歌舞伎役者の仕事内容とは?やりがいや魅力について解説
歌舞伎役者は家系で名跡を継承する世襲制が強く、閉鎖的なイメージを持っている人も多いです。しかし、近年歌舞伎役者の人材不足もあり、一般家庭出身の人にも門戸が開かれています。では、歌舞伎役者はどのような仕事内容で、どのようなやりがいがあるのでしょうか。本記事では、歌舞伎役者の具体的な仕事内容、仕事のやりがいなどについてご紹介します。
歌舞伎役者とはどんな仕事?
日本の伝統文化、歌舞伎の発祥とは?舞台に立てるのは男性のみ
歌舞伎役者は舞台で歌舞伎を演じる仕事です。歌舞伎の始まりは出雲阿国によって京都で始められたといわれています。
歌舞伎の語源は「傾(かぶ)く」です。はじめは「かぶき踊り」として世間の常識とはずれた「かぶきもの者」をまねて、見ている人々を楽しませたことが始まりだといわれています。
400年の歴史を誇る日本の伝統文化を受け継ぐのが歌舞伎役者です。歌舞伎子役として女の子が舞台に上がることはありますが、基本的に男性のみが舞台に上がることができます。
世襲制で名前を継承していく!一般家庭出身でも歌舞伎役者になれる道も
歌舞伎役者は世襲制で実子が名跡(みょうせき・名字のこと)を受け継ぐことが知られています。閉鎖的な印象を持っている人も多いですが、現在では日本芸術文化振興会が運営している養成所の研究生となれれば、歌舞伎役者としての道が開けます。
そのほか子どもであれば、歌舞伎業界とパイプがある児童劇団に所属したり、小学生を対象にした歌舞伎スクールで鍛錬を重ねたりすることで、歌舞伎子役としてデビューするケースもあります。
歌舞伎興行を取り仕切っている松竹株式会社が運営している歌舞伎スクール「寺子屋」では小学生を対象としたカリキュラムが組まれており、本格的に歌舞伎役者を目指すことができます。
歌舞伎役者の人材不足が問題となっているため、閉鎖的な世襲制が強い一方で一般人にも才能がある人を見出せる制度も用意されています。
歌舞伎役者の具体的な仕事内容
役者として舞台に立つ!海外公演や経験を積んで演出を行うこともある
歌舞伎役者のメインの仕事は、歌舞伎の舞台に出演することです。公演は通常、25日ほどです。初日から千秋楽まで、基本的に休みはありません。
公演が始まる前までに、演目に合わせた稽古を行う必要があります。台本の読み合わせや立ち稽古なども公演に向けて行う必要があります。役者として経験を積めば、出演だけでなく演出なども手掛けるようになることもあります。
現在日本にある歌舞伎の興行を取り仕切る松竹株式会社が運営している有名な劇場だけでも4つあります。
- 歌舞伎座(東京都中央区)
- 新橋演舞場(東京都中央区)
- 大阪松竹座(大阪府大阪市)
- 南座(京都府京都市)
上記の劇場以外にも、日本全国をまわる巡業も行われます。海外公演で世界各国を回ることもあります。
人気の歌舞伎役者はメディアの露出度も高い!俳優業や取材に応じる仕事も
歌舞伎役者の中には歌舞伎の舞台だけではなく、テレビドラマや映画などにも出演する人がいます。公演や稽古に加えて、メディアの出演や取材などに応じるのも仕事のひとつといえるでしょう。
修行中の役者としてだけでなく、舞台を支える役割も!名題下の仕事内容とは
歌舞伎役者にも身分があります。歌舞伎の歴史はおよそ400年あると言われ、長い歴史の中で変遷しましたが、現在では「名題(なだい)」「名題下(なだいした)」の2つに分けられています。
名題下として10年以上下積みをした後に、関係者からの推薦を受けてようやく名題資格審査を受けることができます。名題資格審査に合格した場合、名題下から名題へと昇進することができます。名題下の間は舞台でわき役や裏方などの役割をするだけでなく、名題の役者やその家族のお世話を修行として行うことがあります。
名題下は「三階さん」と呼ばれることあります。これは昔、名題下の控室が舞台から一番遠い3階にあったことから呼ばれるようになったのではないかと言われています。名題として活躍する歌舞伎役者は名前も有名になり、看板役者として主役級の重要な役を演じることが多いです。名題下は基本的にセリフや役名もない脇役を演じます。
一方で名題下と名題の仕事を分業している面もあるため、あえて審査を受けず、名題下として活躍し続けている人もいます。名題下の仕事の一つが「立ち廻り」です。複数の人物が刀で斬りあったりする場面の演技・演出をすることを「立ち廻り」と言います。
「とんぼ」のパフォーマンスをするのも名題下の役割で、立ち廻りの技術の一つです。「とんぼ」とは宙返りのことで、歌舞伎俳優になるための研修内容や歌舞伎子役スクールのレッスン内容にも組み込まれている、演出を盛り上げるための重要な技です。
そのほか、役者が乗る馬の脚や犬の鳴き声などを演じるなど、裏方的な役割が強いですが、名題下がいなければ主役が引き立たず、なくてはならない役割です。
歌舞伎役者の仕事のやりがいとは
歌舞伎の題材は歴史的大事件や庶民の生活風景、歴史的な背景や文化に詳しくなる!
歌舞伎の古典的な演目は数百本のレパートリーがあります。その中でもよく上演される演目は100本ほどです。日本の歴史的な場面の再現や、江戸時代の文化を題材にしたものが多いです。
通常1部3本構成でおこなわれ、1部4時間~4時間半ほどです。間に幕間(まくあい)という休憩を挟み、長い休憩の間に食事に出るお客さんもいます。
演目は大きく2つに分けることができます。1つは「時代物」で、江戸時代の人々から見た時代劇です。庶民の生活とはかけ離れた公家や武家が中心のシリアスな話が多く、曾我兄弟、源義経が多くの作品に登場します。江戸時代以前の歴史的な事件を題材にしています。有名な演目は「義経千本桜」などです。
2つめは「世話物」です。江戸の庶民社会を題材にしており、江戸時代の人々からすれば現代劇にあたります。大工や魚屋が出てくるなど、庶民の生活になじみのある登場人物や場面が舞台になっています。基本的はフィクションですが、時世間を騒がせた事件を題材にしたものもあります。
以上のような400年の歴史をもつ文化芸能を体現するため、歌舞伎役者は自然と日本の文化芸能に造詣が深くなります。また、伝統的な文化を後世に残していくのも歌舞伎役者の役割の1つです。
文化の継承に携わることができるのも歌舞伎役者のやりがいのひとつといえるでしょう。
鍛錬と実績を積んで人間国宝に!重要無形文化財として認定されることも
歌舞伎役者の中には人間国宝に指定されている人もいます。人間国宝とは、国に芸術上価値が高いと認められた、重要無形文化財の個人認定の保持者のことです。
立役(たちやく・成年男子の役)や女方、脇役など、さまざまな歌舞伎役者が人間国宝として認定されています。
歌舞伎役者として成功するには不可欠!体力・精神力が鍛えられる
歌舞伎役者は体力的、精神的な強さが求められます。1回の公演はおよそ25日間、基本的に公演中は一度も休みがないため、出演する役者は休みがありません。
大舞台でたくさんの人の前で演じるプレッシャーもあります。また、上下関係も厳しい世界ですから、自分より先輩の歌舞伎役者の恥になるような行動はできません。
歌舞伎の家系に生まれ、幼いころから歌舞伎役者の道を志してきた子どもは、早い段階で初舞台に上がり、場数を踏みます。着物の着付けの仕方、日本舞踊、発声、独特の所作、時には歌舞伎の伴奏で使う楽器の演奏の実技まで習得します。
歌舞伎役者として成功するまでには、精神的・体力的に強くなれるでしょう。
応援してくれるお客さんや、公演を支える多くの人々と仕事ができる
公演は多くの人の仕事やサポートによって成り立っています。歌舞伎役者だけでなく、身の回りの世話をする人や、舞台の管理をする人もいます。
お客さんも初見の人から長年ファンでいてくれる人まで、さまざまな人に支えられているといってもよいでしょう。歌舞伎界で特にひいきにしてくれる客や後援してくれる人、無償のスポンサーなどのことを「タニマチ」と呼ぶことがあります。
また人間国宝認定された、大人物に会う機会を得られることもあります。師弟関係が強い世界なので、年長者のお世話になることもあれば、自分が弟子をとり教育することも考えられます。
多くの人と出会い、かかわりながら仕事ができるのは歌舞伎役者のメリットといえるでしょう。
歌舞伎役者の仕事内容まとめ
歌舞伎役者として舞台に上がり、日本文化を継承するのが仕事
歌舞伎役者は世襲制の強い世界ですが、人材不足の背景もあり、一般の家庭から歌舞伎役者になる道も開かれています。
公演で舞台にあがることがメインの仕事ですが、師匠にあたる人の身の回りの世話をし、稽古を行うのも仕事のひとつです。
歌舞伎の演目は歴史的な大事件や江戸時代の町民の生活を題材にしたものが多く、自然と日本の歴史や文化に詳しくなります。歌舞伎役者の中には鍛錬と実績を積み、人間国宝として認定された人もいます。
歌舞伎役者の参考情報
平均年収 | 400万円~1000万円 |
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必要資格 | 必要資格なし |
資格区分 | - |
職業職種 | 芸能 |
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