パラリーガルの資格・試験とは?取得しておくと役立つ資格の特徴などを解説

パラリーガルの資格・試験とは?取得しておくと役立つ資格の特徴などを解説

パラリーガルは、法律の専門知識が求められる点で専門性が高いですが、パラリーガルを目指す上で特別な資格が必要なわけではありません。ただし、持っていれば就職や転職の際に有利に働くパラリーガル関連の資格はいくつかあります。本記事では、パラリーガルに役立つ可能性が高い資格試験などについてご紹介します。

パラリーガルの資格試験とは?

パラリーガルに関する資格試験は主に2種類

パラリーガルは法律の専門知識が求められるという点で、専門職の一つと位置づけられています。しかしながら、これまでは資格制度が設けられていませんでした。そのため、入社して数ヶ月の新人職員も、何年も実務経験を積んできたベテランの職員も、同じように「法律事務職員」と呼ばれてきました。

そこで、パラリーガルの社会的需要が高まったことを受けて、パラリーガルのための資格認定試験ができました。2019年8月時点では2つの団体が資格試験を実施しています。

  • 日本弁護士連合会(日弁連)主催 事務職員能力認定試験
  • 一般社団法人日本リーガルアシスタント協会(JLAA)認定 パラリーガル認定資格試験

ここでは、この2つについて簡単に開設していきます。

日弁連の事務職員能力認定試験は、現役職員が対象

日本弁護士連合会(日弁連)は、より高いスキルを持つパラリーガルの育成を目的として「事務職員能力認定試験」をはじめました。

この認定試験は年1回実施され、法律事務所や工務所、企業・団体に在職している法律事務職員向けに、国内の民事・家事などの法的手続きに関する専門知識や実務能力を計ることを目的としている認定試験です。

しかし、この認定試験は「出願時点で法律事務所に勤務している事務職員、公務書もしくは企業・団体において弁護士の業務を補助する者」を受験資格としているため、未経験者は受験することができません。

パラリーガル認定資格試験は誰でも受験可能

もう一つの認定試験が、一般社団法人日本リーガルアシスタント協会(JLAA)が主催するパラリーガル資格認定試験です。

こちらは実務経験がなくても誰でも受験できる資格試験で、全く法律の知識がなく、実務未経験の人はこの資格試験を受験している人が多いようです。

パラリーガルに関する試験「パラリーガル認定資格試験」

合格率は非公開だが、講座を修了していれば合格しやすい

一般社団法人日本リーガルアシスタント協会(JLAA)が主催するパラリーガル認定資格試験は、パラリーガルとして業務を行うにあたり、その知識や素養を身につけているかどうかをはかる試験です。

段階に応じて、3つのレベルが設定されています。

  1. エレメンタリー・パラリーガル(初級)
  2. インターメディエイト・パラリーガル(中級)
  3. アドバンスド・パラリーガル(上級)

一般社団法人日本リーガルアシスタント協会主催 パラリーガル認定資格試験の概要

合格率

非公開

受験資格

次のうちいずれかに該当すること

【エレメンタリー・パラリーガル】
  • 1年以上法律事務所での実務経験を有すること
  • エレメンタリー・パラリーガル認定資格講座を修了していること
【インターメディエイト・パラリーガル】
  • 1年以上法律事務所での実務経験を有すること
  • エレメンタリー・パラリーガル資格を有し、インターメディエイト・パラリーガル認定資格講座を修了していること
【アドバンスド・パラリーガル】
  • インターメディエイト・パラリーガル資格を有し、アドバンスド・パラリーガル認定資格講座を修了していること

講座受講費用

  • 初級 198,500円
  • 中級 189,800円
  • 上級 115,000円

※すべて税別

出題範囲

【初級】

秘書業務・書類取り寄せ方法と読み方・民法・刑事訴訟法・経理など

【中級】

民法・刑事訴訟法・債務整理手続きなど

【上級】

交通事故事件。民事執行。破産管財の実務など

初級は実務未経験でも受験可能

講座の受講・資格試験受験者は、実務未経験者からある程度実務経験を積んでいる人までさまざまです。パラリーガル認定資格試験の初級は、法律事務の実務未経験者の人を対象としているので、入門レベルから実務の基本レベルまでを押さえた内容となっています。

中級レベルからは実務により特化した内容となり、中級では離婚・相続・成年後見などの家事事件についての事務手続きの流れを身につけ、自己破産手続きについて必要な手続きをできるようになるまで。

上級では中級で教わった民事執行・民事保全の基礎知識を基本に、強制執行の申立書や供託金の計算などができるようになるまでを目指します。その他、交通事故事件の実務や管財手続きをがてきるようになるまでを目指しています。

資格取得後は就職サポートも充実している

法律事務所でパラリーガルを目指す人、民間企業でその法律知識を活かしたいと考える人などさまざまですが、資格取得後は就職サポートを行っています。その際は希望条件などをヒアリングすることで、可能な限りミスマッチを防いでいるようです。

また、履歴書・職務経歴書の添削や法律事務所の面接対策も行っているので、全くの未経験から目指すには最適な資格試験といえます。

その他、法律事務所での実務経験者向けに実務習得ができるようにもカリキュラムを組んでいるので、経験者のスキルアップにも適した資格です。

パラリーガルに関する試験「事務職員能力認定試験」

試験の難易度はやや高め。法律事務所への転職では有利になりやすい

事務職員能力認定試験は、日本弁護士連合会(日弁連)が行っている能力認定試験です。国内の民事や家事事件に対して、法的な手続きをこなすことのできる専門知識と実務能力をみることを目的に制定されました。

以前は「2年以上法律事務所で実務に携わっている現役の職員」という条件がついていましたが、現在は現役の法律事務員であれば誰でも受講・受験できるようになっています。

同研修・試験は、法律事務所で3年~5年程度の実務経験を積んだ事務職員を想定したものとなっており、これに合格することで日弁連の合格者名簿に名前が掲載され、それ相当の実務能力があると判断できることもあり、特に法律事務所から法律事務所に転職する際は有利になる可能性が高いでしょう。

第10回での合格率が約42.8%(受験者数271名中、合格者116名、60点満点中合格最低点39点)、過去3年分で見ると第8回が約45.8%(受験者数419名中、合格者192名、60点満点中合格最低点40点)、第9回が約47.9%(受験者数447名、合格者214名60点満点中合格最低点40点)となっています。

また、合格最低点で見ると近年は60点満点中39点~40点で推移しています。ここから見ると、全体の3分の2近くできていないと合格できない試験ということがわかるので、専門知識が求められるという点でも厳しい試験といえるでしょう。

事務職員能力認定試験の概要

合格率

42.8%(第10回)

受験資格

  • 法律事務所に勤務している現役の事務職員、公務所または企業その他団体において弁護士の事務を補佐する者

※実務経験年数については不問。研修のみの受講、もしくは受験のみ、研修受講・受験の両方を行うことも可能。

受験費用

  • 試験受験費用 5,400円
  • 研修受講費用 無料

※DVD・テキストは有料

出題範囲

事務職員能力認定制度に基づく研修会実施科目から出題(基本8科目、応用7科目)。

【基本】
  • 民事訴訟と事務職員の役割
  • 民事執行・債権執行
  • 民事保全手続
  • 債務整理総論、破産ならびに個人再生手続の概要
  • 戸籍・登記簿の仕組みと見方
  • 家事手続・人事訴訟
  • 相続
  • 刑事・少年事件、事務職員倫理
【応用】
  • 訴訟以外の民事手続、裁判外手続
  • 不動産競売、その他の民事執行
  • 自己破産手続・個人再生手続
  • 破産管財
  • 成年後見
  • 登記・供託・担保取消
  • 民事訴訟の構造・弁護士倫理と事務職員倫理

研修のみの受講も可能

日弁連が主催している事務職員能力認定試験は、試験とは別に全国統一の事務職員研修があります。2018年8月までは有料でしたが、2018年9月から研修の受講費用は無料となり、弁護士の受講も可能となり、研修のみを受講するという人も多いようです。

実施される研修は、基本的に事務職員能力認定試験の出題範囲に沿ったもので、基本8科目・応用7科目で行われます。基本研修は入所後2年~5年程度の初級~中級職員が対象ですが、入所したばかりの新人の方も、それ以上のベテランも受講することが可能です。

研修は、東京の弁護士会館で行われる中央研修と全国各地の弁護士会で行っている弁護士会研修の2つがあり、独自の講義を含めた研修会を行っているところや申込者へ個別にDVDを貸し出している弁護士会もあります。

個人でDVDを購入して勉強することも可能

上では集合研修や各地の弁護士会で行われている研修会について紹介しました。これとは別に、DVDダイヤテキスト代金はかかってしまいますが、個人でDVDを購入して個人研修という形で受講することも可能です。

DVDやテキストを全部揃えると3万円近くかかってしまいますが、時間や場所を選ばず受講でき、復習にも活用できる点がメリットとしてあげられます。

その他、パラリーガルに役立つ可能性が高い資格

パラリーガル認定資格以外にも関連資格はさまざま

前章までで一般社団法人日本リーガルアシスタント協会(JLAA)主催のパラリーガル認定資格試験と、日本弁護士連合会(日弁連)主催事務職員能力認定試験の2つを紹介しましたが、これらはあくまでもパラリーガルとして業務をこなす上での資格です。

実は、これ以外にもパラリーガルを目指す上で持っておくといい資格はたくさんあります。

  • ビジネス実務法務検定(1級~3級)
  • ビジネスコンプライアンス検定(初級・上級)
  • 個人情報保護士
  • MOS(マイクロソフト・オフィス・スペシャリスト)
  • 秘書技能検定(1級~3級)
  • 簿記検定(2級~3級)
  • TOEIC(750点~800点以上)

ビジネス実務法務検定

この中でも持っておいて損のない資格は、ビジネス実務法務検定です。

同検定は、ビジネスにおいて想定されるさまざまな法務知識が問われる検定試験で、3級ではビジネス実務法務の法体系や債権の管理と回収、2級では緊急時の債権回収や倒産に関する処理手続きなどが出題範囲にあります。

これらはパラリーガルの業務とも重なる部分があるので、事前に持っておくといいでしょう。

ビジネスコンプライアンス検定・個人情報保護士

直接関係はありませんが、ビジネスコンプライアンス検定個人情報保護士の資格を持っておくと、他のパラリーガルとは違う分野の仕事を任せてもらえる可能性があり、印象度としては高くなる可能性があります。

MOS・秘書技能検定・簿記検定

基本的な事務処理能力があるかどうかを判断するための資格として、MOSや秘書技能検定を持っておくと何かと重宝します。

特に、パラリーガルの業務では金額計算や図表、書類作成などが出てくるので、パソコンスキルが必要です。その際にMOSがあれば、基本的な事務処理能力があることを証明できます。

また、小さい事務所であれば秘書業務を任せられることがあります。秘書技能検定を持っていると、日常業務はもちろんのことビジネスマナーを身につけることができるので、資格欄にこの資格の名称があると「ビジネスマナーが備わっている」と見てもらえます。

簿記検定も同じ理由で、特に規模が大きくない事務所であれば弁護士秘書や法律事務の他に経理も兼務することが多くなります。そこで、面接の時点で「経理はできますか?」と聞かれることがあります。

その際に、「できません」と答えるより、「実務経験はありませんが、簿記3級を取得しています」と答えると印象もいいでしょう。あくまでも余裕があればですが、持っておくといい資格です。

TOEIC

最後に、外資系の企業法務を行う事務所や翻訳業務があるところでは、TOEICが必須となっているところがあります。

どのあたりのスコアを求められるかは事務所によって異なるものの、だいたい750点~800点以上を求められると考えたほうがいいでしょう。

パラリーガルに関する資格が取れる学校・講座

AG法律アカデミー

AG法律アカデミーは、一般社団法人日本リーガルアシスタント協会(JLAA)のパラリーガル資格認定試験講座の指定校になっています。

もう一つ日本弁護士連合会が主催する事務能力認定試験があるものの、こちらは現役の法律事務職員を対象にしているため、現時点では未経験者がパラリーガルの資格を取得するためには、AG法律アカデミーのパラリーガル養成講座を受講後、認定試験に合格するしか方法がありません。

また、法律事務所によっては得意・不得意があるため、特定分野の法務知識はあっても、別分野の法務知識はないということもありえます。そういうときに、パラリーガルの資格講座を受講することで、未経験分野の法務知識を身につけるといった活用法も考えられるでしょう。

地方であれば通信講座の受講も可能

通学コースは、東京・大阪しかないので、通学が難しい地域に住んでいる場合は通信コースで受講することになります。

授業内容やサポート内容についても、通学コースと同様の内容で行われるので、地方に住んでいても安心です。

就職支援も万全の体制で行っている

パラリーガル養成講座の魅力は、履歴書や職務経歴書といった応募書類の添削、求人の紹介などといった就職サポートを行っている点です。

面接の練習なども行ってもらえるので、まったくの未経験でも安心して資格取得に専念できます。

日本弁護士連合会

こちらは現役の法律事務職員が対象ですが、法律事務職員や企業・団体などで弁護士の業務補佐をしている人向けに、各種研修を提供しています。

以前は有料の研修でしたが、昨年9月から無料となったので、より受講しやすくなっています。首都圏であれば中央研修を受けることができますし、地方であれば各地区の弁護士会が主催している研修会を受けることも可能です。

内容は少し高度になるかもしれませんが、積極的に受講してみるといいでしょう。

法律事務所によっては高く評価される

弁護士寄りの団体が主催する認定制度なので、「資格」ではない点が弱点となります。

しかし、法律事務所で手掛けることが多い項目を中心に講座が作られており、ある程度実務経験を積んだ中堅職員を対象にしたカリキュラムとなっています。

また、試験に合格したら名簿に名前が載るので、法律事務所間の転職であれば高く評価される可能性がある点がメリットです。

パラリーガルの資格・試験まとめ

未経験からパラリーガルを目指すならパラリーガル認定資格試験を受けよう

パラリーガル自体は、特別な資格がなくてもなることはできます。

ここで紹介した資格も、あくまでも民間資格や「認定試験」なので、厳密に言えば資格というわけではありません。それでも、法律事務所の中では入所後のミスマッチをできるだけ防ぐために、これらの資格を見て判断しています。

すでに法律事務所に入所しているのであれば、日本弁護士連合会(日弁連)が行っている研修会に参加して、その後認定試験を受ける方法があります。ただし、これはすでに実務経験を積んでいる法律事務職員が対象です。

法律知識のないまったくの未経験から目指すのであれば、日本リーガルアシスタント協会(JLAA)のパラリーガル認定資格試験講座を受講して、試験に合格する方法やビジネス実務法務検定や秘書検定を取得して、「未経験者歓迎」の法律事務所に入所するという方法もあります。

その他、語学が得意な人であれば、中国語検定やTOEICを取得しておくと、その後の業務の幅が広がりやすいのでおすすめです。

パラリーガルの参考情報

平均年収300万円~500万円
必要資格 必要資格なし
資格区分 -
職業職種法律・政治

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