手話通訳士の仕事内容とは?やりがいや魅力について解説
手話通訳士ときいて真っ先に思い浮かべるのは、テレビの政見放送などの政治関連番組などで画面の片隅に移る映像を通して瞬時に手話で通訳する姿でしょう。そこに映っている手話通訳者は、日常的にはどのような仕事をしているのでしょうか。
手話通訳士の仕事内容
社会福祉関連の仕事の1つとして担っている場合が多い
手話通訳士は「手話」を用いて聴覚に障害のある人と健常者とのコミュニケーションを助けたり、公的な場で語られている内容を瞬時に通訳したりする役目を担う職業です。
高度なスキルを必要とする「手話通訳士」は、厚生労働省が認定する「手話通訳技能認定試験」に合格した人が名乗ることができる職名です。
手話関連の仕事は、都道府県によって認定された「手話通訳者」が行うこともできますが、裁判や警察、選挙関連などの公的な場での仕事は「手話通訳士」のみによって担われます。
手話通訳士が勤務する職場/h3>
社会福祉関連の職場
手話通訳士がおもに勤務している職場として、区役所や市役所などの行政機関、聴覚障害者関連施設や社会福祉協議会、各種老人ホームなどの社会福祉施設、福祉機器関連会社やデイサービスセンター、医療系などの一般企業、病院などの医療機関などが挙げられます。
いずれも、手話通訳の仕事を専任で行うのではなく、社会福祉関連の業務に携わりながら、必要に応じて手話通訳の仕事を担っています。
登録や派遣によって仕事を得る
「手話通訳士」及び「手話通訳者」は、認定試験に合格したり、認定試験を受講したりすることで資格が認定され、国や都道府県に登録されます。手話通訳の仕事が必要な場合にこれらの公的な仕事の依頼を受けて職務にあたることになります。
また、福祉関連の人材派遣会社に登録し、その派遣会社から仕事の依頼を受けて職務にあたることもあります。
いずれにしても、特殊な技能を用いて行う仕事なので、一般の求人情報で仕事を探すことは難しく、手話の技能を生かして仕事をしたいのであれば、資格の認定を受けて公的な機関や専門の派遣会社に登録することが必要です。
接客関連でも伸びつつある需要
昨今、身体の機能に障害を持つ人の社会参加を促す動きが活発になり、建物の構造などのハード面だけでなく、サービスなどのソフト面でもバリアフリー対策に力を入れる職場も少しずつ増えてきています。このような流れの中で、手話ができるスタッフの需要も伸びつつあるようです。
たとえば、聴覚障害支援学校の近くにあるファストフード店、百貨店や大型ショッピングモールのサービスカウンターなど、手話でのコミュニケーションができるスタッフを置くことで、サービスの向上が図られたり、福祉に力を入れている企業としてイメージアップにもつながったりできるという理由で、手話ができる人を採用するケースも増えてきています。
手話通訳士の具体的な仕事内容
手話通訳をする際の仕事の流れ
手話通訳は、講演会や研修会などのイベント・裁判や選挙関連の演説会などの公的な場で行われます。その場で語られることを適切に通訳するためには、手話通訳の技術だけでなく、その会やイベントの趣旨や主な内容についても理解しておくことが大切です。
手話通訳を行う日には、少なくとも1時間前には会場に入り、主催者や講演者と内容についての打ち合わせを行います。語り手が伝えようとすることを正確に通訳するためにも、予めその内容を理解するための打ち合わせは,大切な仕事です。
いよいよ研修や講演などのイベントでの手話通訳が始まります。1人の手話通訳者が集中して手話通訳できるのは、30分が目安とされています。
研修や講演、演説などは短くとも1時間以上、長い場合は1日がかりということもありますので、少なくとも2人以上の手話通訳士や手話通訳者が担当します。ほとんどの場合、20分程度で交替しながら手話通訳を行います。
長時間の研修会や会議などで手話通訳をする場合には、お昼休憩をはさんで午後の仕事が行われます。手話通訳は身体を大きく動かして行う業務なので、休憩時間に十分な休養を取ることも必要です。そのため休憩時間には午後の仕事を良いコンディションで行うためにも、昼食をしっかり食べ、身体を休めます。
1日の仕事が終われば、帰宅をしてその日の仕事を振り返ります。派遣先によっては業務の報告が義務付けられている場合もあるので、必要に応じて、帰宅後にその報告を行います。1日の仕事を振り返る中で、専門用語などを確認するなどして、自身のスキルアップにつなげるための復習も行います。
手話通訳士の仕事のやりがい
人の役に立つ喜びとコミュニケーションの楽しさが味わえる
手話通訳の仕事は、聴覚に障害を持つ人と健常者のコミュニケーションの架け橋になるというのが最も大きな役割だといえるでしょう。手話通訳をできる人がいるおかげで、聴覚に障害がある人も自分の思いを人に伝えたり、研修会や講演会などに参加して、さまざまな学びの体験をしたりすることができます。
聴覚に障害がある人の社会参加を助けるという役割を担うことで、人の役に立っているという実感を味わうことができる仕事です。また、直接人に関わる仕事なので、相手の反応を瞬時に、直接受け取ることができます。
自分の手話通訳を見て聴覚に障害がある人がうなずくといったような反応を直接目の前で見ることができるので、そういった場面でもやりがいを感じられる職業といえるでしょう。
また、手話はコミュニケーションを目的とする言語の1つです。手話ができるおかげで自分自身が聴覚に障害のある人と円滑に会話ができることで、相手はもちろん、自分自身も自由に語り合う楽しさを味わうことができます。
日常会話ができる手話のレベルだけではなく、高いスキルを持った手話通訳士だからこそ行うことができる深いレベルでのコミュニケーションや、通訳を必要とする人同士の対話を助けることができるのも、手話通訳士ならではの仕事のやりがいの1つです。
様々な人や分野と出会い学ぶことができる
手話通訳士は、公的な場での手話通訳を行う機会がたくさんあります。そのため、さまざまな分野で活躍する人の講座や講演、研修会の仕事に携わることも多くあります。そのような著名な方々と一緒に仕事ができることも、手話通訳士の仕事のやりがいの1つでしょう。
専門的な内容が語られることの多い研修会や講習会などで適切に手話通訳するためには、専門的な知識や理解が求められます。そのニーズに応えるためには、依頼された仕事に関わる分野について学ぶ必要も出てきますが、それによって知識や教養の範囲を広げることも可能です。
自分自身の知識の範囲が広がることによって、仕事や人の役に立てる場面や機会を大きく広げていくことができるのです。
これからますます広がる手話通訳士のニーズ
現在は残念ながら、手話通訳士や手話通訳者に対する求人や募集は、まだまだ多いとはいえません。しかし、一部ではありますが、銀行や商業施設、観光分野などで手話ができる人材への需要は少しずつ高まってきています。障害者の社会参加を促すバリアフリー化が進む中で、手話ができる人材を求める動きも、少しずつ高まってきています。
また、民間で行われるイベントでも手話通訳を用意して、聴覚に障害を持つ人が参加できるようにする場も増えてきています。身近なイベント会場で手話通訳者がステージの傍らに立って手話通訳しているのを見たことがあるという人も増えてきているでしょう。
今はまだ、ごく限られた場でしか活用されていない手話通訳の仕事ですし、手話通訳士や手話通訳者など,有資格者として登録されている人は、需要に応える形で赴くことが多い現状です。
しかし、手話通訳が必要とされている職場は、まだまだ開拓の余地があると思われます。手話通訳の高い技術を持つ手話通訳士が、聴覚に障害のある人々のニーズの把握に努めながら、新たな活動の場を開拓していくことをやりがいとする場合があるかもしれません。
手話通訳士の仕事内容のまとめ
手話だけでなく幅広い知識やキャリアを用いて業務にあたる手話通訳者
手話通訳士の主な役割は、手話を用いて聴覚障害者と健常者のコミュニケーションの架け橋となることですが、通訳が求められる分野は多岐にわたっています。
また、社会福祉の分野での仕事でもあるので、福祉関連のキャリアも必要です。そのため、手話通訳士の仕事はさまざまな場で行われることが多く、幅広い知識や高いスキルが必要です。
手話通訳士の参考情報
平均年収 | 200万円~350万円 |
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必要資格 |
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資格区分 | 公的資格 |
職業職種 | 心理・福祉・リハビリ |
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