柔道整復師の仕事内容とは?やりがいや魅力について解説
かつては「ほねつぎ」「接骨医」などと呼ばれていた柔道整復師。名前は知られているものの、実際にどのような仕事をするのか、意外と知られていない仕事でもあります。今回は柔道整復師の資格取得後の進路や、仕事の特徴、魅力などについてご紹介していきます。
柔道整復師とはどんな仕事?
柔道整復師は、柔整マッサージ、手技療法、運動療法、温熱などの方法によって、被施術者の骨・関節の損傷箇所を整復することが仕事内容です。俗称として「接骨医」などと呼ばれることもありますが、正式な呼び方は「柔道整復師」という呼称で統一されています。
柔道整復師として働くには、厚生労働省または文部科学省管轄の柔道整復師学校・養成施設などのカリキュラムを3年以上受講して卒業し、柔道整復師国家試験に合格する必要があります。
柔道整復師の国家試験はどのような試験?
柔道整復師国家試験は、1993年から実施されています。試験科目は解剖学・生理学・運動学・病理学概論・衛生学・公衆衛生学・一般臨床医学・外科学概論・整形外科学・リハビリテーション医学・柔道整復理論・関係法規といった内容です。
この国家資格の合格率はおよそ65%前後となっており、85%前後であった1998年より合格率が低下しています。現在就業している柔道整復師は5万人前後とされています。
柔道整復師資格をとった後の進路は?
以前は、柔道整復師の国家資格を取得した柔道整復師は独立開業を行う方が多くいました。しかし近年では、施術所・接骨院を開業する割合は少なくなっています。
現在では柔道整復施術所へ就職したり、病院の外科・整形外科のリハビリテーション部門、介護関係の事業所に就職したりといった進路が代表的です。ある程度の年数勤務し、経験を積んだ柔道整復師の中には、自分で独立し施術所を開業するケースもあります。
外科手術や投薬による治療は専門外
ここまでの解説でお分かりの方もいるように、柔道整復師の業務内容と外科医の業務内容は異なります。怪我をしたりしたときに外科手術をしたり、苦痛を緩和するために外用薬・内服薬などを処方するのが外科医の仕事です。
一方、柔道整復師はそうした手術ではなく、あくまで手指によるマッサージ・リハビリテーションなどによって被施術者の苦痛を緩和することを仕事としています。この点を混同しないよう注意が必要といえます。
なぜ「柔道」整復師なのか?
「接骨医」といえば、骨や関節に関する仕事だと分かりやすいのですが、あくまで正式な呼称は「柔道整復師」です。ではなぜ「柔道」なのでしょうか。
それは、柔道の元になったとされる日本古来の武道「柔術」が由来としてあります。柔術にはもともと「活法」と「殺法」とがあります。ざっくりといえば、この柔術の技のうち「柔道」に受け継がれたのが「殺法」にあたる技術で、「活法」に受け継がれたのが柔道整復師の技術です。
関節技や人体の構造・解剖学に至るまでの知識を身につけ、それを人の苦痛の緩和のために使うということから、「柔道」整復師という名前がついているといえます。
柔道整復師の仕事の具体的な内容
では実際に、柔道整復師の仕事というのはどのような業務内容なのでしょうか。
一般にイメージされるものとすれば整体のような仕事や、たとえば骨盤の歪みを治すといったような処置が思い当たるかと思います。しかし実際に関わった方でなければ柔道整復師の仕事内容について詳しく知っているという方は多くないでしょう。
具体的な柔道整復師の仕事には、以下のようなものがあります。
痛みを緩和する処置
外科医などのような、患部を切開したりして行う治療とは異なり、柔道整復師の行う骨折・脱臼の処置は「固定法」「整復法」が主な処置となります。
骨折や脱臼をしてしまった場合には、患部が動いてしまうと症状が悪化したり、被施術者が苦痛を感じてしまいます。
柔道整復師の処置では、被施術者の苦痛緩和、および患部の保護と治癒を促すため、ギプス、三角巾などによって患部を固定する処置が行われます。これが「整復法」や「固定法」です。
手技療法・温熱療法
一般に、身体の各部の痛みを訴えた場合で、そこに捻挫や脱臼、打撲などがある場合にはとにかく「冷やす」という処置が用いられます。
緊急時の初動処置としてはそれが推奨される場面も多いのですが、怪我からある程度の時間が経ったあとでは、柔道整復師の行う温熱療法が行われる場合があります。患部の鎮痛・鎮静や末梢神経の拡張、血流増加などの効果が期待されます。
手指によるマッサージでは、患部やその周辺に手指による刺激を与え、それによって被施術者自身の自然治癒力を高め、回復を促すことを期待して行われます。
被施術者本来の回復・治癒力を高める処置
温熱療法とは別に、患部を冷やす冷却処置がとられることがあります。
また、電気や光を使って患部に刺激を与えることで被施術者の自然治癒力を高める処置がとられることがあります。これらが物理療法と呼ばれる処置です。柔道整復師の行う処置のひとつです。
物理療法の中でも電気療法については、近年では特に低周波電気刺激療法が用いられることがあります。
運動療法
運動療法もまた柔道整復師の重要な処置のひとつです。身体に運動をさせることで運動機能を回復させることを目的として行われる処置です。
これが用いられるケースというのは、たとえば骨折や脱臼などで長期間ギプスをつけて固定をしていたような場合です。このような治療の後ですと、身体が固まってしまっており、正常に動かすことが困難になっている場合があります。
柔道整復師の行う運動療法によって、身体が持つ本来の運動機能を回復させようというのがこの運動療法です。
柔道整復師の仕事のやりがい
柔道整復師の仕事のやりがいとしては、やはり被施術者の苦痛を緩和して、被施術者が本来持っていた体の機能をを取り戻してあげることにあります。
痛みや怪我の治療後だけではなく、人間は筋力の衰えや高齢化、そして怪我などで一時的に体が動かなくなってしまうことがあります。このようなことが起こると、被施術者としては実際の痛みや不便以上に、自尊心を傷つけられてしまったり、生活をする上での気力が削がれてしまうこともあります。
こうしたときに、柔道整復師の施術によって体の機能を回復させることで、被施術者自身が自信を取り戻し、いきいきと生活する手助けができるのが柔道整復師の仕事のやりがいといえるでしょう。
柔道整復師の処置の仕事でのやりがい
怪我などの処置の場面においての柔道整復師の仕事は、先に述べた固定法や整復技術によって、体の損傷に対しての処置を行うことがメインとなります。
被施術者自身の訴えに加えて、柔道整復師の患部への適切な診断によって、必要な処置を講じることができれば、被施術者の体が機能を取り戻すのが早くなります。
自身の施術が、痛みや不便を感じる被施術者のクオリティ・オブ・ライフを向上させ、結果的に回復を早めることにつながることが、柔道整復師自身の仕事のやりがいとなります。
整形外科や整骨院での処置
整形外科や整骨院で働く柔道整復師の仕事は、主に整形外科医などの医師と、理学療法士、そして被施術者との連携・コミュニケーションによって回復の効果を最大化することにあります。
病院によって担当する業務に若干の違いはありますが、整復施術、テーピングなどが主になるほか、リハビリテーションの運動指導を行う場合もあります。被施術者と直接やりとりをしながら、共に体の状態を整えていくということがやりがいとなります。
柔道整復師の介護・支援の仕事でのやりがい
近年の柔道整復師の勤務先として多いのは介護施設などの支援施設です。この場合、柔道整復師は機能訓練指導員として勤務することになります。
要介護者に対してマッサージやリハビリテーションなどの施術を行うほか、筋力が低下しないよう、運動指導や歩行訓練などを実施するという仕事もあります。
要介護者にとって、「できないこと」が増えていくのは辛く悲しいことですが、こうした訓練を行って体の機能を衰えさせず、常に運動をしていくということは、柔道整復師にとっても非常にやりがいのある仕事です。
スポーツトレーナーとしての仕事
スポーツの現場で働く柔道整復師もいます。この場合、柔道整復師であり、かつスポーツトレーナーとして働いている場合が多く、選手の体調維持、怪我の防止、そして怪我をしてしまった場合のリハビリテーションなどが主な仕事となります。
スポーツにおいては怪我のリスクは常にゼロにはなりませんが、選手が100%の実力を出し続けられるように指導をしたり、万一の怪我の際には1日も早く万全の状態へ回復させ、また選手をフィールドに送り出すということは、柔道整復師にとっても大きなやりがいとなる仕事です。
柔道整復師の仕事内容まとめ
柔道整復師は、医師や理学療法士と連携しながら、また被施術者ともコミュニケーションを密にしながら、体の苦痛を緩和し、回復を目指して訓練・施術をしていく立場です。
医師のように外科手術や投薬治療といった「医療行為」ではなく、あくまで「訓練」「施術」という意味で、医師と被施術者の両方を支援する仕事であるといえます。
柔道整復師の確かな観察力とコミュニケーション能力は、被施術者の回復を促進する重要な役割を負うことになる、重要な立場です。
処置・支援・訓練、幅広い活躍ができる仕事
柔道整復師の行う仕事には、怪我への処置、運動の支援、訓練と、非常に幅広い活躍の場面があることがわかります。
しかしいずれも、体になんらかの不調や機能の低下が起こっており、それを元に戻したい、維持したいという方です。
そうした方々を多岐にわたる方法でサポートできるプロフェッショナルが柔道整復師であるといえるのです。
柔道整復師の参考情報
平均年収 | 350万円~700万円 |
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必要資格 |
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資格区分 | 国家資格 |
職業職種 | 心理・福祉・リハビリ |
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