外交官になり社会で活躍するためには、分野によって必要な資格が変わる
国内の社会や歴史、経済だけの知識だけではなく、世界各国で幅広く活躍する方、特定の地域で活躍する方と、外交官の中でも仕事内容はさまざまですが、外交官になるための必要な資格を取得するための試験はどんな内容なのかをご紹介します。
外交官の資格・試験とは?
国家公務員採用総合職試験
外交官として活躍するには、外務省に入る必要があります。外務省に入るためには公務員試験を受ける必要があります。その中でも、公務員試験の最高峰とも呼ばれる「国家公務員採用総合職試験」などに合格する必要があります。
国家公務員採用総合職試験に合格することで、国家規模の政策決定に関連する第一線で多くの経験を積みながら、外交官として業務を幅広く携わることが出来るようになります。
国家公務員採用一般職試験
国家公務員採用一般職試験は、総合職試験とは異なり、国家公務員採用一般職試験に合格し外務省に入省した人は「ノンキャリア組」と呼ばれています。
外務省一般職の外交官として、主に外務本省や出先の機関などで定期的に会計や庶務などの事務作業を担当する職員として入省することになります。
外務省専門職員採用試験
外務省専門職員採用試験は外務省が独自行っている試験です。外国語や各地域の社会、文化、歴史等に関して、高い語学能力を活かし外交領事業務または、外交に関連する事務を行えるようになります。
経済や安保、国連や条約、経済協力等の幅広い分野の専門家として、活躍できる可能性が期待される職業でもあります。そのため外務省専門職は上記で紹介した、総合職以上の高い語学力が求められる職業です。
外務省専門職員は外交官の中でも特に高い語学能力を持ち、外交を指揮する外務省高官をさまざまなところで補佐する立場にあたる外務省の中堅職員的な立場の外交官であるため、特定の地域に対しての社会や文化、歴史などの専門家として活躍することができます。
社会や文化、歴史の専門家だけではなく、経済協力や条約などの経済分野の専門家としても活躍できる可能性がある資格です。
国家公務員採用試験とは別枠で選考されることがあるのも、この採用試験の特徴の一つです。外務省専門職員の試験に最終合格することで、外務省専門職員採用候補者名簿に記載されるにようになります。
国家公務員採用総合職試験や外務省専門職員採用試験、国家公務員採用一般職試験いずれも外交官の仕事に携わるために必要な試験です。これらの資格の難易度はどのくらいなのか、また合格率はどのくらいなのか紹介します。
外交官の資格の難易度・合格率
国家公務員採用総合職試験の試験内容
国家公務員採用総合職試験には、院卒者試験と大卒程度試験の2種類があります。どちらの試験も択一式の基礎能力試験と専門試験が実施されます。
基礎能力試験の内容としては、一般知能系科目といわれている文章理解や判断推理、数的推理や資料解釈などが主な内容と、数学や物理などの理数系科目や歴史や地理などの分系科目も含まれ、時事を含んだ社会も出題範囲です。重要視される科目は一般知能系科目となっています。
一般知能系科目は、院卒者試験では8割、大卒程度試験では7割と試験全体の出題範囲を占めています。
二次試験は、院卒者試験と大卒程度試験とでは試験内容が異なります。院卒者試験の試験内容は、人物試験や政策課題討議試験、専門記述試験となっています。大卒程度試験の試験内容は人物試験と専門記述試験のほかに、政策論文試験が行われます。
ちなみに政策課題討議試験とは、プレゼンテーション能力やコミュニケーション能力を見る試験となり、6人1組となって英文が含まれている資料からレジュメを作成し、個別発表をしてからグループ討議を行い、これまでの内容を踏まえて個別発表を行う内容となっています。
二次試験合格後がゴールではない
国家公務員採用総合職の試験は、一次試験、二次試験を合格したとしても、内定をもらえたことにはならないので注意が必要です。
二次試験に合格することで最終合格となりますが、官庁訪問と呼ばれる自身が志望する官庁に出向き、面接試験を受ける必要があります。面接とはいえ、官庁訪問を訪れる前にあらかじめ各省庁の情報収集をしっかり行う必要があります。
受験資格
■院卒者試験の場合
院卒者試験の場合は、1989(平成元)年4月2日以降生まれの者が該当されます。
- 大学院修士課程または専門職大学院の課程を修了した者及び、2020年3月までに大学院修士課程または専門職大学院の課程を修了する見込みの者
- 人事院が上記に掲げる者と同等の資格があると認める者
■大卒程度試験の場合
- 1989(平成元)年4月2日~1998(平成10)年4月1日生まれの者
- 1998(平成10)年4月2日以降生まれの者で大学を卒業した者、及び2020年3月までに大学を卒業する見込みの者
- 人事院が上記に掲げる者と同等の資格があると認める者
上記に該当していたとしても、次のいずれかに該当する者は、試験を受けることができないので注意が必要です。
- 日本の国籍を有しない者または外国の国籍を有する者
- 成年被後見人、被保佐人(準禁治産者を含む)
- 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでまたはその執行処分の日から2年を経過しない者
- 一般職の国家公務員として懲戒免職処分を受け、当該処分の日から2年を経過しない者
- 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法またはその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、またはこれに加入した者
上記は国家公務員法第38条・外務公務員法第7条・人事院規則によるものです。
国家公務員採用総合職試験の合格率
人事院により平成30年度の国家公務員採用総合職試験の合格者数は、院卒者試験では申込者数が2181名、合格者数は639名、合格率は29%となっています。大卒程度試験では申込者数が17,428名、合格者数は1,158名、合格率は6%となっています。
試験区分 | 申込者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
院卒者試験 | 2181名 | 639名 | 29% |
大卒程度試験 | 17,428名 | 1,158名 | 6% |
外務省専門職員採用試験の試験内容
外務省専門職員採用試験には、一次試験と二次試験に分かれて受けることになります。一次試験は筆記試験が主な試験内容になり、憲法や国際法、経済学に関連した試験だけではなく、基礎能力試験や時事論文試験、外国語試験も行われます。
一次試験では理解力や判断力などの知識を大学卒業程度の学力を基準として、適性かどうかを判断されます。一次試験に合格するには一定の合格点を達する必要があり、他の科目の成績が良かったとしても、基礎能力試験が合格点に達しなければ不合格となります。
二次試験では、身体検査、面接による外国語試験が行われます。この二次試験の人物試験(個人面接)において、一定の基準点を達しなければ、外国語試験で成績を収めていたとしても、不合格になります。
受験資格
- 試験実施年の4月1日時点において21歳以上30歳未満の者
- 試験実施年の4月1日時点において21歳未満でも、大学・短期大学・高等専門学校を卒業している者、および3月までに卒業する見込みの者
- 人事院が上記の者と同等の資格があると認める者
外務省専門職員採用試験の受験資格に該当しない者は、国家公務員採用総合職試験に該当する者と同じ内容です。
外務省専門職員採用試験の合格率
合格率も決して高くはありません。平成26年度のデータでは、受験申込者数は480名の内、第一次試験全科目受験者数は290名。第一次試験合格者数は73名となり、最終合格者は40名となっています。合格率は平均して13%と、外務省専門職試験を合格し採用されるためには険しい道のりといえるでしょう。
受験申込者数 | 第一次試験全科目受験者数 | 第一次試験合格者数 | 最終合格者 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
480名 | 290名 | 73名 | 40名 | 13% |
その他の外交官関連資格
TOEFLや国連英検の資格を取得する
外交官の仕事をするには英語はできて当たり前であり、英語ができる以上の高い英語力と、専門用語もある程度理解できる能力が必要とされます。外交官の一般職に就職したとしても、国際関係に携わる仕事をするため、英語の読み書きができることが重要です。
海外留学経験がある外交官もいますが、英米圏の大学を卒業していることが英語能力を持っている証明となることもあります。ただ必ずしもこれらの経験が必要ということではありませんので、経験がない方はTOEFLや国連英検の資格を取得することをおすすめします。
2つの試験のどちらも共通して、文系や理系を問わずに幅広い分野から出題されるため、外交官としての業務に携わることができる英語力が備わっているのか、適切な目安となる資格です。
英語ネイティブの授業に付いていけるにはTOEFLであればiBT100、PBT600の点数が必要とされます。また、国連英検では特A級の最高レベルを目指すことが好ましいとされています。
外交官になるための試験を受験するには、国家公務員採用総合職試験、外務省専門職員採用試験のどちらも一次試験を合格し、二次試験に進む試験内容となっています。国際に関連した仕事に携わるため、英語力は必須です。
外交官の資格が取れる学校
国家公務員総合職試験の合格者は東京大学出身者が多い
圧倒的といえるほど、府省共通の国家公務員総合職試験の合格者は、東京大学出身の方が多いです。東京大学の次に合格者が多いのは、京都大学、早稲田大学、慶応大学などの私立の名門校となっています。
外交官としてキャリアを積みたい方は上記の大学を卒業すると有利になるといえるでしょう。外交官に求められるのは、国際法にのっとって業務を進める必要があることもあるため、法学部が有利とされています。外務省に限っては、東京大学法学部を総合職枠で採用することが多いことがあります。
しかし必ずしも法学部しか採用しないわけではなく、採用されやすい学歴であり、外国語学部や政治経済学部、国際関係学部など、外務省に勤める上で業務に活かすことができる知識を学べる学部が多くあります。
外交官になるための試験には理系だけ、文系だけの出題範囲ではなく、幅広い分野から出題され、二次試験に進むと面接試験がありコミュニケーション能力を見られるので、進学しても面接試験に備える必要があります。
外交官の資格・試験まとめ
分野別で外交官になるための試験が異なる
外交官の資格には国家公務員採用総合職試験、外務省専門職員採用試験、国家公務員採用一般職試験とあり、それぞれ進む方向で活躍できる場が異なります。
試験には学歴は問われませんが、試験内容は大学卒業レベルの内容になり、ほとんどが大学卒の方が受験されます。自身にしかない知識や語学能力を活かし追求し続け、試験のために多くの時間を費やし、準備をすることで外交官になるための資格を取得する道が開けることでしょう。
外交官の参考情報
平均年収 | 300万円~1200万円 |
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必要資格 |
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資格区分 | 試験合格 |
職業職種 | 国際 |
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