自衛隊の資格や試験内容とは?自衛隊入隊の試験と条件について解説
自衛隊に入るために特別な資格は求められませんが、入隊後は様々な資格を無料で取得することが可能になります。中にはそれが目的で自衛官になったという人もいるほど。今回はこの記事の中で、自衛隊内で取得できる資格の種類と試験の概要についてご紹介します。
自衛隊に入るために必要な資格
自衛隊は国家公務員ですから、入隊のために沢山の資格が必要なイメージがあります。ですが、実際のところ自衛官になるのに特別な資格は必要ありません。
ただ、年齢が18歳以上27歳未満という年齢制限はあります。試験の際には身体検査と基礎的な学力を見るための筆記試験、面接がなされます。
自衛隊には陸上、海上、航空の3部隊があり、自分がどこを志願したか、どんな職種を希望したかによっても多少の違いがあります。
自衛隊では幾つもの資格取得が可能
自衛隊に入るために特別な資格が必要ではないにしても、実際に入隊してから幾つもの役立つ資格や免許を所得することができます。
しかも無料で資格を取れ、その間も自衛隊の給料は発生するので何ともお得なシステムです。自衛隊としては自衛官にあらゆる資格を取得してもらい、即戦力になってほしいということなのです。
では実際にどんな資格や免許がとれるのか、部隊別に紹介します。
陸上自衛隊で取得できる資格
まずは陸上自衛隊に所属する自衛官が取得できる資格です。
所属する科 | 取得できる資格 |
---|---|
航空科 | パイロット免許 |
機甲科 | 大型運転免許、特殊車両運転免許、自動車整備士 |
通信科 | 大型運転免許、牽引運転免許 |
化学科 | 化学作業主任、公害防止管理者 |
施設科 | 電気工事主任技術者、電気事業設備主任、測量士、建築士、特殊車両運転免許、自動車整備士、大型・大型特殊運転免許 |
衛生科 | 看護師、歯科技工士、臨床検査技師、X線技師 |
特科 | 大型運転免許、牽引運転免許、クレーン免許、危険物取扱主任 |
需品科 | 大型/大型特殊運転免許、牽引運転免許、フォークリフト免許 |
武器科 | 危険物取扱主任、火薬類取扱保安責任者 |
会計科 | 税理士 |
かなり実用的な資格も多く、もし自衛隊を辞めたとしても再就職に役立つような資格が揃っています。
海上自衛官で取得できる資格
次に海上自衛隊に所属する自衛官が取得できる資格です。
所属する科 | 取得できる資格 |
---|---|
航海・船舶科 | 4級海技士、4級小型船舶操縦士、クレーン操縦士 |
射撃科 | 乙種危険物取扱責任者、乙種火薬類取扱責任者、4級小型船舶操縦士 |
水雷科 | 4級小型船舶操縦士、危険物取扱者、火薬類取扱保安責任者 |
機関科 | 1・2級ボイラー技師、ボイラー整備士、公害防止管理者、機関4級海技士(内燃)、高圧ガス製造保安責任者(乙種機械)、電気工事士、高圧ガス取扱責任者 |
船舶整備科 | 工事担当者アナログ第1種、第2種電機工事士、第3種電気主任技術者、危険物乙種4類、第3種冷凍機、消防設備士乙種4類、2級ボイラー技士、特殊無線技士、第1級陸上特殊無線技士、第1級/第2級陸上無線技術士 |
航空科 | パイロット免許 |
航空管制科 | 丙種陸上無線通信士、航空無線通信士、航空交通管制基礎試験合格証明書、航空交通管制技能試験証明書4種類 |
航空機整備科 | 危険物取扱主任、JIS溶接/ガス溶接技術者、非破壊検査技術者、電気工事士、電気主任技術者、情報処理技術者、高圧ガス製造保安責任者、火薬類取扱保安責任者、大型運転免許、牽引免許、フォークリフト免許 |
潜水科 | 潜水士免許 |
掃海機雷科 | 4級小型船舶操縦士、火薬類取扱責任者、クレーン免許、フォークリフト免許 |
補給科 | 危険物乙種4類、大型特殊運転免許 |
衛生科 | 準看護師、看護師、救急救命士、臨床検査技師、診療放射線技師、理学療法士 |
気象海洋科 | 気象予報士、測量士補 |
経理科 | ワープロ検定、2・3級筆記検定 |
他の部隊と比べても特殊な資格が多いと言われている海上自衛隊。
とはいっても役立つ資格ばかりで、取得していても損のない資格が揃っています。金銭的にも負担なく取得できるのであれば、こんなに嬉しいことはないでしょう。
航空自衛隊で取得できる資格
最後に航空自衛隊に所属する自衛官が取得できる資格です。
所属する科 | 取得できる資格 |
---|---|
飛行科 | パイロット免許 |
整備科 | 2級・3級自動車整備士、甲種・乙種危険物取扱者、危険物取扱主任、高圧ガス取扱主任、移動車両クレーン運転免許、ガス・電気取扱主任、電気工事士、第3種電気事業主任技術者、大型特殊運転免許 |
武装科 | 火薬類取扱保安責任者、乙種機械責任者、大型運転免許、特殊無線技士、第3種冷凍機械責任者、危険物取扱責任者 |
高射運用科 | 大型運転免許、牽引運転免許、クレーン免許、危険物取扱主任、特殊無線技士 |
航空・要撃管制科 | 航空交通管制職員基礎試験、航空無線通信士、航空交通管制技能証明書、情報処理技術者、大型運転免許 |
通信電子科 | 無線通信士技士、国内通信級陸上特殊無線技士、アナログ1~3種、デジタル1種/2種、第1級/第2級陸上無線技術士、第1級陸上特殊無線技士、第1種・第2種情報処理技術者、第1級~第4級アマチュア無線技士、大型運転免許、牽引運転免許 |
プログラム科 | 第1種/第2種情報処理技術者、データベース検索技術者、マイクロコンピュータ利用者設定、日商ワープロ技能検定 |
気象科 | 第1級・第2級陸上無線技術士、特殊無線技士、第3種電気主任技術者、大型運転免許 |
衛生科 | 看護師、臨床検査技師、診療放射線技師、理学療法士、歯科技工士、救急救命士 |
警備科 | 大型運転免許 |
補給科 | 大型/大型特殊運転免許、牽引運転免許、乙種機械主任者免許(高圧ガス) |
施設科 | 1種・2種電機工事士、第3種電気主任技術者、危険物取扱主任者、1級・2級・特級ボイラー技士、ボイラー整備士、危険物取扱者乙4類、ガス・アーク溶接技能士、消防整備士、防火管理者、消防設備点検資格者、大型特殊運転免許、測量士、建築士、第3種冷凍機械主任技術者、配管技術管理者、大型運転免許、牽引運転免許、大型第1種自動車運転免許、クレーン運転免許 |
かなり多くの資格が取得できると言われている航空自衛隊。
初めからこのような資格を所持していれば、試験にも受かりやすく、入隊後にすぐに活躍できることは間違いないですが、ほとんどが入隊後に自衛官の仕事を果たしながら資格取得に励むようです。
資格保持は転職、再就職に有利
せっかく自衛隊に入っても、様々な理由で自衛隊を辞め、転職を考える人もいます。人間関係が辛い、仕事がハードすぎてついていけない、規律が厳しすぎるなど人によって適正不適正があるでしょう。
ですが、自衛官たちは自衛隊に所属している間に幾つもの資格を取得しているので、転職や再就職にかなり有利だと言われているのです。職種によっては転職先でも生かせるスキルが多いと転職後の生活も安定させることができます。
例えば、陸上自衛官が必ず取ると言われる大型免許はもちろん、技術系の資格は持っていても無駄にはなりません。陸・海・空自衛隊で取得できる資格に差はありますが、3つの部隊で共通している資格、大型運転免許、牽引運転免許、クレーン免許、危険物取扱主任は運輸系の転職に有利と言われています。
電気工事士や電気主任技術者の資格があれば、電気・通建業界の転職に有利ですし、調理師免許があれば飲食・サービス業界の仕事に就きやすくなります。
自衛隊採用試験の種類と条件
中学卒業、もしくは高校卒業と同時に自衛隊の採用試験を受けるのであれば、様々な選択肢があります。
どんな仕事をしたいか、どんな自衛官を目指しているのかということで試験内容も抑える条件も異なりますから、目標をはっきりさせた上での事前の確認が必要です。
一般曹候補生採用試験
試験の応募資格は、一つに日本国籍を有すること。採用予定月の1日現在、18歳以上27歳未満であること。
試験は年に一回の実施になっています。
自衛官候補生採用試験
試験の応募資格は、日本国籍を有すること。採用予定月の1日現在、18歳以上27歳未満であること。
男性自衛官候補生は通年募集していますが、女性の場合は毎年8~9月にかけて募集があります。この時期を逃すとまた来年ということになるので、計画をきちんと練るべきでしょう。
防衛大学校採用試験
試験の応募資格は、日本国籍を有すること。受験年の4月1日時点で、18歳以上21歳未満であること。合格した場合に必ず入学するという確約が必須。
試験会場は第1次試験が全国主要都市、第2次試験が防衛大学校にて実施されています。
防衛医科大学医学科学生採用試験
試験の応募資格は、日本国籍を有すること。高等学校卒業(卒業見込みも可)21歳未満であること。
試験は年1回の実施のみ。入学時期は例年4月で、6年間の全寮制生活で医師免許取得を目指すことになります。
防衛医科大学校 看護学科学生採用試験
試験の応募資格は、日本国籍を有すること。高等学校卒業(卒業見込みも可)21歳未満であること。
人員募集は毎年9月に行われ、年に1回です。合格した者は自衛官候補看護学生として入校し、校内の学生舎にて生活しながら4年間かけて勉強することになります。
航空学生採用試験
試験の応募資格は、日本国籍を有すること。高校卒業もしくは中等教育学校卒業者、高専3年修了者(各卒業見込みも可)と同等以上の学力があると認められる男女であること。
人員募集は、毎年7月から9月に行われ、年に1回です。
自衛隊採用試験の内容
自衛隊の試験ではいったいどんなことが行われるのでしょうか?
職種の違いによって試験の種類も異なり、内容が異なります。内容を良く把握していれば、合格への近道ともなりますのでチェックしておきましょう。
一般曹候補生採用試験の内容
一般曹候補生採用試験は2段階で行われます。1次試験では筆記が課題で、高卒レベルの国語総合、数学I、コミュニケーション英語Iの700字程度の作文ならびに適性検査が行われます。
それをパスした人だけが、口述試験と身体検査の2次試験に通れます。特に気をつけなければならないのは、身体検査の基準の中で身長基準というものがあり、男性は155cm以上、女性は150cm以上の身長が条件などの自分では努力しようのないものもあるので、その場合にはどんなに成績が良くても受かることはできません。
自衛官候補生採用試験の内容
自衛官候補生採用試験は、国語、数学、社会、作文の筆記試験と口述試験、身体検査があります。
これをパスできれば、採用候補者名簿記載通知書が送付され、女性は3月下旬から4月上旬、男性は随時採用の日から自衛官候補生に任命されることになります。
防衛大学校採用試験の内容
防衛大学校採用試験は募集種目(推薦、総合選抜、一般前期、一般後期)によって異なります。ですが内容はほぼ同じで、筆記試験と口述試験、身体検査が伴います。
一般前期採用試験の概要
一般試験は前期と後期に分かれていますが、専攻しているものの違いによっても試験内容が異なります。
前期の場合、人文・社会科学専攻者は、英語、国語、および数学・社会から選択式の1科目の試験。理工学専攻者は、英語、数学、および物理・化学から選択式の1科目の試験。
そののち第2次試験に進んだ人だけ、口述試験と身体検査を受けます。
一般後期採用試験の概要
人文・社会科学専攻者、理工学専攻者、両者とも英語、数学、国語の筆記試験を受けます。第2次試験に進んだ人は、口述試験と身体検査をパスすれば合格確定です。
防衛医科大学医学科学生採用試験の内容
防衛医科大学医学科学生採用試験の第1次では、国語、数学、英語、理科の筆記試験が行われます。それをパスした人は2次試験に進み、口述試験と小論文、そして身体検査を受けます。
防衛医科大学校 看護学科学生採用試験の内容
防衛医科大学校 看護学科学生採用試験は、他のものと同じように2段階の試験があります。1次試験では、高校卒業レベルの国語、数学、理科(物理・化学・生物から1科目を選択)、英語、作文の試験を受けます。
それを通過した人は2次試験に進み、口述試験と身体検査に進むことになります。
航空学生採用試験の内容
航空学生採用試験は、高校卒業レベルの国語、数学、英語、また地理歴史・公民・理科から選択の1科目と同時に適性検査があります。2次試験に進んだ人には、口述試験と航空身体検査があり、通過者は最終の3次試験の受験資格を得られます。
最終試験では、海上自衛隊であるなら航空身体検査の一部、航空自衛隊であるなら操縦適性検査をパスしなければなりません。もしこの試験に合格すれば採用ということになり、航空学生として2年間の基礎教育を受け、操縦課程に進んでいくことになります。
自衛隊の試験に合格する秘訣
どんな人でも試験を受けるとなれば緊張するものですが、いくつかのコツと秘訣を抑えていれば、合格する確率はかなりアップします。それは自衛隊の試験といえども同じことです。
人それぞれ合格のための秘訣やポイントは異なるかもしれませんが、今回は代表的なものを紹介しています。
簡単だと思わない
一言でいうと、自衛隊の試験を舐めてはならないということです。当たり前のことですが、そうできない人がいるのも事実。周りの噂で自衛隊は簡単に受かるという話を真に受けて試験を受ける人もいますが、世の中そんなに甘いものではありません。
確かに公務員を目指している人の中では、警察官や消防隊、教員などよりも自衛隊の試験のほうが簡単だという話もありますが、楽をして受かろうとするとどこかでぼろが出てしまうものです。筆記試験は受かっても面接で落とされるとか、何かの条件が満たせないとか。
真剣に自衛隊の試験に向き合い、コツコツ努力する人だけが最後に評価されるのです。
必要条件を全て把握しておく
自衛隊に入るためには幾つかの条件があります。それは希望している職種によって変化がありますが、専門的な職種であれば資格を要するのは当然です。
大抵は必要な条件を満たしてから試験を受けるので条件の見落としはないはずですが、どうも忘れがちなのが身体的な条件。どんなに学力のレベルを上げても身体的、体力的な条件も満たしていなければ、あっさり落ちます。
職種によっては身長、体重、視力などに細かく規定があり、一つでも満たしていないと不合格になってしまいます。意外に多いのが視力の基準を満たせないというもの。こればかりはどうしようもないので、試験のために時間を費やす前に、すべての必要条件を必ず把握しておきましょう。
明確な目的意識を持つ
どんな仕事でもそうですが、なんとなく曖昧な気持ちで受けた試験は必ず落ちます。そんな気持ちでは一生懸命勉強せず結果がついてきませんし、試験官にも真剣な気持ちが伝わらないからです。
将来のことがまだ漠然としている若者の中には、周りが受けているからとか、勧められたから、かっこよく見えるからなどの理由で自衛隊試験を受ける人もいますが、仮にそれで受かったとしてもそのモチベーションで自衛官として長期間働いていくことは難しいでしょう。
この仕事がしたい、この資格を取りたいなどの明確な目標を持つとそれに向かって努力しますから、自ずと結果もついてくるはずです。
自衛隊の資格と試験についてのまとめ
基本的に自衛隊に入るためには特別な資格を有するわけではありませんが、自分の最終学歴と希望している職種、部隊によってアプローチ方法は異なります。中には細かく条件が決められているものもあるので、事前にチェックしておくことが必要でしょう。
また自衛隊に入るための試験も種類が多く、年に一度しか試験が行なわれていないものも少なくありません。逃してしまえばまた1年待たなければならない羽目になりますので、日程と試験会場、必要科目などの確認は必須です。
自衛隊のメリットは、仕事に必要な資格を無料で取得できるということ。通常なら、転職にも役立つような資格を何万もの自腹を切って取得するわけですが、仕事に必要なものだとはいえ、給料をもらいながら無料で資格がとれるのはありがたいことです。
自衛官は国家公務員ですからとても人気の職業です。軽い気持ちでは受かるものではなく、続けていけるものでもありません。ですが、自衛官になりたいという強い意志と明確な目標があれば、必ず自衛官へのチャンスは開かれるはずです。
自衛隊の参考情報
平均年収 | 400万円~900万円 |
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必要資格 |
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資格区分 | 試験合格 |
職業職種 | 保安 |
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