視能訓練士の仕事内容とは?やりがいや魅力について解説
視能訓練士といえば、かつては視機能を失ったり弱めてしまった人の視機能を回復させるために矯正、訓練を行ったり、そのための検査を行う職業でした。しかし今やそれだけに留まらず、眼科医療全般にかかわる様々な仕事を任される職業となっています。この記事では、視能訓練士の仕事の内容や特徴、将来性についてご紹介します。
視能訓練士とはどんな仕事?
多くの人が思い浮かべる「視能検査」の仕事
眼科医院にかかると、まず「視力の検査をしましょう」と言われる人も多いかと思います。そして検査室へ招かれるわけですが、この検査を担当するのは、大体の場合、眼科医ではありません。検査を担当するのは、視能訓練士と呼ばれる人たちです。
眼は人間の身体機能の中でも極めて繊細な機関です。検査と一概に言っても、その種類だけでも様々。視力だけでなく、視野、屈折、色覚、光覚、眼圧、眼底、瞳孔、網膜、涙液、眼球運動など、多様な検査を必要とします。多種多様な検査を患者さんの症状に合わせて的確に行うことで、検査結果をもとに医者と連携して治療方針を固めていくことができます。
眼科に係る様々な検査を総称して「視能検査」と呼びますが、この検査だけでも膨大な種類があり、かつ深い専門性を必要とするため、視能訓練士の役割は今や非常に重要なものとなっています。
かつての眼科コメディカルが廃止、視能訓練士はますます重要な立場に
かつて、眼科コメディカル全国統一試験という制度があり、眼科において国家資格のない、医師以外の医療従事者に対し、現場で働く資格を問うための試験がありました。現行の法律では診察ではなく検査であれば、資格は問われない状態となっていて、一定の制限の中とはいえ、無資格でも医療行為を行うことができた時代があったのです。
しかし2010年からは、その制度は廃止されました。やはり国家資格保有者が働くべきという論調が強まったためです。眼科コメディカルの廃止を期に、かつて無資格者が行なっていた検査を主として、様々な仕事が視能訓練士に舞い込んでくることとなりました。
本来、視能訓練士はその名の通り、視機能を失った人、視機能が弱くなってしまった人、重大な障害を抱えてしまった人に対する矯正医療、訓練などを主体としていましたが、上記のような事情から、今や殆どの視能訓練士は眼科に係る検査を主な仕事としています。
視能訓練士の仕事の具体的な内容
代表的な視能訓練士の仕事!眼科医院での視能検査
眼科医院での視能訓練士の仕事の主体は、視能検査です。眼科には日々様々な症状を抱えた患者さんが訪れます。大半の人は、医師の診察を受ける前に、視能検査を受けることになります。
眼科にかかわる検査は視能訓練が行いますが、検査の内容は医師が決める、というのは注目すべきポイントでしょう。検査を行うのは視能訓練士ですが、検査の内容を決める権限があるのは医師のみです。視能訓練士の仕事はあくまで、医師の指示の下で行うものであることは、視能訓練士法にも明記されています。
また、初診の患者さんの場合、問診を行うことも視能訓練士の大事な役割です。問診によって詳細に症状を把握し、医師を通して検査内容を決めてもらい、指示された通りに検査を行います。そして検査結果を診察室の医師や看護師に伝え、適切な治療に繋げるのが、視能訓練士の主な役割です。診察した結果さらなる検査が必要な場合は医師が指示を出し、視能訓練士が再び検査を行います。
検査には、30分以上にも及ぶ長い時間を必要とするものもあります。ゴールドマン視野計を使った検査などがそれにあたります。機械の前に座った患者さんは、長い間同じ姿勢を維持しなければならないので、素早く、的確に進めていく必要があります。
最新の検査機器や器具を常に勉強するのも大切な仕事
視能検査のための医療機器は日々進化しています。網膜の表面しか撮影できない眼底カメラに対し、赤外線を利用することで網膜の断面を可視化できるOCTという機器があるように、症状をより深く正確に割り出せるよう、技術は大きく進歩し続けています。
そうした最新の医療機器の事情を、検査のエキスパートである視能訓練士は常に把握していないといけません。そのために学会等に積極的に参加し、研鑽を重ねることも、視能訓練士の大切な仕事です。
また毎週決まった曜日に視能訓練士が集まって定期カンファレンスや勉強会を開催して、問題点の共有や最新事情の勉強を行う病院もあります。日々検査方針を見直しながら、視能訓練士として常に勉強を続けていかないといけません。
視能訓練士の本分、視能矯正、視能訓練の仕事
眼科には、予約制の視能矯正外来を設けているところがあります。一般外来の場合、先着順に様々な患者さんを順番に検査します。視能矯正外来の場合、予約制で、かつ、患者さん一人に対して視能訓練士が一人、担当としてつきます。
視能矯正にはある程度長い期間が必要なので、必然的に患者さんとは長い付き合いになります。そして、忙しい一般外来と違い、視能矯正外来では、患者さん一人ひとりと、長い時間をかけてゆっくりと向き合います。視能訓練士は効率も重視しながらも、患者さんとしっかりとコミュニケーションをとって検査や矯正訓練を進めていきます。
視能矯正外来にくる患者には、生まれつき弱視の子供など、乳幼児も少なくありません。最初は診察室に入ることすら泣いて嫌がる子供も多くいます。その状態から、ゆっくりと段階を踏んで、長く、継続的に矯正に来てもらうように対応するのも視能訓練士の大事な務めです。
また地域の医療センターでのロービジョンケア(視野欠損などの矯正を行うこと)を担当している視能訓練士もいます。視能矯正は眼科医院だけではなく、医療センター、大学病院、診療所など、様々な施設で行われています。
眼科関連企業で働く視能訓練士も
視能訓練士の中では少数派となりますが、眼科関連企業に勤める視能訓練士もいます。例えば、最新の医療機器の営業職などです。自社製品の営業も兼ねてではありますが、定期的に眼科の視能訓練士に対して、最新の検査機械などの情報提供を行っています。
医療機器メーカーでの営業職にも専門の国家資格を持った人がいるというのは、視能訓練士にとっても医師にとってもとても心強いことです。機械の使い方の説明や適切な設定の指導などアフターケアもしっかり行います。
視能訓練士の仕事のやりがい
現代人にとって最も大切な感覚器である眼を守る仕事
現代を生きる人々にとって何よりも大事な感覚器は眼といっても過言ではありません。IT社会の浸透によって眼はますます酷使される器官となっています。
眼が見えなくなると、生活にはかなりの不便がつきまとうことになります。生まれつき眼が見えない人や、事故等で眼が見えなくなってしまった人の視能矯正を行うのも視能訓練士の主要な役割です。また眼が見える人にとっても、なるべく眼が見えなくなる事態を避けるために、眼科の役割はますます重要になってきています。
大多数の人が眼を酷使しがちな現代社会において、しっかりとした検査を行い、視力矯正や視能矯正を行うことで、人々を救う一助となることができるのが、視能訓練士の最大のやりがいでしょう。
人手不足であり、様々な仕事を任されることのやりがい
視能訓練士は、眼科コメディカルに代わる仕事を任される専門職となってから年月が浅く、まだまだ人手不足の絶えない職業です。そのため、医師しか行うことのできない仕事以外は全て視能訓練士が担当するような場合も少なくありません。
人手不足であることは問題でもありますが、その分責任感も増え、やりがいも生まれます。社会的役割も大きい仕事であることからプレッシャーもありますが、今や視能訓練士がいなくなれば眼科は成り立たないといっていいでしょう。
一度得れば一生活かせる資格、毎日が勉強なのもやりがいを生む
視能訓練士は一度資格を得ると有効期限などはないため、一生ものの資格となります。また、最新医療は日進月歩の世界、視能訓練士が担当する検査も日々進化し、方針も移り変わっていきます。
既存の検査だけでも膨大な種類があるため、その全てを頭に入れておかないといけません。それに加え、最新事情を毎日のように勉強しなければならないため、常に頭を働かせる必要があります。
定期カンファレンスや学会への参加、勉強会を通して常に新しく移り変わり塗り変わる仕事というところも、大きなやりがいといえるでしょう。
視能訓練士の仕事内容まとめ
今後ますます幅広く求められる仕事
現代社会は眼を酷使しないことには生きていけない情報社会となってきています。人々が最も重要視し、酷使する感覚器官を守るために、視能訓練士は重要な立場にいますが、まだまだ人が足りず、かなり大変な仕事です。
視能訓練士の社会的役割はますます大きなものとなっていくでしょう。人によって眼の悩みは様々で、人の数だけやりがいがある仕事でもあり、これからも需要が絶えることはなさそうです。
視能訓練士の参考情報
平均年収 | 350万円~450万円 |
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必要資格 |
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資格区分 | 国家資格 |
職業職種 | 医療 |
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