家庭裁判所調査官の資格・試験とは?裁判所職員採用総合職試験の概要などについて解説

家庭裁判所調査官の資格・試験とは?裁判所職員採用総合職試験の概要などについて解説

家庭裁判所調査官は国家公務員に属します。家庭裁判所調査官を目指す上で必ず受けなければならない試験として裁判所職員採用総合職試験があります。そして、裁判所職員採用総合職試験に合格するのはとても難しいとされていますが、一体どのような内容なのでしょうか。本記事では、家庭裁判所調査官に関する資格・試験についてご紹介します。

家庭裁判所調査官の資格とは?

裁判所職員採用総合職試験に合格することで家庭裁判所調査官となる資格を得られる

家庭裁判所調査官を目指すなら、裁判所職員採用総合職試験(家庭裁判所調査官補)の合格が必須です。

ここでは受験資格や試験内容がどのようなものか詳しく見ていきましょう。

裁判所職員採用総合職試験の概要

受験資格と2つの区分

裁判所職員採用総合職試験(家庭裁判所調査官補)は「大卒程度区分」と「院卒者区分」の2つの領域に分かれています。

これらは裁判所が定めた課程を修了している人、または卒業している人や卒業見込みの人、さらに日本国籍を有していることが条件とされています。

年齢制限も設定されており、大卒程度区分は21歳以上30歳未満、院卒者区分は30歳未満と決められています。また、国家公民法第38条の規定に該当する人は試験を受けることができません。

申し込み方法と試験スケジュール

裁判所職員採用総合職試験の受験申込み方法は郵送またはインターネット。ただし、郵送はインターネットが利用できない時のみと決められているので、基本はネット申込みと覚えておくとよいでしょう。

家庭裁判所調査官補の総合職試験は第1次と第2次(2回)に分かれて実施されます。2019年の採用試験では、第1次は5月中旬で合格発表は5月下旬、第2次試験は6月中に2回行われ、7月中旬に合格が発表されています。

合格通知書は送付されてきますが、発表日に「裁判所職員採用試験」のページなどで確認することも可能です。

試験内容

裁判所職員採用総合職試験(家庭裁判所調査官補)の試験内容は、第1次試験と第2次試験に分かれています。2020年度から採用試験の実施方法が今までとは異なるところがあるので注意しましょう。

1次試験

2019年度までの採用試験の第1次試験では、多肢選択式の基礎能力試験と記述式の専門試験の両方が出題されていました。2020年度からは記述式の問題が廃止され、基礎能力試験だけの出題となりました。

新しい基礎能力試験の内容は発表されていませんが、2019年度の試験内容は、公務員として必要な基礎能力試験の知能分野27題と知識分野13題の合計40題が出され、解答時間3時間です。

2次試験

2次試験は「記述式の専門試験」と「個別面談・集団討論を行う人物試験」が行われます。専門試験と人物試験はそれぞれ別の日程が用意されているので合計2日間試験を受けることになります。

専門試験の内容は「心理学・教育学・福祉・社会学・法律学」の合計5領域から15問が出されます。受験者はその中から任意で2題を選択して解答しなければなりません。2020年度の出題される領域や出題数については今までとそれほど変わらない予定とされています。

ただし、2020年度からはそれまでの科目選択の制限(児童福祉論と高齢者福祉論・民法のみ2題・刑法のみ2題の選択は禁止されていた)が撤廃されたことが今までと異なるので注意しましょう。2次試験の人物試験の詳しい内容は、集団討論と2回の個人面談です。

人物試験は家庭裁判所長官補の採用試験で大きな配点ウェイトを占めるので、十分な対策が必要です。最初に行われるのは5~6人のグループを組んで与えられたテーマに沿って話し合いをする集団討論。テーマが発表されたら約10分間、自分の考えをまとめる時間が与えられ、各々A~Eの名前を振られて話し合いを行います。

個人面談では受験者1人に対し面接官が3人配置され、およそ20~30分間の時間で質疑応答がおこなわれます。聞かれる内容は、志望動機や抱負・自分の長所と短所・自己PR・今まで取り組んできたチーム活動の内容など。

また「どうして他の心理系公務員を選ばずに家庭裁判所調査官になりたいか」などの質問も頻繁に出されるので、他の心理系公務員との違いをよく調べて十分な解答ができるように準備しておくとよいでしょう。

家庭裁判所調査官の資格の難易度・合格率

家庭裁判所調査官補の試験は、国家公務員の中でも難易度の高いキャリア組の試験とよく比べられるほど難しい試験と言われています。

受験資格は大卒程度区分または院卒者区分の2つの分野に分けられていますが、難易度の高い大学や大学院の卒業者、また何度もこの採用試験に挑んでいる人などが多く受けるため、徹底した受験勉強をする必要があります。

ここでは直近2年間の受験者数や合格率を見ていきましょう。

平成30年度の合格率

平成30年度に実施された「院卒者区分」における家庭裁判所調査官補の第1次有効受験者数は110人で、合格は約半数の68人です。第2次試験の有効受験者数は66人で最終合格者数は15人でした。倍率は(第1次の有効受験者数と最終合格者数で計算)7.3倍です。

「大卒程度区分」における第1次有効受験者数は398人で、合格者は約半数の203人です。第2次有効受験者数183人の内最終合格者数は45人で倍率は8.8倍でした。

平成29年度の合格率

平成29年度に実施された「院卒者区分」における家庭裁判所長官補の第1次有効受験者数は138人で、合格者は64人です。第2次試験の有効受験者数は56人で最終合格者数は14人でした。倍率は9.9倍です。

「大卒程度区分」では第1次有効受験者数413人中合格者は190人、第2次有効受験者数182人の内最終合格者は42人で倍率は9.8倍でした。

直近2年の倍率は7.3~9.9倍

上記の通り、平成30年と29年の2年間の倍率は7.3~9.9倍と大変高く、家庭裁判所調査官補の試験難易度の高さがうかがえます。難易度の高さ以外の特徴としてあげられるのは女性受験者数の多さです。

大卒程度・院卒者にかかわらず、申込みや実際の受験者数の半数以上(約6割)を女性が占めています。裁判所職員の仕事は福利厚生制度が充実しており、生涯にわたって働きやすい環境が整っている理由から、多くの女性が採用試験に挑んでいると考えられます。

家庭裁判所調査官に役立つ可能性が高い資格

家庭裁判所では家事事件または少年事件を多く取り扱います。ここでは、少年事件に関わる際に役立つ資格を紹介しましょう。

プロフェッショナル心理カウンセラー

家庭裁判所調査官が関わる心理カウンセラーは、一般的に鑑別所などで働いています。心理カウンセラーは精神的に不安定、心に葛藤や傷を持っている未成年に対してケアやカウンセリングを行い、不安要素を取り除くことを目的として働いています。

家庭裁判所調査官は、補導や逮捕された未成年に面談から審判まで接する機会が多くあるので、少年心理を理解したり、心のケアに関しての知識を有していたりした方が未成年に接する上で知識を役立てることができるでしょう。

今まで「心理カウンセラー」の資格は、さまざまな団体が独自の基準で設置していたため、資格を取得しても質にばらつきがあり問題視されてきました。

しかし「プロフェッショナル心理カウンセラー」の資格は、一般社団法人全国心理業連合会が管理運営している全国統一資格なので、合格すれば心理カウンセラーとして一定のレベルがあることが証明されます。

この資格は国家資格に匹敵するとも言われる「上級」と心理カウンセラーとしての基礎知識があることを証明できる「一般」の2種があり、基本的には全国心理業連合会の認定する教育機関で履修プログラムを修了して推薦を受けることで受験資格を得ることが可能です。

試験は年に2回開催され、筆記・小論文・口頭試験などが実施されます。

家庭裁判所調査官の試験合格に役立つ学校

家庭裁判所調査官の資格取得に向けてどのような学校が有利か紹介します。

大学・大学院は文系学部が有利

家庭裁判所調査官補の試験に合格するには、大学または大学院で理系よりも断然文系の学部で学ぶ方が有利です。特に教育学部・法学部・社会福祉学部・心理学部・社会学部では採用試験を受けるときに役に立つ勉強ができるでしょう。

公務員予備校を活用する

十分な試験対策をする場合は公務員予備校を活用するとよいでしょう。心理系公務員とされる家庭裁判所調査官補の採用試験に対応している講義にはWeb学習の「クレアール」やWebと通学両方が可能な「LEC東京リーガルマインド」などがあります。

合格の鍵を握る第2次試験の個人面接や集団討論の対策も行ってくれるので、独学だけは不安な場合は公務員予備校を活用して試験に臨みましょう。

家庭裁判所調査官の資格・試験まとめ

裁判所職員採用総合職試験の受験には十分な対策を

家庭裁判所調査官という職業を目指す上で唯一の就職方法となるのは、裁判所職員採用総合職試験に合格することです。

倍率の高い試験を突破するには筆記試験の対策はもちろん、高いウェイトを占める人物試験の対策を入念におこなうことが重要になるでしょう。

独学での学習も可能ですが、不安な場合は公務員予備校などを活用して十分に対策を練って受験しましょう。

家庭裁判所調査官の参考情報

平均年収500万円~700万円
必要資格
  • 裁判所職員採用総合職試験
資格区分 試験合格
職業職種法律・政治

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