンサルタント協会で研修を受けた後に筆記試験と口述試験を受ける必要がありますが、測量士や不動産鑑定士等の資格を持っていれば、研修が免除されます。
空間情報総括管理技術者
測量士の資格がないと受験できない資格に空間情報総括管理技術者があります。空間情報総括管理技術者は、測量を基に空間情報事業を効果的に遂行する専門家で、公益社団法人日本測量協会が認定している資格です。測量士の資格、技術士の資格または博士の称号、15年以上の実務経験などが求められます。
測量士の資格が取れる学校
国土交通大臣の登録を受けた学校で学ぶ
資格試験以外で測量士になる方法として、学歴や実務経験を積む方法があります。国土交通大臣の登録を受けた大学、短期大学、専門学校等で必要な単位を取得して卒業すれば、資格を得ることができますので、これから進学する人が測量士を目指す場合は、国土交通大臣の登録校を選択すると良いでしょう。
測量士になるためのカリキュラムがある大学等は、地域の建築会社等とのつながりがあることもあります。インターンシップの機会が得られるかもしれませんし、就職で有利になるということも期待できます。
すでに社会人なのでこれから学校へ通うのは厳しいという方でも、最近は夜間に授業が行われる学校も増えてきましたので、諦めないで条件の合う学校を探してみてください。
独学で試験を受ける方法もある
測量士になるために学校へ行くのは、必須ではありません。独学で測量士試験を受けて測量士になる方法もあります。ただし、合格率は決して高くはありませんので、心してかかることが求められます。
試験問題や解答は公開されているので、試験問題の傾向をつかむことはできるでしょう。過去数年分を勉強するなど、しっかりと対策を練ってください。なお、独学ではちょっと自信がないという場合は、試験対策のスクールへ行ったり、通信講座を受講したりする方法もあります。
測量士の資格・試験まとめ
資格取得方法の選択肢はいくつもある
測量士の資格・試験について紹介しました。測量士の試験は誰でも受験できますが、合格率は1割程度と一見狭き門に思えます。しかし、資格を取得する方法としては、学歴・実務経験を積む方法もあります。ぜひご自分に合った方法を選んでください。
最近はIT技術の進展により、測量士の仕事内容は大きく変わってきています。建設工事、土木工事の根幹を担うやりがいのある仕事ですので、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
測量士の参考情報
平均年収 | 400万円~500万円 |
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必要資格 |
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資格区分 | 国家資格 |
職業職種 | 建築・不動産 |
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