左官の給与・年収は?初任給やボーナス、支給される手当まとめ

左官の給与・年収は?初任給やボーナス、支給される手当まとめ

建築物の壁や床をつくる職業である左官。建築現場で働く彼らは、どの程度の収入を得ているのでしょうか。業界内外で高まる左官に需要に対し、低いと噂される給与・年収について、その実態を統計データを基に紹介します。

左官の初任給

建築業界の初任給

厚生労働省が公表している賃金構造基本統計調査において、左官工事業を含む「建築業」の平均初任給と、全産業の平均初任給を平成30年の実績で比較しました。

最終学歴 男女計 男性 女性
建築業 全産業 比率 建築業 全産業 比率 建築業 全産業 比率
大学院修士課程修了 23.3万円 23.9万円 97.78% 23.3万円 24万円 97.04% 23.6万円 23.4万円 100.94%
大学卒 21.5万円 20.7万円 103.82% 21.7万円 21万円 103.33% 20.7万円 20.3万円 102.37%
高専・短大卒 19.1万円 18.1万円 105.02% 19.1万円 18.3万円 104.65% 18.7万円 18万円 103.38%
高校卒 17.2万円 16.5万円 104.36% 17.3万円 16.7万円 104.02% 16.2万円 16.2万円 99.82%

全体的に全産業の平均初任給とほぼ同等といえる結果となっています。

左官としての新卒募集は少ない

大手就職情報サイトにおいて左官の新卒採用を検索した場合、初任給としておおよそ18万~20万円前後での募集が中心です。しかし施工管理・総合職といった募集の中に左官が含まれているものが多く、左官だけを指定した募集はそれほど数がありません。

左官の平均給与の統計

左官の給料

左官の給料の統計について、同じく厚生労働省が発表している「平成29年度 賃金構造基本統計調査」における統計データから、左官業と全産業それぞれの平均給与を比較しました。

年齢 左官 全産業平均 比率
全年齢 29.3万円 30.4万円 96.12%
~19歳 21.1万円 17.6万円 120.28%
20~24歳 26.5万円 20.7万円 128.01%
25~29歳 23.9万円 23.9万円 100.04%
30~34歳 25.2万円 27.2万円 92.58%
35~39歳 34.6万円 30.1万円 114.88%
40~44歳 26.3万円 32.7万円 80.21%
45~49歳 36.6万円 35.2万円 103.80%
50~54歳 33.5万円 37.3万円 89.93%
55~59歳 25.9万円 36.4万円 71.32%
60~64歳 32.2万円 27.5万円 117.19%
65~69歳 30.3万円 25.0万円 120.90%
70歳~ 24.1万円 25.9万円 93.12%

この統計における左官の平均給与はサンプル数が少ないため、各年代の正確な給与実態を表していない可能性があります。

それを踏まえてみても、ほぼすべての年代でおおむね全産業平均と同程度の給与を手にしていることがわかります。左官は給与が安いと言われることが多い職業の一つですが、月給面では大きなマイナスはないようです。

募集は日給が多い

大手求人情報サイトにおいて、実際に左官の募集を確認してみると、月給は18万円~40万円と大きく幅があります。未経験可としている企業では18万~22万円ほどの募集が多く、経験年数に応じて金額が大きくなっていくことが伺えます。

また、募集要項には正社員でも日給による提示も多くみられます。左官の仕事は現場の状態に左右されることが多く、天気の都合で作業不可、現場のスケジュールが合わず仕事がないというようなことも少なからずあります。そのため、月給固定で雇用することが難しい規模の会社もあるようです。

左官の年収統計

左官の年収

給与同様に、「平成29年度 賃金構造基本統計調査」における統計データから、左官業と全産業それぞれの年収を類推して比較した結果が以下の表です。

年齢 左官 全産業平均 比率
全年齢 383.0万円 491.2万円 77.97%
~19歳 254.9万円 248.0万円 102.78%
20~24歳 342.9万円 314.9万円 108.89%
25~29歳 321.8万円 391.3万円 82.24%
30~34歳 336.9万円 450.5万円 74.78%
35~39歳 472.8万円 495.1万円 95.50%
40~44歳 337.1万円 536.4万円 62.84%
45~49歳 485.0万円 576.2万円 84.17%
50~54歳 440.2万円 606.5万円 72.58%
55~59歳 348.3万円 583.2万円 59.72%
60~64歳 430.2万円 409.3万円 105.11%
65~69歳 384.2万円 348.8万円 110.15%
70歳~ 305.5万円 348.3万円 87.71%

給与同様に、この統計における左官の平均年収はサンプル数が少ないため、各年代の正確な給与実態を表していない可能性があります。

給与額では大きな差がありませんでしたが、年収で比較をすると、全産業平均に比べて多くの年代で差がついています。この大きな差は、手当と賞与に原因があるようです。

手当と賞与が少ない業界

統計データにおいて、全産業(全年齢・全性別含む)の平均額面給与は30.4万円、手当等を含む支給額は33.4万円と、月間約3万円の手当が発生しています。

それに対し左官の平均額面給与は29.5万円、手当等を含む支給額は30.5万円であり、約1万円しか手当が発生していませんでした。また、年間賞与は全産業平均が90.6万円発生しているのに対し、左官はわずか16.7万円と、5倍以上の差が開いています。

大手求人情報サイトの募集要項を調査したところ、賞与ありとしている企業でも、具体的な金額や月数を提示しているところは少なく、「年10~20万程度」や「寸志あり」としている企業が目立ちました。

賞与や手当はあまり期待できないのが左官の現状といえるでしょう。

左官の将来性

収入面の評価は厳しい左官ですが、職業としての将来性はあるのでしょうか。

他業種としのぎを削る現状

現在の左官業は、決して楽な状況にあるとはいえません。壁の塗装は左官だけの専売特許ではなく、サイディングのようなパネルを張る形式の施工技術が台頭しており、内壁も漆喰と区別がつかないようなクロスが登場するなど、一般的な左官の活躍の場が狭まっています。

高い自由度と安全性

しかし左官による壁塗りには、既製品であるパネルやクロスにはない高い自由度があります。細かい色合いやデザインを自在に変更することができ、既存のタイルやレンガを組み合わせたオリジナリティのある壁をつくることは、左官職人の得意分野です。

パネルの欠点である継ぎ目が目立つ点も、左官による壁塗りにはありません。凝ったデザインで複雑な形状の家であっても自由なデザインの壁を作ることができるため、オリジナルのデザインを好む施工主からは絶大な支持を受けています。

また、近年ではシックハウス症候群の問題により、化学系の素材ではなく自然素材を使うメリットが見直されてきました。左官の壁塗りには珪藻土(けいそうど)や漆喰といった自然素材が材料として用いられており、健康志向が高い施工主から高い安全性を評価されています。

海外に生まれる活躍の場

さらに日本国内だけではなく、海外にも左官の活躍の場は広がっています。日本の左官職人が持つ技術は海外でも高く評価されており、複雑な構造の建物や、歴史的な価値を持つ建築物など、高い左官技術が求められる現場での需要が高まっています。

世界中の職人が技能の高さを競い合う技能五輪においても、日本の若き左官職人が高い評価を受けており、今後さらに海外へ活躍の場が広がることが期待できます。

左官は年収1,000万を目指せるのか

職人としての需要が高まっている左官ですが、左官職人として年収1,000万円をかせぐことは可能なのでしょうか。

給与統計を見る限り、雇われている左官職人で年収1,000万といった高額の報酬を得ることは、かなり厳しいと言わざるを得ません。年収500万に到達すれば、大いに成功した部類に入るでしょう。

年収1,000万を目指すには、独自の技術をアピールできるだけの経験と実績を積んだ上で、独立開業することが必須となるでしょう。左官の業界も、一人前になるまで10年かかるといわれた時代から変化し、教育のスピード化やシステム化が進みました。その結果、ある程度の実力を身に着けるには数年で済むようになってきているようです。

とはいえ独立して、個人の力で仕事を請け負えるようになるには最低でも5年以上は修行の期間を持つのがよいでしょう。高度な技術を身に着ければ、重要文化財のような保存が求められる建造物の修復や、高額の費用がかけられた特殊な住宅など、並みの左官職人では太刀打ちできないような仕事も舞い込んでくるようになるでしょう。

実績を上げ、自分の名前が売れてくるようになれば、次は経営者となる道が見えてきます。多くの左官職人を従え、多くの仕事をこなすことでさらに多くの収入を得ることが期待できるようになります。

左官の給料・年収まとめ

年収は低い

左官職人は全産業の平均と比較し、年収は低い部類に入ります。日給月給制の職場が多く、賞与などの手当があまり期待できないのが現状です。

職業としての将来性あり

しかし職業としての将来性は高いといえます。安全性に注目が集まり、安い既製品を避ける傾向が強くなっている建築の現場において、左官が扱う自然素材による壁塗りは、今後も需要が高まり続けるでしょう。

年収1,000万を目指すなら独立

現在の左官職人の待遇では、1,000万円を超える給与を得るのは難しいでしょう。高い報酬を得るためには腕をみがき、高度な技術を身に着けたうえで独立開業する道があります。

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左官の参考情報

平均年収300万円~400万円
必要資格 必要資格なし
資格区分 -
職業職種建築・不動産

統計情報 出典元:

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