劇団員の仕事内容とは?やりがいや魅力について解説
劇団員はテレビや映画とは違い、劇場を訪れた観客の前で生の演技を通して感動を与えます。その表現力によって観客に感動を与える劇団員の仕事内容はどのようなものでしょうか。本記事では、劇団員の具体的な仕事内容、仕事のやりがいなどについてご紹介します。
劇団員とはどんな仕事?
ドラマの登場人物になって演技する
劇や戯曲などに表現された物語を「ドラマ」といいますが、劇団員は、特定の劇団に所属し、さまざまなドラマに出てくる登場人物の役を演じることを仕事にしています。
劇団が取り上げる作品は、世界各国の作家によって書かれた物語や、古代から現代に至るいろいろな時代の出来事をモチーフにしたもの、さまざまな職業や年齢の人が登場するもの、空想の世界を描いたファンタジーなど、幅広い内容のものです。
劇団員は、劇団が上演作品として選んだドラマの登場人物の中から役が与えられ、台本に書かれた台詞や動きに従い、その人物になりきって演技をします。テレビや映画などの映像作品への出演とは異なり、劇場の舞台に出演して生で表現をするため、舞台ならではの演技力や表現力も必要となります。
劇団員の仕事をひとことで表すなら「舞台上でドラマの登場人物になりきって、観客の前で演技すること」といえるでしょう。
本番に向けての練習や準備
劇団員の最も中心となる仕事は、劇団の公演に出演し、舞台上で役を演じることですが、配役が決まってすぐに舞台で演技することができるわけではありません。1つの作品の公演を行うためには、さまざまな準備が必要であり、劇団員自身も個人での準備はもちろん、他のメンバーとも協力しながら舞台を作り上げていきます。
与えられた役になりきって演技するためには、登場する場面の台詞を覚えたりその状況について考えたりするだけでなく、その人物の人物像にまで迫る研究を行います。外国の作品なら、その国の人々の国民性からその人物の性格や人柄を考えたり、古い時代の作品なら、時代背景について学んだ上で、場面の状況を判断したりもします。
また、演じる人物の職業について学んで、その人物像を描いたり、場合によっては役柄に合わせて太ったり痩せたり、肉体を鍛えたり、髪形を工夫したりもして、その役の人物になりきるための努力をします。演技に激しい動きがあるときなどは、必要な動きができるようにトレーニングも行います。
公演で取り組む舞台作品づくりには、たくさんのメンバーが関わります。まずは監督や脚本家、そして演出家がおり、 物語や劇づくりの意図にしたがって演技の指示が出されます。また、照明や大道具、小道具、音響スタッフなどの裏方もいたり、演じる出演者も数人から数十人いたりすることもあります。
劇団員は、その全ての人々と協力し合い、たくさんのコミュニケーションを通して、良い上演作品が出来上がるように努めます。
劇団員の具体的な仕事内容
本番に向けての仕事内容
1つの作品の公演内容と配役が決まれば、本番に向けての準備や練習が始まります。その流れは大体次の通りです。
顔合わせから稽古開始まで
まず、その公演に関わる人々が集まって意思統一を図ります。出演者はもちろん、脚本や監督、演出や裏方のスタッフが集まります。主に、このときに台本を渡されます。劇団員は、このときから稽古までの間に各自で台本を読んだり、役作りのための勉強をしたりします。
読み稽古
いよいよ稽古の開始です。最初は、まだ立って演技をせずに、声を出して読むことで台詞になれていく作業です。物語全体の流れや、他の登場人物とのつながりなどを確認しながら進めます。
立ち稽古(シーン稽古)
実際に立って演技をして、シーンごとの演出をつけていきます。1人1人の立ち位置や身体の向きを考えたり、動作などを作ったりしていきます。主にこの作業の繰り返しによって劇を作り上げていきます。
通し稽古
立ち稽古で作り上げた劇を途中で止めずに通してやってみる稽古です。この通し稽古には、その段階によって「粗通し」「スタッフ見せ通し」「衣装付き通し」があります。
「粗通し」は、全てのシーン稽古が一通り終わった段階で行います。全体の流れを把握するのが目的なので、台詞や細かい動きなどを覚えていなくても最後まで通します。
「スタッフ見せ通し」は、舞台監督などのスタッフに、全体の流れを把握してもらうために観てもらうための通し稽古です。「粗通し」と同じように、劇がまだ完全に出来上がっていない状態でも行います。
「衣装付き通し」は、実際に衣装を着て行う通し稽古です。稽古の終盤に、作品がほぼ出来上がってから行います。衣装を着たときの動きにくさなどの問題を確認します。
集中稽古
劇が仕上がってきて、本番が近付いてくると、全員の出演者が欠席することなく、朝から夜まで集中して稽古をします。この期間の長さは劇団によっても違いますが、大体1週間から2週間前後です。この期間はほとんど「衣装付き通し」の通し稽古になります。
本番の仕事内容
予定していた本番に合わせて稽古が進み、劇が仕上がりました。そしていよいよ公演の当日を迎えます。大きな劇団の公演は、数か月間にわたり、昼夜2回本番が行われます。
午後からの公演の場合、朝早く劇場に入り、打ち合わせや衣装を身に付けるといった準備を行います。準備が終わると、舞台で本番さながらのリハーサルが行われます。当日のリハーサルは、本番に向けての最終確認が目的ですが、時にはこの段階で台本が書きかえられることもあります。その場合は、休憩時間を使って台詞を覚えます。
昼食後の本番直前に役柄に合わせたヘアメイクを行い、その役になりきります。1日に2回公演がある場合には、午後の時間帯に1回目の本番があり、その後に夜の公演に向けた打ち合わせを行います。そして軽い食事をとってヘアメイクを整え直すなどして、夜の公演に向かいます。
公演が終わると反省会を行い、借りた会場の場合には「バラシ」といって、会場の片づけを行います。ステージに設置した大道具や小道具等を外したり、楽屋の掃除をしたりします。その後で、メンバーと一緒に打ち上げを行い、リラックスしてお互いに労をねぎらいます。
連日の公演の場合には、次の日の公演に備えて早く帰宅して休み、体調管理にも留意します。どのような役であっても、出演を予定している公演を休むことはできません。体調不良のために出演できないということがないようにきちんと体調をととのえるのも、劇団員にとっては大切な仕事といえるでしょう。
劇団員の仕事のやりがい
役を演じる楽しさを味わうことができる
劇団員や舞台俳優に限らず、テレビや映画で活躍する俳優にもいえることですが、役者と呼ばれる仕事の魅力の1つは、自分以外の人間を演じることができることです。人は通常の生活や人生を通して、自分以外の人間になることはできません。しかし、演劇などのドラマの世界ではいろいろな人物の役を演じることによって、他者の人生を生きることもできます。
歴史の教科書でしか知らない時代や、地図でしか知らない国、作家の空想の世界で生まれた人物になりきるために役作りを考えたり、実際に演じたりするのは決して簡単にできることではありません。
しかし、時代背景やその国の人柄などについてさまざまな知識を学び、自分なりに研究を重ねた上で演技力や表現力を身に付け、その能力を最大限に発揮して演じるのは、劇団員の仕事の醍醐味といえるでしょう。
劇団四季や宝塚歌劇団では、1つの作品の公演が長期間行われます。長い間1つの役を演じ続けることによって、演技に深みが増し、劇団員としての能力も高まっていきます。その役に没頭し、自分の能力を生かして役を演じ続けることこそ、劇団員の仕事の一番大きなやりがいということができるでしょう。
また、劇団員としての経験を積むことによって、数多くの作品に出演し、演技経験の幅も広がります。劇団員の仕事には定年はないので、さまざまな作品に出演しながら、その時その時の自分の年齢に合わせた役を演じ、役者としての能力の高まりを目指し続けることができるのも、劇団員の仕事の魅力ということができるでしょう。
観客との一体感を味わうことが出来る
舞台で上演される演劇は、テレビや映画などの映像を通して物語を届けるのとは違い、劇場に足を運んできた観客の目の前で、生でそのドラマを表現します。
劇場では、演技に対する観客の反応がすぐに舞台に届いてきます。素晴らしい演技に対する大きな拍手や、心が動かされる場面で涙を流しながら観ている姿によって、舞台で演じる劇団員も演技に熱が入り、稽古の時以上にその能力が引き出され、そのドラマがより感動的な作品になっていきます。
劇場の舞台作品は、まさに観客との共同作業によって完成すると言っても過言ではありません。観客の目の前で演技に対する反応を直接受け取り、その反応から力をもらって演じることができるのも、劇団員にとっては大きなやりがいといえるでしょう。
劇団員の仕事内容まとめ
ドラマの登場人物になりきってよりよい演技をするために励み続ける
劇団員は、劇場の舞台でドラマの登場人物の役を演じるのが仕事です。観客にそのドラマの感動や面白さを伝えるために、いろいろと勉強したり、身体づくりをしたりして役作りに取り組み、繰り返し稽古を行って、公演の本番を迎えます。
本番の舞台では、観客の反応を直接受け取りながら演技を行い、劇団員としての能力を最大限に発揮して、観客をその舞台作品のドラマの世界へと誘っていくのです。
劇団員の参考情報
平均年収 | 200万円〜500万円 |
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必要資格 | 必要資格なし |
資格区分 | - |
職業職種 | 芸能 |
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