能楽師になるには?必要条件や向いている人の特徴などを具体的に解説
能楽師になるには、能楽の家に生まれて稽古をしながらその道に進むのが一般的とされていますが、そうでない場合も能楽師になることが可能です。では能楽師になるには、他にどのような方法があるのでしょうか?今回は、能楽師になる方法や必要とされる適性について詳しく解説します。
能楽師になるには何が必要?
能楽師の家に生まれた人が受け継ぐ
能楽とは、能と狂言を合わせた室町時代から続く日本の伝統芸能のことです。能楽師になる過程において一般的なのは、先祖代々から能楽を受け継いできた家に生まれ、幼い頃から訓練を受けて伝統を引き継ぐ方法です。
ただし、能楽の家に生まれたからといって必ず能楽師になれるわけではありません。内弟子として所属する宗家で訓練を受け、実力を積み上げ、その力が人に認められ、推薦によって能楽教会会員になって初めて「プロの能楽師」として活動することができます。
能楽の家に生まれた人の多くは、親や祖父ではなく外の他の師匠に弟子入りして修行をするのが一般的といわれています。
国立能楽堂の研修生になる
能楽の家元に生を受けた人以外が能楽師になる方法に「国立能楽堂」の研修生になる方法があります。この制度は能楽の後継者を育てるために、「独立行政法人 日本芸術文化振興会」が能楽宗家会・公益社団法人能楽協会・一般社団法人日本能楽会と合同で研修生を募集する制度です。
応募資格は「中学卒業以上かつ原則として年齢23歳以下の者」とされており、選考方法は作文・面接・簡単な実技試験の3項目。研修は6年間ありますが8か月以内に適性審査が行われ、正式な合格が発表される仕組みです。適性審査に合格した人には、伝統芸能伝承奨励費の貸与制度の資格が与えられます。
大阪能楽養成会
大阪能楽養成会は昭和38年に設立された関西能楽界の能楽伝承のための組織です。能楽協会大阪支部・大阪能楽養成会講演会の協力のもと、能楽の後継者を育てる支援を行っています。平成23年度からは一般公募でも研修生の募集を開始しました。
主な応募資格は「15歳以上23歳以下の心身共に健康な者」で、高校生と大学生の応募も可能です。また、将来プロの能楽師を目指し、主要稽古場へ通学できることも条件とされています。
書類審査を通過した人には、面接・適性検査(簡単な実技試験等を含む)が行われ、合格者は4年(予科研修1年・本科研修3年)のAコースまたは6年(予科研修3年・本科研修3年)のBコースに分かれ、数か月後の最終選考を受ける必要があります。
Aコースは集中的に研修を希望する人、Bコースは学校や仕事に行きながら研修を受ける人のために設置されています。両者ともすべての課程を習得し、専任講師による指導のもとで能楽師としてデビューします。
能楽師に直接弟子入りする
一般家庭に生まれ、研修機関に属さずに能楽師に直接弟子入りしてプロを目指す方法もあります。当然給与は発生しません。通いでの修行もありますが、その多くは住み込みの修行で朝から晩まで舞台や家の掃除、師匠の身辺の世話などをしながら、空いた時間に能楽の修行を行います。
弟子入りするということは、プライベートのない生活を送ることになるので、途中で脱落する人も多く存在するのが現状です。能楽が好きという気持ちとプロの能楽師になる強い意志を貫いた人だけが、修行を終えることができる、厳しい世界といわれています。
能楽師に向いている人、適性がある人
「能楽を後世に残す」という強い信念のある人
能楽の世界はプライベートや自由のない修行に始まる、とても厳しい世界です。また、上下関係がはっきりしているので、礼儀や作法、言葉遣いにも気を遣わなければなりません。他にも、修行中は給与や賃金が発生することはなく、プロになってもお金を追求する働き方はできません。
能楽師はそのような環境のなかに身を置いても「能楽を後世に伝える」という強い信念を持ち続けることが大事であり、その心意気があってこそ生涯にわたってプロとして活躍することができるのです。
チームワークを大切にできる人
能楽師と一口にいっても、シテ方・ワキ方・囃子方・狂言方の4つに分類されます。シテ方は主役、ワキ方は脇役、囃子方は楽器演奏、狂言方は狂言(アイ)のようにはっきりとそれぞれの役割が決まっています。
また、囃子方は小鼓・大堤・太鼓・笛の4種類で構成されています。このように、能楽はきっちりとした分業制の上に成り立っているので、シテ方の人が狂言方をしたり、囃子方の人がワキ方をしたりするようなことは絶対にありません。
舞台に立つ能楽師はそれぞれの役目を果たしながら、お互いの呼吸や間を読み取りつつ演じることが重要視されます。そのため、チームワークを大切にできる人が、よい舞台を作り上げるうえで大事な要素となります。
一生探究心を持ち続けられる人
どの芸事にも共通することですが、能楽はプロになったからといって芸が頂点に到達したということにはなりません。能楽師は完璧な状態に到達するために一生をかけて修行を行い、そのためには常に探究心を持ち続けることが大切です。
日々の研鑽と訓練を積み上げて、努力に努力を重ね、能楽を極めようとする人のみが生涯続けられる仕事といえるでしょう。
体力と記憶力に自信のある人
能楽師は忙しい人になると1か月の間にいくつもの公演をこなします。また、能楽師の舞台を見たことがある人なら想像しやすいですが、舞台に出演している最中は中腰であったり、立つとき座るときに関わらず、楽な姿勢のまま演じたりすることはほとんどありません。
また、連日続く公演では同じ内容の演目を続けるのではなく、毎回違う内容を演じる必要があり、内容によっては舞台が長時間になることも多々あります。公演以外にも自分の稽古や弟子の指導もあり、忙しい時は休日が取れないことも珍しくありません。
このような忙しいスケジュールのなかで公演をこなすには、体力や記憶力が不可欠とされています。
能楽師になるための学校・教室
能楽は養成機関に所属したり内弟子に入ったりする以外にも、施設や大学に入学して学ぶこともできます。以下は能楽を学ぶことができる大学や機関です。
法政大学・野上記念法政大学能楽研究所
野上記念法政大学能楽研究所は昭和27年(1952年)4月に創設された「能楽を研究・調査し、研究の発展と振興に寄与すること」を目的につくられた施設です。この施設は能楽研究を行い、新しい分野を開拓した元法政大学総長「野上豊一郎博士」の没後2年目に設けられました。
重要文化財を含む約4万点の資料や文献があり、世界的な能楽研究の拠点として活動に取り組んでいます。初回の利用では紹介状が必要ですが、能楽研究者・学生などに関係なくだれでも資料を閲覧することが可能です。
研究室を利用するためには、利用する前日までに使用図書、または種類、来室の日時等をFAXで連絡する必要があります。資料の貸し出しは行っておらず閲覧室のみで閲覧することが可能です。
原則として火・木・金曜日に開室していますが、変更の場合もあるので研究室の利用はあらかじめホームページの開室カレンダーで確認しておきましょう。
武蔵野大学 文学部日本文学文化学科(伝統文化コース)
武蔵野大学 文学部日本文学文化学科(伝統文化コース)では能楽を学ぶことができる授業があります。重要な日本文化のひとつである能楽の理解・考察・検討などをし、能楽鑑賞や実際に舞台を作って演じるなど、実体験をすることで、視野を広げることができます。
1年次に始まる入門ゼミから4年の卒論ゼミまで専門分野を学びますが、それ以外の興味のある科目の授業も自由に受けることが可能です。さらに希望があれば、図書館司書や中高の国語科教員免許の取得をすることもできます。
公益社団法人 能楽協会で稽古場を見つける
公益社団法人能楽協会では、能楽に興味のある人に対して「お稽古事」として能を教えている教室を紹介しています。内容はシテ方・ワキ方・狂言・囃子方(笛・小鼓・大鼓・太鼓)の4種。全国にある稽古場を探すなら、ホームページの「稽古場サーチ」で検索したり、直接問い合わせをするとよいでしょう。
稽古場によって練習の頻度や月謝はさまざまですが、自分の希望に見合った教室を探すことができます。個人教室だけでなく団体稽古、年齢も幼児から大人まで多様にあるので、能楽の稽古に興味がある人は一度調べてみるとよいでしょう。
能楽師になるには?まとめ
能楽の家に生まれなくても能楽師になれる
能楽師になるには、能楽の家に生まれなくても、直接師匠に弟子入りしたり、国立能楽堂などの研修生になったりするなどの色々な方法があります。高校や大学に通いながら研修生として稽古を受け、プロを目指すことも可能です。
能楽師の道を目指したい人、また興味のある人は、ぜひ一度チャレンジしてみるとよいのではないでしょうか。
能楽師の参考情報
平均年収 | 400万円〜500万円 |
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必要資格 |
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資格区分 | 試験合格 |
職業職種 | 芸能 |
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