鷹匠の資格・試験とは?資格の特徴、鷹匠になるためのプロセスなどを解説
鷹匠になること、それ自体に関していえば、特別な資格の取得などは不要です。しかし動物である鷹を扱い、今では少なくなってしまった鷹匠の伝統を継ぐ者として、かなり厳しい訓練や、実力の研鑽が必要になります。経験を積み一人前になる過程の中で、その実力を試される試験等は必ず通らないといけません。今回は、鷹匠の特徴、鷹匠が一人前に認定される過程や、試験の情報をご紹介します。
鷹匠に必要な資格とは?
鷹匠になるための資格は不要
鷹匠(たかじょう)とは、鷹などの鳥を使って行う狩猟の一つ「鷹狩」を主な生業とする人のことです。
鷹狩に使われる鳥としては、タカ科のオオタカ、イヌワシ、ハイタカ等、およびハヤブサ科のハヤブサ等が挙げられます。鷹匠はそれらの鳥を飼育し訓練を施すことで鳥類や哺乳類などの獲物を取らせ、獲得した獲物を餌とすり替えます。この一連の鷹狩の手順を行う人のことを鷹匠と呼びます。
鷹匠になるための特別な資格、免許、国家資格等は存在しません。そのため、極論をいえば鷹匠を名乗れば鷹匠になることができます。しかし、勿論のことではありますが、実際に鷹匠としての活動を行うためには、所定の鷹狩術を今に受け継ぐ流派に弟子入りし技術を磨くなどして、鷹匠として世間から認められなければなりません。
鷹匠として認められるためには、いくつかの民間団体が主催している講座や認定試験を受け、合格することが必要です。ただ、鷹匠として働くだけであれば、その限りではありません。独学で鷹匠としての技能を身につける人もいます。
鷹匠と鷹狩の歴史は古来より続き、世界中に鷹狩文化が広がっている
狩猟はかつての人間の生活の糧を得る手段であり、文明が発達して以降は貴族の遊芸でもあり、専門の業者の生業としてもごく一般的に行われていました。鷹狩は世界的に見ても広く行われる狩猟方法であって、中世イングランドでは街を歩けば鷹を連れている人を必ず見かけることができるくらい、鷹狩文化は華やいでいました。
近代以前は、東は日本、西はアイルランド、北はモンゴル、南はインドに至る、ユーラシア大陸全般に鷹狩文化が広がっており、各地それぞれの鷹狩が独自に発展してきた歴史がありました。今でも、アラブ首長国連邦では野生の鷹の保護に大金が投じられ、鷹の品評会や鷹専用の病院まで存在するといいます。
日本では、古来より権威者による狩猟活動が権威の象徴となってきた歴史があり、古墳時代の埴輪に、手に鷹を乗せたものも存在するほど、鷹狩の歴史も古いです。日本書紀には仁徳天皇の時代から鷹狩が行われてきたことが記されています。古代には、多くの豪族や天皇などが鷹狩を好んできました。
歴史をたどるごとに、鷹狩は天皇だけでなく、武家社会においても行われるようになり、武家、公家問わず鷹狩が一般的に行われ、多くの鷹狩の流派が生まれ、発展していきました。あの徳川家康も鷹狩を好んでいたとされ、家康には鷹匠組という専門の技術者が、側近として付いていたほどです。
近現代になってくると、明治維新を経て鷹狩は大名特権から一般へ自由化がなされました。1901年の改正「狩猟法」以降は、狩猟対象鳥獣種・数と狩猟期間・場所の一般規制のみを受ける自由猟法となりました。明治以降も宮内庁式部職の下で鷹匠の雇用および育成も行われていましたが、第二次大戦終結後は、宮内庁による実猟は中止されました。
その後かつての幕府および宮内省鷹匠の技術が、退職した宮内省・宮内庁鷹匠によって民間有志に伝えられ、今の鷹匠へと受け継がれています。
現代の日本では、鷹匠専門で食べていくのは難しい
かつての鷹狩従事者は、山で鷹狩を行って得た獲物を売るなどして生計を立てることができました。しかし狩猟法は戦後、GHQ主導の下で鳥獣保護のための法律へと姿を変え、平成15年には鳥獣の保護および狩猟の適正化に関する法律(鳥獣法)として全面改正された法律の施行を迎えることとなりました。
法律の改正によって規制が大幅に強まり、鳥獣保護の観点が非常に強まった現在では、狩猟はかなり制限されており、まとまった収入を得ることは非常に難しいと言われています。そのため、現在の鷹匠は、宮内庁の鴨場の管理をはじめとして、伝統技術としての鷹匠技術を公開イベントで実演したり、害獣駆除などを行うために鷹匠技術を用いたりして、食べているといいます。専業で食べている人はほぼおらず、副業の範囲にとどまっている人が大半であるようです。
鷹匠の資格 鷹匠認定試験
鷹匠の認定試験は民間団体が実施している
鷹匠になるには、先述した通り特定の国家資格や免許などは必要ありません。しかし歴史のある伝統技術としての鷹匠技術には、所定の流派や、民間団体の開催する認定試験が用意されており、伝統として受け継がれてきた技術の質を保証しています。
古代からの長い歴史の中で、様々な流派が生まれた鷹匠ですが、現存する流派は2つだけで、諏訪流と吉田流があります。諏訪流はいくつかの家元に分かれ、幕末までは徳川将軍家、明治維新後は宮内省・宮内庁に仕えて連綿と受け継がれ、現在、諏訪流放鷹術保存会となっています。吉田流もまた徳川将軍家に仕えていましたが、吉田の家系は途絶え、現在は吉田門流と呼ばれる派生の家元を経由して、現在まで受け継がれているようです。
その他の民間団体としては、特定非営利活動法人日本放鷹協会、特定非営利活動法人日本鷹匠協会などがあります。
諏訪流鷹匠の認定試験は修得段階に応じて3回実施
認定試験として代表的なものを紹介します。最も明確に門下制度や試験が規定されているのは諏訪流放鷹術保存会です。諏訪流放鷹術保存会では広く門下生を募っており、諏訪流第17代宗家である田籠鷹匠自らが門下生の指導、育成を行い、伝統文化としての鷹匠の技術(放鷹術)のできる限り忠実な継承を目的としています。
諏訪流放鷹術保存会の行う鷹匠認定試験は、技術および知識の修得段階に応じて、3段階の試験が用意されています。
鷹匠補認定試験
まずは、「鷹匠補認定試験」。こちらは非公開となっていますが、諏訪流放鷹術保存会が主催する鷹匠補講習を受け、規定の基本技を修得した門下生だけが受けることができます。申請を出して、日程を決めて実施します。
鷹匠補講習の内容としては「放鷹文化の歴史~諏訪流鷹匠と鷹の特徴~」 「伝統的鷹道具の機能と作成①」「伝統的鷹道具の機能と作成②」 「鷹の飼育と調教方法①」 「鷹の飼育と調教方法②」「調教の段階的理解と実践①」 「調教の段階的理解と実践②」 「狩のマナーと狩場の歩き方」の8つとなっています。
鷹匠認定試験
次は、「鷹匠認定試験」です。こちらは一般公開となっており、年1回の冬季放鷹術公開の場において、鷹匠認定試験を受験することができます。受験資格は、鷹匠補認定試験に合格し、かつ、規定技を体得し3年以上自分の鷹を調教した門下生に限られます。
師範鷹匠試験
最後に、「師範鷹匠試験」があります。こちらは非公開です。受験資格は、鷹匠認定試験を合格し、かつオオタカ及びハヤブサの調教法をマスターし、実猟において勢子(せご:狩猟の補佐役で獲物を狩猟者のいる方向へ追い立てる役割)を指揮し、雉を捕獲できる技術を有する者に限られます。
実猟試験と面接によって選考が行われ、人格的・技術的に優れていると認定された者だけが、師範鷹匠として独立が許されます。
鷹匠になるための学校等
伝統の鷹匠技術を会得したいなら、鷹匠の弟子になることが第一
鷹匠とは、特定の資格や免許を必要としないため、鷹を飼育し訓練を積み、鷹を操れれば誰でもなれる、という風潮があります。なので、鷹の世界には自称師匠といわれるような、独自に技術を修得した人たちも少なくないようです。
しかし伝統文化としての、昔ながらの鷹匠技術を会得したいと思うなら、やはりその道のプロに指導を乞うしかありません。鷹匠にアポイントメントを取り、弟子にしてくれるように頼み込むのです。元々職人的な業界でもありますので、師弟制度は一般的です。しかし現存する流派すらたったの2つしかない現状では、鷹匠の数はかなり少なくなってきています。
気軽に鷹狩の世界に入りたいなら、民間団体の会員、門下生の道も
現在では、鷹匠に関する公的な機関がない分、鷹の保護や飼育、調教に特化した民間団体がいくつか存在し、そちらの会員になる道の方が主流かもしれません。また、規模の大きい流派である諏訪流、吉田流には門下制度もあり、それぞれの団体の規則に応じた認定試験が設けられ、試験に受かることで鷹匠と認定されます。
団体の例としては、「特定非営利活動法人 諏訪流放鷹術保存会」「全日本鷹狩協会」「特定非営利活動法人日本放鷹協会」「特定非営利活動法人 吉田流鷹狩協会」「ワールド・ファルコナーズ・クラブ」「日本猛禽類倶楽部」などがあります。千葉県に、鷹匠学校を名乗る団体もありますが、公式サイトが無いため詳細は不明です。
鷹匠に関する資格まとめ
伝統文化の継承者としてなのか、実利的な目的なのかをはっきりと
鷹匠の仕事、つまり鷹を飼育し、調教、訓練を重ねて獲物を捕る、ということに限っていえば、独学でも技術は修得できます。しかし伝統文化の継承を目的として、例えば浜離宮恩寵庭園での放鷹術の実演などを行うには、連綿と受け継がれる伝統的な技術体得は欠かせません。
一方で企業などに就職し、害獣駆除を請け負う鷹匠もいます。鷹を操る技術に優れていれば、伝統を意識しなくとも仕事は可能です。ただ、伝統的な鷹匠は鷹を主体とし、技術だけでなく鷹を扱う、鷹とともに生きる心構えをも継承してきました。優れた鷹匠になりたいなら、伝統的な鷹匠の技術を勉強するのが肝要であるかもしれません。
鷹匠の参考情報
平均年収 | 50万円~120万円 |
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必要資格 | 必要資格なし |
資格区分 | - |
職業職種 | 自然・動物 |
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