愛玩動物看護師の仕事内容は？1日のスケジュール・やりがい・魅力などを解説
愛玩動物看護師とは、令和4年に国家資格となった新しい職業です。ペットの家族化や医療の高度化により、今後もペット医療は需要の高まりが見込まれています。本記事では、愛玩動物看護師の仕事内容や1日のスケジュール、やりがいなどを紹介します。
愛玩動物看護師はどんな仕事？
新しく国家資格になる愛玩動物看護師ですが、いったいどのような仕事なのでしょうか。まずはじめに、愛玩動物看護師の主な仕事内容などについて確認してきましょう。
動物診療の補助や看護をする仕事
愛玩動物看護師における最も大きな役割が、動物診療の補助や看護です。
動物の保定や獣医師の指示による採血や採尿、投薬、検査などの診療サポートや、入院する動物の看護・世話などをします。特に、動物診療の補助は愛玩動物看護師のみが行える独占業務となります。
その他、飼い主とのコミュニケーションや飼養の助言などを行うのも、愛玩動物看護師の業務となります。
愛玩動物看護師ができた経緯
愛玩動物看護師ができた経緯は次のとおりです。
- 獣医療の内容が高度化・多様化したこと
- 犬や猫の飼養頭数が、15歳未満人口を上回るほど増加していること（約1,900万頭）
- 動物を介在した福祉・教育の諸活動への期待
近年では、ペットは家族の一員であるという考え方が一般的になっています。そのため、必要とされる獣医療が高度化・多様化してきました。
そこで、診療現場のチームでの獣医療で重要な役割を担うために、動物看護師の業務範囲を広げて愛玩動物看護師が国家資格化されました。
近年、自宅で犬や猫などの愛玩動物を飼育している家庭が多く、その数は約1,900万頭ともいわれています。飼い主による健康管理やしつけが重要視されており、愛玩動物看護師は助言・指導ができる役割を果たすことも期待されています。
動物に触れあうセラピーや教育などの活動を広げることも、愛玩動物看護師ができた経緯の1つです。
愛玩動物看護師の具体的な仕事内容
- 愛玩動物の診療の補助（独占業務）
- 愛玩動物の世話やその他の看護
- 愛玩動物の愛護や適正な飼養に係る助言・支援
愛玩動物の診療の補助（独占業務）
愛玩動物看護師のメインの業務となるのが、愛玩動物の診察の補助です。
愛玩動物の診療の補助とは、次のことを指します。
「愛玩動物看護師」とは、農林水産大臣及び環境大臣の免許を受けて、愛玩動物看護師の名称を用いて、診療の補助（愛玩動物に対する診療（獣医師法第十七条に規定する診療をいう。）の一環として行われる衛生上の危害を生ずるおそれが少ないと認められる行為であって、獣医師の指示の下に行われるものをいう。
具体的には、動物の保定や採血・採尿・投薬、マイクロチップ挿入、血液検査・尿検査のほか、病状・治療内容・検査の結果を飼い主へ説明します。
これまでは獣医師にのみ認められていた診療行為の一部を、獣医師の指示のもと愛玩動物看護師ができるなど本格的なサポートが可能になります。
また、診療の補助は愛玩動物看護師のみ実施可能な独占業務となります。
愛玩動物の世話やその他の看護
愛玩動物の世話や看護なども、愛玩動物看護師の業務です。
愛玩動物の世話その他の看護とは、次のことを指します。
- 入院動物の世話
- 診断を伴わない検査
具体的には、入院している動物のケアや健康管理、体温や脈拍の測定、カルテ管理などを行います。
愛玩動物の愛護や適正な飼養に係る助言・支援
愛玩動物の愛護・適正な飼養に係る助言その他の支援にあたるのは、次のような業務です。
- 動物の日常の手入れに関する指導・助言（グルーミング、爪切り、歯磨き等）
- 人と動物の共生に必要な基本的なしつけ（適切な社会化を促すための教室の開催）
- 動物介在教育（AAE）への支援（小学校等を訪問し学習活動をサポート）
- 動物介在活動（AAA）への支援（高齢者施設等でのセラピー活動）
- 動物飼養困難者（高齢者等）への飼育支援（家庭訪問、電話等で飼育に関する助言）
- 災害発生時の被災動物適正飼養の為の支援（地方自治体との連携協力）
- 動物のライフステージに合わせた栄養管理（ペットショップ等での食事相談） など
参考リンク：愛玩動物看護師の業務範囲の考え方（イメージ）
動物のお手入れ方法やしつけ方の教育、動物介在教育または活用への支援など、幅広い業務に携わります。
一般的な動物病院に勤務する愛玩動物看護師の1日のスケジュール
愛玩動物看護師として1日のスケジュールは、勤務先によって異なります。ここでは、一般的な動物病院に勤務する場合の1日のスケジュールを紹介します。
※（2022年10月）現在、愛玩動物看護師の国家資格を取得した人がいないため、動物看護師の1日のスケジュールを参考に紹介しています。
| 8:00 | 出勤 |
|---|---|
| 9:00 | 午前の診察開始・診療補助、受付業務 |
| 10:00 | 問い合わせへの対応 |
| 13:00 | 昼休憩（遅番の出勤） |
| 16:00 | 午後の診察開始・診療補助、受付業務（早番退勤） |
| 17:00 | 飼い主のケア・コミュニケーション |
| 20:00 | 診察時間終了 |
| 20:30 | 帰宅 |
8:00 出勤
一般的な動物病院は、午前診療と午後診療の2部制を採用しているケースがほとんどです。そのため、朝に出勤して夕方以降に帰宅するパターンが多いといえます。
出勤後は、白衣に着替えて診療に向けての準備をします。病院前の掃き掃除や待合室内の掃除など、患者のペットと飼い主を迎える準備を整えます。
9:00 午前の診察開始・診療補助、受付業務
午前の診察時間になったら、次々とペットと飼い主が診察に訪れます。
受付対応では診察券を預かり、診察順にカルテの準備、問診票の説明などを行います。同時に、動物の保定や体温の測定、指示に従い採血や採尿など、診察中の獣医師の補助に入ります。
また、診察後には会計対応や処方する薬の説明などを行い、患者と飼い主を見送ります。
10:00 問い合わせへの対応
受付対応や診察の補助などを行っている間に、電話などの問い合わせにも対応します。
電話の相手は、ペットの不調を訴えていて不安になっているケースが多いため、冷静かつ丁寧な対応で安心感を与えられるよう意識します。
13:00 昼休憩（遅番の出勤）
午前中の診察が終わると昼休憩に入ります。
一般的な動物病院では、午前の診察と午後の診察の間に数時間の閉院時間を挟むことが多い傾向にあります。
午前中に診察したペットのカルテの整理を行うなどして、午後からの診察に備えます。
16:00 午後の診察開始・診療補助、受付業務（早番退勤）
午後の診察時間は、午前が受付業務なら午後は診察の補助を担当、午前が診察補助なら午後からは受付業務といったように、午前の担当と交代するケースもあります。
また、早番・遅番の2交代制を採用する動物病院では、遅番のスタッフに引継ぎをして退勤する場合もあります。
午後からのみ予約診療に対応する動物病院もあるため、診察順が前後しないように注意しながら患者の診察を行っていきます。
17:00 飼い主のケア・コミュニケーション
患者のペットに採血や点滴など、時間を要する治療を行う場合は、飼い主とコミュニケーションを取るよう意識します。
飼い主の心配点やペットの様子、家での対応方法など、会話を通じて飼い主の不安を取り除くことが大切です。
また、動物病院を再度利用してもらえるよう、和やかな雰囲気づくりを心がけることも重要になります。
20:00 診察時間終了
最後の患者と飼い主が帰ったら、閉院のための片付けを行います。院内の清掃やカルテの整理などを行い、明日の診察に備えます。
20:30 帰宅
片付けが完了したら勤務終了です。
大学の動物病院に勤務する愛玩動物看護師の1日のスケジュール
次に、大学の動物病院に勤務する場合の1日のスケジュールを見てみましょう。
※（2022年10月）現在、愛玩動物看護師の国家資格を取得した人がいないため、動物看護師の1日のスケジュールを参考に紹介しています。
| 14:30 | 出勤 |
|---|---|
| 15:00 | 検査の補助 |
| 16:30 | 入院動物の看護 |
| 18:30 | 休憩 |
| 19:30 | 手術の補助 |
| 22:30 | 退勤 |
14:30 出勤
大学付属の動物病院や24時間対応の動物病院ではシフト制が採用されているケースが多く、愛玩動物看護師として勤務する場合は夜勤になることもあります。
遅番の出勤の場合、昼下がりに出勤します。白衣に着替えて純部を整え、早番スタッフから業務の引継ぎなどを行ってから1日の仕事がスタートします。
特に大学付属の動物病院の場合、勤務しているスタッフの数が多いケースもあり、それぞれと情報を共有しながら連携して業務に当たることが大切です。
15:00 検査の補助
規模の大きな動物病院では、さまざまな種類の動物が診察に訪れます。
また、検査が実施される場合も多く、尿検査や糞便検査、血液検査のための採血など、獣医師の補助として目まぐるしく対応します。
状況によってはレントゲン撮影が必要なケースもあり、動物の保定のほか、撮影後のフィルム現像を行うこともあります。
16:30 入院動物の看護
診察の合間を縫って、大学病院に入院している動物たちの様子を確認します。
変化が見られた場合はカルテへの記入や獣医師への報告で対応し、動物の治療の手伝いや食事の世話を行うこともあります。
18:30 休憩
休憩時間中にほかのスタッフと情報交換をすることもあります。別途、引継ぎ事項がないかなども確認しましょう。
19:30 手術の補助
手術の予定がある場合は、獣医師の助手として手術に参画することもあります。
獣医師の指示に従って器具の授受を行ったり、出血部部分をガーゼで拭ったりするなど、迅速な手術のためのサポートに付きます。
22:30 退勤
夜勤スタッフへ引継ぎをして、1日の業務が終了します。
愛玩動物看護師の勤務先の一例
近年では、ペットビジネスが多様化していることから、愛玩動物看護師の勤務先の選択肢も幅広くなっています。
ここでは、愛玩動物看護師の国家資格取得後の勤務先を解説します。勤務先の一例は次のとおりです。
- 動物病院
- ペットショップ
- ペットホテル
- しつけ教室
- ペットケアホーム
動物病院
愛玩動物看護師の勤務先として、最も選ばれやすいのが動物病院です。
大手企業が運営する動物病院や大学付属の動物病院、個人が運営する動物病院など、動物病院にもさまざまな種類があります。
特に規模の大きな動物病院では、認定動物看護師の資格を取得していることが応募条件となっている場合が多く、資格取得者を優遇しやすい傾向にあります。
今後は、愛玩動物看護師の資格を持っていなければ採用されにくくなる可能性もあるでしょう。
愛玩動物看護師の資格取得の勉強や実習が最も活かしやすい勤務先のため、応募者も多くなると考られます。
ペットショップ
ペットショップも愛玩動物看護師の勤務先の選択肢となります。
愛玩動物の購入客にしつけの仕方や栄養面の助言を行えるほか、愛玩動物のケアや世話などにも精通している点は強みとなります。
面接時に愛玩動物看護師の資格を持っていることを伝えれば、採用されやすくなる可能性があるでしょう。
ペットホテル
ペットホテルも愛玩動物看護師の資格取得者の勤務先になり得ます。ペットホテルは、さまざまなペットビジネスの中で急成長しているビジネスの1つです。
勤務に対して資格は必要ではありませんが、スタッフに動物看護士が含まれる、または全員が動物看護師であるといったペットホテルも増えています。
飼い主側から考えれば、愛玩動物の専門知識を持ったスタッフがいることで緊急時の対応も任せられるため、安心してペットを預けることができます。
また、ペットホテルは登録できれば法人化が不要な側面があることから、動物看護師が将来的に自分でペットホテルを開業するケースもあるでしょう。
しつけ教室
しつけ教室も愛玩動物看護師の勤務先になる可能性があります。ただし、愛玩動物看護師の資格が十分に活かされるかどうかは疑問です。
また、しつけ教室に採用するための公的資格はありませんが、トレーナーとしての知識が必要です。そのため、愛玩動物看護師の勉強と並行して動物のトレーナーの勉強を行う必要があるでしょう。
ペットケアホーム
ペットケアホームとは、動物のための介護ホームのことをいいます。多くの施設が特定の動物病院と連携しており、介護が必要と判断されたペットが入居しています。
当然医療行為はできませんが、病気やケガをしているペットや高齢のペットを預かることになるため、ペットのケアや看護の専門知識を有する愛玩動物看護師は積極的に採用される可能性があるでしょう。
愛玩動物看護師の仕事のやりがい
愛玩動物看護師として仕事をする上で、どのようなやりがいがあるのでしょうか。以下を確認してきましょう。
- 動物に携われる
- 動物が元気になってくれる
- 動物の変化に気付ける
- 飼い主との信頼関係を築ける
- 獣医師をサポートできる
動物に携われる
動物に携われる仕事がしたい方にとって、愛玩動物看護師はやりがいのある職業になるでしょう。動物と寄り添い支えられるため、充足感を得やすいともいえます。
動物病院に勤務する場合、携わる動物は怪我をしているか疾病を患っていて、元気がない状態がほとんどです。なかには、治療の効果も亡くなってしまうケースもあります。
動物の命に携わるため、大きな責任感が求められる職業でもあります。
動物が元気になってくれる
動物が元気になる姿を見られることも、愛玩動物看護師のやりがいになります。
出会ったときには病気やケガで苦しんでいた動物が、獣医師のサポートや入院中のケアなどによって回復する姿を見られるのは、愛玩動物看護師の特権ともいえます。
動物の姿を救うサポートができることに大きな喜びを感じ、エネルギーにしながら働くことができるでしょう。
動物の変化に気付ける
動物のちょっとした変化に気付けることが、動物看護のプロとして動物好きとしてのやりがいになることもあります。
入院している動物の管理や世話をするのも愛玩動物看護師の仕事ですが、動物は言葉を話すことができないため、症状や様子の変化をいかに察知するかが重要になります。
細かい変化に気付いて獣医師に報告することで、迅速で的確な対応が可能になるほか、動物の命を救うことにもつながる可能性があります。
飼い主との信頼関係を築ける
飼い主との信頼関係を気付けるのも、愛玩動物看護師のやりがいとなります。
動物の治療やしつけ、飼養の指導を行う際、飼い主とコミュニケーションを取ることになります。
獣医師よりも密にやり取りをすることが多いため、飼い主が言いにくいことをくみ取ったり、難しい説明を分かりやすく言い換える対応が求められます。十分な配慮をした上で、飼い主の相談相手のようにやり取りをします。
動物の治療が済んで感謝の言葉を貰えた際は、満ち足りた気持ちになるとともに飼い主との信頼関係が構築できたことを実感できるでしょう。
獣医師をサポートできる
獣医師のサポート役を務められるのも、愛玩動物看護師のやりがいです。
1日に何頭もの動物を診察する獣医師に対して、「どのように動けば診察がスムーズなのか」「どのような準備をすれば効率的か」などを考えながら診療の補助をします。
獣医師から信頼してもらうことで、サポート役の冥利に尽きるといっても過言ではないでしょう。
愛玩動物看護師の仕事内容まとめ
今回は、愛玩動物看護師の具体的な仕事内容や1日の業務スケジュールなどを紹介しました。
愛玩動物看護師の主な仕事は、獣医療における診察の補助です。これまでの動物看護師よりも広い業務範囲によって、より効率的かつ本格的な診療補助を行います。
今後、診療の補助ができるのは愛玩動物看護師のみの独占業務になります。獣医師を近くで支えながら動物の治療に携われるため、やりがいを感じるでしょう。
ペットをはじめとする動物達の助けになる仕事がしたい方は、国家資格化された愛玩動物看護師を目指してみましょう。
愛玩動物看護師の参考情報
| 平均年収 | 230万円～380万円 |
|---|---|
| 必要資格 |
|
| 資格区分 | 国家資格 |
| 職業職種 | 自然・動物 |
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