音楽療法士になるには?必要資格や向いている人の特徴などを具体的に解説

音楽療法士になるには?必要資格や向いている人の特徴などを具体的に解説

音楽療法士になるには、心身のケアや健康増進などを目的とした音楽療法に熟知し、クライアント(患者さん)の信頼を得られるような共感力が必要不可欠です。社会的な需要は今後ますます高まると予想されています。今回は、音楽療法士に向いている人の適性や、必要な能力、資格についてご紹介します。

音楽療法士になるには何が必要?

音楽が好きであり、音楽が生体に与える影響への深い理解が不可欠

音楽療法士は、多様な人々の多様な心身の健康状態に向き合い、健康の維持増進、身体機能の改善、認知力や精神力の向上などに、音楽を用いたアプローチで応えていく仕事です。

働く場所も様々で、医療機関、保健施設など医療の現場、メンタルクリニック、介護福祉施設、デイサービス、学校をはじめとする教育機関などで、適切な音楽療法の検討、音楽プログラムの作成及び実施を担当します。

音楽療法士は多様な医療従事者とのチーム医療に携わる仕事で、通常の医療従事者とはまた違った才能、知識が重要になってくる職業です。

例えば楽器演奏や歌唱活動などは能動的音楽療法(クライアント自身が表現することを主体にした療法)の代表的なものであり、クライアントに楽器の演奏の仕方や歌い方を指導するのもセラピストである音楽療法士の役目。人に教えるということは、自分もある程度の楽器演奏はできないといけません。

能動的音楽療法では、ギター、ピアノ、打楽器など、そこまで難解ではないものの、比較的工夫が凝らせる楽器が主に用いられます。また、受動的音楽療法(セラピストが音楽を流したり、演奏をしたりするのを、クライアントに聴いてもらうことを主体とした療法)の場合の音楽選定や、音響操作、楽器演奏なども全て音楽療法士が引き受けます。

適切な音楽指導、音楽療法を行なっていくためには、音楽療法士自身に確かな音楽の素養と、音楽が生体にどう影響するかに関する深い知識が必要です。歴史を辿って様々な音楽に対する知識を深めるのは勿論、音楽心理学、音楽生理学、音響心理学など、生身の人間が音楽を聞いたり音楽を表現したりすることに対する、心理的生理的な反応を研究してきた学術分野に関する、幅広く深い知識がなければ、適切な音楽療法を行うことは難しいでしょう。

また、時にはクライアントとセラピストが一緒に演奏したり、セッション的な方法論で互いに楽器を弾き合うことで、楽器演奏を通して心理的なやり取りを行ったりといった、高度な音楽療法もあります。音楽を通してクライアントの感情や心理を的確に把握していくためには、まずは音楽療法士自身が音楽が好きであることが何よりも大切です。

現場に携わる他の専門職や、音楽療法士同士の連携力が重要

音楽療法士は、一人で仕事をする場合も無きにしも非ずですが、特に集団を対象にした音楽療法の場合だと、大抵はリーダーと呼ばれるまとめ役がいて、新人や経験の浅い音楽療法士がアシスタントとして連携していくことになります。

またそれだけではなく、音楽療法士は、医師、看護師、保育士、介護福祉士、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、言語聴覚士など、多くの専門家、医療従事者との連携が不可欠となります。より専門性が高い医師、看護師、保育士、介護福祉士はもとより、他の分野を担当するセラピストたちとも逐次コミュニケーションを取りながら、音楽療法にあたって行きます。

音楽療法を受けるクライアントには様々な症状の人々がいます。知的障害がある、視覚障害がある、それだけでなく、全く目が見えない、耳が聞こえない人もいます。そうした、普通の人にはある感覚器の機能や、脳の機能が失われていたりする人々に接するためには、その専門の分野の知識や考え方が必須となります。

任せるべきところはしっかりと他の分野の専門家に任せることも、音楽療法士の大切な務めです。

音楽療法士に向いている人、適性がある人

コミュニケーション能力が高く、共感力の高い人

音楽療法士は先に説明した通り、非常に多岐に渡る人々に対して音楽療法を実践して行かねばなりません。しかしそのためには、まず大前提としてクライアントとの信頼関係を築かないことには話になりません。

メンタルクリニックなど精神科の臨床現場では周知の事実ですが、どれだけ優れた対応や治療を実践したとしても、クライアントとの確かな信頼関係が土台になければ、そもそも成立しないというパターンが多いです。信頼関係がまだ成立していない中で、どれだけ優れた良い音楽を流そうとも、クライアントには全く効果が見られないというのは往往にしてあることです。

そうした意味で、音楽療法士にまず求められるのは、クライアントを理解するプロになることです。例えば子供なら子供を、老人なら老人を、知的障害者なら知的障害者を、理解し、共感し、関係を構築し、クライアントの周りの環境も理解し、適切に援助し、クライアントを巻き込み、保護者や配偶者などクライアントの身内との信頼関係も作り上げる、そうした状態になるまでには、一定程度の時間が必要となります。

障害がある場合も、子供や老人の場合も、共感したり信頼関係を築いていくには、一般的な大人よりもある程度高いハードルがある場合が多いです。そうした一筋縄にはいかない関係構築を、根気強く行える人が音楽療法士に向いています。

あまり感情に左右されることなく、精神が安定している人

音楽療法士が担当するクライアントは、様々な心身の問題や、身体機能の不足・欠損など、総じてネガティブなものを抱えて治療に臨んでいます。そうした人々が常にリラックスした状態で音楽に親しめるように、音楽療法士は心配りをしっかりと行わなければなりません。

そうしたときに、音楽療法士の方が精神的に塞ぎ込んでいたりすると、子供は特にですが、クライアントはそれを即座に見抜きます。視覚以外の情報を得る感覚が研ぎ澄まされた視覚障害者なども同様ですが、気持ちというのは自分が気丈に振舞っているつもりでもすぐに伝わってしまいます。

その結果、クライアントの方がセラピストに対し心配したり、不安に思うことになってしまいます。そうすると本末転倒どころか、セラピストの方のネガティブをクライアントが貰ってしまうことにもなりかねません。そうしたことが起きないように、常に心が安定して平静を保てる人が、音楽療法士の世界で求められています。

臨機応変な対応ができる人

音楽療法はある程度一定の範囲までは、あらかじめ音楽療法のためのプログラムを作成しておき、その通りに音楽療法を実践します。

しかし音楽療法を受けるのは人間なので、その時々の、クライアントの状態(体調など)や、集団の規模(人数が多すぎないかなど)、メンバー構成(相性がいいかどうかなど)によって、プログラム通りにいかない場合も多々あります。本当の音楽療法とは、その日直接セッションを行うことによって状況を鑑み、その都度細かい修正を行いながら作っていくものなのです。

障害児に対する音楽療法の場合は、一定程度の範囲で必ず同じ習慣を繰り返す必要があるので、しっかりプログラムを作る必要があります(知的障害者の場合だとルーチンワークに対する相性がいい、あるいは極端にルーチンを重視するため)が、プログラムはあくまでも基準、目安であって、やはり細かい内容は状況に応じて変化して行きます。

音楽療法には、一定の枠作りも大切ですが、こうした臨機応変さが常に求められます。これは子供との関係性でも同じです。子供は気まぐれで、自由な精神を持っています。何かをしていたと思ったら、すぐ飽きて、別のことを始めてしまったりと、その興味関心は常に移り変わって行きます。また、集団での人間関係の構築が難しく、場から浮いてしまう子供も出てきます。

集団を相手にする際も、一人一人が違うからこそ、一人一人にとってちょうどいい距離感で常に接することができるよう、臨機応変に距離感や対応を変えられる人は、音楽療法士に向いています。

音楽療法士になるための学校・教室

音楽療法士団体が認定する認定校、養成校への進学がベスト

音楽療法士になるためには、実は資格は必要ありません。資格を取らなければ就けない職業ではないので、所定の学歴を持つ必要もありません。しかし、仕事には高度な専門知識と、豊富な臨床経験に裏打ちされたスキルが必要です。

そうした幅広い専門知識を学び、実践していくために、音楽療法士の養成コースが設けられている大学、短期大学、専門学校があります。そうした教育機関を認定している団体は2つあり、一つが「日本音楽療法学会」、もう一つが「全日本音楽療法士養成協議会」です。

日本ではまだまだ音楽療法の分野は発展途上であり、専門の養成コースを持っている教育機関(認定校、養成校)は全国に20〜30校と非常に少ないです。最初から音楽療法士になるつもりであれば、資格を取るつもりが仮になかったとしても、音楽療法士になるための専門科目や実習を多く学ぶことができる、団体の認定校、養成校に通うのがベストでしょう。

資格を持つことは今の所必須ではありませんが、今後音楽療法士が国家資格となる可能性も無きにしも非ずです。もしかしたら資格をとっておくことで、国家資格化したときに有利に働くこともありえない話ではないです。

そして、日本にある団体で最も積極的に音楽療法士の国家資格化を推進しているのはどの団体なのかということをしっかりと調べてみましょう。仮に国家資格化した場合、国家資格を国の養成で運営するのがその団体になる可能性が高いので、その認定校にて資格をいまのうちに取っておけば、もしかしたら試験免除など恩恵を受けることができるかもしれません。

それ以外の選択肢も無限にありますが、少なくともピアノ、ギター、声楽などを学んでおくと、音楽療法士の実務に大きく役に立つ可能性が高いです。

音楽療法士になるには?まとめ

音楽の観点から人々の健康を支え、今後需要の上がる仕事

音楽療法は、主にアメリカなどで近年注目が集まっていて、特にホスピス医療においての活用が盛んに行われています。日本ではまだ音楽療法はマイナーな位置にいて、国家資格もありません。また、民間資格の種類によってだいぶ認定基準に差があるのもあって、あまり社会的信用度の高い資格ではありません。

しかし、音楽を通して幅広い治療を行う音楽療法士の需要は、ますます高まっていくことが予想されています。来るべきその未来に向けて、今のうちにしっかりと普及活動も行いつつ、専門性を磨いていくことが肝要です。

音楽療法士の参考情報

平均年収250万円~350万円
必要資格 必要資格なし
資格区分 -
職業職種心理・福祉・リハビリ

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