メンタルトレーナーの仕事内容とは?やりがいや魅力について解説

メンタルトレーナーの仕事内容とは?やりがいや魅力について解説

メンタルトレーニングは、歴史的にはスポーツ心理学と密接に関係した形で発展しました。しかし、今やその需要はスポーツ以外にも広がり、様々な場所でメンタルトレーナーが求められています。この記事では、スポーツ分野を中心としたメンタルトレーナーの仕事の内容や特徴、将来性についてご紹介します。

メンタルトレーナーとはどんな仕事?

心の不安を取り除き、精神的な鍛錬を積むための指導を行う

メンタルトレーナーは、主にスポーツの分野において、スポーツ上のパフォーマンス向上を目的として、心の不安を取り除いたり、精神状態を安定させたり、改善したりするトレーニングを指導する仕事をする人を指します。

日本ではまだまだ専門家は少なく、スポーツ心理学、スポーツ科学、臨床心理学などの関連分野で働く、スポーツトレーナー、スポーツインストラクター、健康運動指導士、介護福祉士、臨床心理士、心理カウンセラーなどがその仕事の一環としてメンタルトレーニングの技術を習得するといった状態になっています。

本来の精神鍛錬や心理学的なアプローチを重要視した専門家の育成や普及の必要性が叫ばれていますが、日本はメンタルトレーニングに関する歴史が欧米諸国に比べると浅いため、まだまだ高度な知識と技能を持った専門家の飛躍的な人口増加には至っていない状態です。

メンタルトレーニングのルーツは旧ソ連の宇宙飛行士にある

メンタルトレーニングのルーツとしては、旧ソ連の宇宙計画の一環として、宇宙飛行士に対して心理的不安や恐怖感を取り除く目的で心理的、生理的なセルフコントロールを指導したことが挙げられます。

その後、この宇宙飛行士への心理的トレー二ングを応用した旧ソ連、旧東ドイツなど冷戦時の東側諸国(共産圏)が、メンタルトレーニングを活用することによってオリンピックにおいて大きく成績を向上させた事で、アメリカやカナダなど西側諸国もメンタルトレーニングを取り入れて、1984年のロンドンオリンピックで大きな成果をあげました。

日本においても、メンタルトレーニングはまずはスポーツ分野で注目を集めた歴史があり、日本もまたアメリカやカナダを見習って、メンタルトレーニングを取り入れようという動きや研究がスタートしました。

2000年のシドニーオリンピックの時期にようやく日本のスポーツ界の12団体がメンタルトレーニングを導入し、大きな成果をあげたことから、日本においてもメンタルトレーニングが大きく普及することとなりました。

同年より日本においても日本スポーツ心理学会による「スポーツメンタルトレーニング指導士」の資格制度がスタートしたものの、こちらの資格取得は非常にハードルが高いことからか、専門職としてのメンタルトレーナーの人口は非常に少ない状態が続いています。

一方で、民間資格で学会基準とはあまり関係がない、所定の講座を受講すれば取れてしまう民間資格が次々と乱立し、学会基準とそれ以外とでメンタルトレーニングスキルに大きな差が生じ、現場の混乱を招いているという話も聞きます。

メンタルトレーニングの需要は多岐に渡って増加していく事が予想される

日本においてメンタルトレーナーは依然としてスポーツ分野に特化した職業とみなされていることと、専門家の育成と普及が思うように進んでいない現状から、まだまだ発展途上にある仕事ですが、海外ではメンタルトレーニングはそれ自体が専門的な職として確立し、スポーツ以外の分野への応用が進んでいます。

メンタルトレーニングはスポーツ分野に応用されることで発展した歴史である事実はありますが、もともと宇宙飛行士の心理的コントロールにルーツがあるように、スポーツだけでなく分野を問わず応用されるべきです。

今後の理想的な状態としては、メンタルトレーニングそのものが独立した分野として研究が進み、スポーツ選手だけでなく一般の会社員、主婦、学生、研究者、経営者などに広くメンタルトレーニングが普及することです。スポーツ分野で培った精神鍛錬法を人間社会全般に応用すべき時に差し掛かっています。

特に現代社会はストレス社会と呼ばれており、メンタルヘルスへの意識が年々強くなっています。日々発生するストレスや心理的不安を解決する手段として、明確に成果が研究されてきたメンタルトレーニングが注目を集めています。

メンタルトレーナーの具体的な仕事内容

まずはしっかりとクライアントの話を聞いて問題点を割り出す

メンタルトレーナーは、現状スポーツ分野における活用に特化して普及が進められているものの、将来的にはスポーツ分野に限らず、様々なクライアントへの対応を期待されています。

メンタルトレーニングにおける第一の工程として挙げられるのは、クライアントが求めることを把握するために、カウンセリングや面接を行って、しっかりとクライアントの話を聞くことです。クライアントがメンタルトレーニングや、メンタルトレーナーによる心理的サポートに何を求めているのか、どういったことを改善したいのかをしっかり聞くことから始まります。

これを専門用語で「傾聴」とか「共感」といいますが、クライアントが語る表面的な言葉の裏に隠された意味をもしっかりと「聴く」ことが重要となります。実際に顔を突き合わせて話を聞くことによって、語られる言葉とは異なる心理的課題が見えてくることがあるからです。

心の問題が何を原因にして発生しているのかを正確に把握しなければ、問題解決へと繋がっていかないというのもあります。必ずしも、セオリー通りのメンタルトレーニングが有用に働くとは限らず、場合によってはメンタルトレーニングではどうにもならない精神的要因や身体的要因が問題の核心となっている場合があります。

そうした場合はまず医者やカウンセラーの協力を仰ぎ、心理的トレーニング以前にある問題から解決していく必要があります。

メンタルトレーニングプログラムの作成および指導

問題が明確となり、メンタルトレーニングが必要と判断できたら、まずはメンタルトレーニングプログラムを作成します。

そうした時に注意しなければならないのは、既存のセオリーとしてのメンタルトレーニングプログラムが先にあって、それにクライアントを当てはめることをしないことです。先の「傾聴」「共感」は非常に重要となるのは、セオリーを優先してしまうとメンタルトレーニングが全く効果を発揮せず、無駄足に終わる可能性があるからです。

メンタルトレーニングプログラムを作成するにあたって重要なのは、クライアントのどのような心理的側面に働きかけるのか(水準)、どのような時期に行うのか(時期)、何を目的とするのか(目的、心理的スキル)の3つの原則です。

とるべき戦略や行動における知的理解、判断や予測能力を高める認知面の鍛錬などの認知・知識トレーニング、リラクゼーションやイメージトレーニング、目標設定やセルフトーク、積極的思考の形成など情動・動機トレーニング、クライアントの生き方に関わる深い精神的、人格的なところにも関わるカウンセリングが「水準」として設定されるものです。

「時期」は、長期に渡るのか、あるいはアスリートでいう競技シーズンなどの特定の時期だけなのか、あるいはアスリートでいう試合直前のように、大きなイベントの直前のみなのか、といったように分けられます。

「目的」は、心理的課題や問題を解決する問題対処型と、試合や大きなプレゼンなどの特定のイベントに向けた心の調整を行う試合前コンディショニング型、全般的な精神の安定と心的不安の除去を目的とした日常継続型などに分かれます。

重要なのは「振り返り」と「フォローアップ」

メンタルトレーニングプログラムを実践した後、必ずカウンセリング日誌や練習日誌などを作成することで、「振り返り」を行うことが重要となります。人の心は常に変化し、状態は移り変わります。メンタルトレーナーは、クライアントとともに「振り返り」をきちんと行うことで、お互いのアプローチの習熟度を高めます。

「振り返り」とは要するに、より適正で明確なプログラムに照準を合わせて行くことを目的としています。メンタルトレーニングにおいてどのようなことに効果があったのか、どういったものが不要だったのかを、クライアントとメンタルトレーナー双方が日々確認し合うことで、精度は高まって行きます。

また、こうしたメンタルトレーニングだけでなく、コンサルティングにも言えることですが、クライアントへの「フォローアップ」も日々重要になってきます。専門家ではないクライアントは、あくまでもメンタルトレーニングのやり方を教えてもらったに過ぎません。

安定したパフォーマンスの向上のためには、そうしたトレーニングを継続して行わないといけませんが、一時的な調整のみを依頼したクライアントは、期間終了後こうしたメンタルトレーニングから遠ざかる傾向があります。

こうしたメンタルトレーニングを日常的に実施していくためには、メンタルトレーナーによる定期的なフォローが重要となってきます。メンタルトレーニングは、最終的には精神的な鍛錬を自分で行えることが理想となりますので、クライアントが継続へのモチベーションを高めることができるよう、日常化してもらうまではメンタルトレーナーがしっかりとしたフォローを行うことが大切です。

こうしたアフターフォローをしっかり行う点は、長期的な経営課題を解決するための方法を指導するコンサルタントと似ています。こうした側面から、メンタルトレーナーは、学会基準では心理コンサルタントとも呼ばれます。

メンタルトレーナーの仕事のやりがい

様々な分野の人の精神を安定させる専門家として貢献できる

メンタルトレーナーは、その的確なカウンセリングやメンタルトレーニング指導によって、スポーツアスリートだけでなくビジネスマンや経営者など社会の最前線で活躍する人たちの精神的な課題を解決し、精神の安定を目指して指導を行います。

一般的な会社員、学生、主婦、といった様々な立場の人が、多様な現代社会を構成しています。そうした社会の構成員である人間の、心の問題に向き合うだけでなく、それらが改善に向かうように的確に導いていくメンタルトレーナーは、社会的役割もとても大きなものとなります。

社会は人間が作るものである以上、人間の心こそが社会の根幹と言っても過言ではありません。メンタルトレーナーは、ストレスが大きくなりがちな現代社会の様々な人々のセーフティネットとしての役割も担っています。そうした責務こそが、大きなやりがいへと繋がっています。

世界的なアスリートやアーティストなど多くの人に支持される人を支えることができる

メンタルトレーナーによるメンタルトレーニングの指導が長年必要とされてきたのは、世界的なアスリートたちです。アスリートたちは企業や団体、時には国そのものを背負って、極限の精神状態で戦います。こうした性格は音楽アーティストにも当てはまります。

世界的な音楽アーティストも、世界的なアスリートと同じく、非常に繊細な精神を持っていて、デリケートな精神的な調整を欲しています。また俳優やタレントや芸人など、芸能の分野でも同様に、人前で最高のパフォーマンスを行わなければならない人は特に精神にダメージを負いやすく、恒常的なメンタルトレーニングが求められます。

そうした世に広く顔を知られ、活躍する存在のメンタルを支えることも、メンタルトレーナーの大きなやりがいに繋がっています。

メンタルトレーナーの仕事内容まとめ

今後ますます重要になる、心の安定をもたらす仕事

現代社会は多角的に見ても明らかにストレス社会と呼べるほどに、メンタル管理が重要視されています。こうした中で、長年アスリートという常に極限の中で最高のパフォーマンスを求められる仕事を助けてきたメンタルトレーニングという理論の提供が、広く一般に求められています。

メンタルトレーナーは、アスリートだけでなく、一般社会を構成する様々な人々の精神鍛錬にシフトしていく必要があります。そのために専門的なメンタルトレーナーの育成と普及がますます進められて行くでしょう。

メンタルトレーナーの参考情報

平均年収300万円~500万円
必要資格 必要資格なし
資格区分 -
職業職種心理・福祉・リハビリ

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