義肢装具士の資格・試験とは?義肢装具士国家試験の概要と合格の秘訣
義肢装具士は、義肢や装具の製作だけではなく、義肢装具を付ける患者さんのリハビリやメンタルケアなども行う仕事です。そうした義肢・装具に関するプロフェッショナルとしての義肢装具士の資格・試験について、この記事で解説します。
義肢装具士の資格とは?
義肢装具士という仕事は、事故や病気などで四肢の一部を失った方に向け、義手義足などの「義歯」を製作したり、あるいは事故などで骨折したり脱臼したりした際に、患部を保護する「ギブス」などの「装具」を製作する仕事です。
この義肢装具士という仕事をするためには、厚生労働省が行う「義肢装具士国家試験」に合格する必要があります。「義肢装具士国家試験」とはどのような試験なのでしょうか。
義肢装具士国家試験の概要
「義肢装具士国家試験」は、国家資格である「義肢装具士」の免許を受けるために必要な資格試験です。この試験は義肢装具士法第11条の規定に基づいて行われ、厚生労働省医政局が監修し、財団法人日本テクノエイド協会が試験実施に関する事務を行います。
義肢装具士国家試験は例年3月上旬に実施され、3月の下旬に合格発表が行われます。試験において問われる内容は、義肢装具士として働くにあたり、義歯や装具の装着部位の採寸・採型、製作及び身体への適合を行うにあたって必要な知識となります。
試験においては実技試験はありませんが、義肢装具士養成所での実技過程や実技実習において、実技の技術を学ぶこととなります。
義肢装具士養成所とは?
義肢装具士養成所と呼ばれる学校は、義肢装具士を養成するために作られた学校・過程のことを指します。
専門学校として設置されている場合には3年制、大学の場合には4年制となっています。義肢装具士として実際に活動するにあたり、まずこれら義肢装具士養成所にて修業が必要となるわけですが、その修業年数は学歴によって異なります。
大学・短大等で1年以上修業したうえで養成所に入った場合には2年以上、高校を卒業して養成所に入った場合には3年以上、高専などで4年以上修業をして養成所に入った場合には2年以上となります。なお、義肢・装具製作技能士の技能検定合格者は修業施設での1年間の修業となります。
現在、義肢装具士養成所は国立の学校が埼玉に1校、私立が5校あります。また大学では全国に私立4校があります。
義肢装具士国家試験の内容とは?
義肢装具士国家試験の試験内容は、義肢装具士法によって定められています。その内容は、以下のようになります。
臨床医学大要(臨床神経学、整形外科学、リハビリテーション医学、理学療法・作業療法、臨床心理学及び関係法規を含む。)、義肢装具工学(図学・製図学、機構学、制御工学、システム工学及びリハビリテーション工学)、義肢装具材料学(義肢装具材料力学を含む。)、義肢装具生体力学、義肢装具採型・採寸学及び義肢装具適合学と多岐にわたります。
義肢装具士として働くためにこれまで学習してきた内容の総復習となる試験であるといえるでしょう。
義肢装具士の資格の難易度・合格率
義肢装具士国家試験は、午前と午後に分けて丸一日をかけて実施されます。午前の部の試験では臨床医学大要、義肢装具工学、義肢装具材料学、午後の部の試験では義肢装具生体力学、義肢装具採型・採寸学、義肢装具適合学が行われます。試験全体を通して8割以上を得点していることが求められ、それに達しない場合には不合格となります。
義肢装具士国家試験の難易度
義肢装具士国家試験の難易度については、一般に「やや易しい」と判断される傾向にあります。これは、やはり合格率との兼ね合いがあります。とはいえ、義肢装具に関係する確実で広汎な知識が求められることは間違いないといえるでしょう。
このことから考えると、義肢装具士国家試験が「易しい」というよりは、義肢装具士となるためのベースの学習がしっかりとできている受験者にとっては易しい」と表現するべきであるともいえます。
義肢装具士国家試験の今後の難易度
これまでに行われた義肢装具士国家試験の第1回から第32回までの試験合格者の合計は、公益財団法人テクノエイド協会によれば、日本全国で5,558名という少なさです。
義肢装具については、これからの時代でよりたくさんの数が必要になるという具体的な見通しはないものの、義肢装具士を仕事にすることを目指す人が増えれば、試験の難易度は今後上がっていく可能性がありますし、また合格水準が引き上げられたりといった調整が行われる可能性はあるでしょう。
義肢装具士国家試験の合格率
公益財団法人テクノエイド協会の調査によると、義肢装具士国家試験の合格率は、第7回試験の合格率が84.8%ともっとも低く、もっとも高い試験では第16回試験で、このときの合格率は100%です。
平均すると、80%台後半から90%台を推移しており、先に述べたように合格率は決して低くありません。一方で受験者数について見てみると、第7回試験では46人でもっとも少なく、その後年を追うごとに細かく上下しつつも増加をたどり、第32回試験では263人となっています。
このことを考えますと、やはり合格率が高いという結果には、しっかりと受験対策、および学習を進めており、義肢装具士として働くことを前提とした高い知識と経験を持った人材が受験していることが合格率の高さに寄与していると考えるのが自然であるといえます。
その他の義肢装具士に関連する資格
義肢装具士となって働くには、義肢装具士国家試験に合格し、義肢装具士としての資格を得ることが最大の要件です。ただ、義肢装具士として働いていくうえで、他にも取得しておくと分野的に関連が深い資格もあります。ここでは、その一部について紹介します。
作業療法士
作業療法士は、患者の日常生活上の動作、レクリエーションなどを含めて、身体と精神のリハビリテーションを行う仕事です。また、必要に応じて患部に対する熱・光線を使った物理療法などを用いたリハビリテーションを行うほか、歩行訓練なども行います。
義肢装具を必要とする方というのは、物理的な治療が必要であることはもちろんですが、不意の事故や病気で四肢の一部を失ってしまったという方も多く、無気力や自暴自棄になってしまったりと、メンタルのケアが必要な場合もあります。
また身体についても義肢装具を装着しての生活に慣れるために、リハビリテーションは欠かせません。このようなことから、作業療法士は義肢装具士と親和性の高い資格であるといえるでしょう。
理学療法士
理学療法士は、作業療法士と名称が似ていますが、担当する職域が異なります。
作業療法士がリハビリテーションなどを主に担当するのに対して、理学療法士は、人体の基本的な動作能力、運動能力などを回復したり補うためのマッサージによるリハビリテーションやアドバイスなどがその担当の中心となります。
四肢の一部を失ってしまった方にとって、失った身体の一部の機能が他の身体の部位に負荷をかけてしまうというケースは珍しくありません。
このようなことから、理学療法士による適切なケアやマッサージを通して身体の機能を回復させつつ、義肢装具を用いたうえでの日常生活での動作や運動など、今後「義肢装具とともに生きていく」という前提でのアドバイスが可能となります。作業療法士とは異なる領域で患者をサポートする資格です。
義肢装具士の資格が取れる学校
義肢装具士国家資格を得るためには、義肢装具士国家資格試験を受験する必要があります。この試験を受験するためには、法に定める要件を満たす学校を卒業する必要があります。このような学校は全国にどの程度あるのでしょうか。
義肢装具士法における義肢装具士国家試験受験資格
義肢装具士法に定めのある、義肢装具士国家試験受験資格は、次のとおりです。
1.大学に入学することができる者で文部科学大臣が指定した大学または厚生労働大臣が指定した義肢装具士養成所で3年以上義肢装具士としての知識及び技能を修得した者
2.大学、高等専門学校または厚生労働大臣が定める学校もしくは養成所で1年(高専:は4年)以上修業し、かつ、厚生労働大臣の指定する科目を修めた者で、養成 所において2年以上義肢装具士として知識、技能を修得した者
3.職業能力開発促進法の規定に基づく義肢、装具の製作に係る技能検定合格者で養成所において1年以上義肢装具士として知識、技能を修得した者
これらのうちいずれかに該当する者でなければ、義肢装具士国家試験を受験することはできません。
義肢装具士国家試験の受験要件を満たす学校
義肢装具士国家試験を受験するためには、上記のうちいずれかの資格を保有する必要がありますが、現在のところ、先の項目のうち2および3に該当するような学校・養成所は存在せず、すべて1に該当する学校となっています。
大学では、北海道札幌市、新潟県新潟市、埼玉県さいたま市、広島県東広島市にそれぞれ私立校があり、養成所では埼玉県所沢市に国立養成所、私立養成所は北海道恵庭市、東京都新宿区、愛知県名古屋市、兵庫県三田市、熊本県熊本市の5校があります。
これら10校を合計した1学年の定員数は313名であり、限られた人数の受験者数となる理由はここから導くことができます。
義肢装具士の資格・試験まとめ
確かな知識と技能を持っていることを表す国家資格
義肢装具士は、一般にイメージされる「医療職」とは、若干働き方が異なる部分があるでしょう。ときに患者さんと向き合い、ときに義肢・装具という「モノ」とも向き合わなければならない仕事です。
高い難易度と高い合格率は、義肢装具士として働く人々に確かな知識と技能があることの現れでもあります。
義肢装具士の参考情報
平均年収 | 300万円~400万円 |
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必要資格 |
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資格区分 | 国家資格 |
職業職種 | 心理・福祉・リハビリ |
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