裁判官の資格・試験とは?司法試験、司法修習生考試等について解説

裁判官の資格・試験とは?司法試験、司法修習生考試等について解説

裁判官など法曹になるためには司法試験に合格しなければいけないことは有名ですが、その司法試験にも受験資格があったり、司法試験以外にも合格しなければいけない試験があったりします。この記事では裁判官になるために必要な試験の流れ、合格率や難易度などをまとめました。

裁判官の資格・試験とは?

まず司法試験の受験資格を得なければいけない

裁判官になるためにはまず司法試験に合格しなければいけません。司法試験とは弁護士、検察官、裁判官になるための国家試験です。この弁護士、検察官、裁判官は法律を扱う専門職であり、総称して法曹と呼ばれます。

司法試験の受験資格を得るにはふたつのコースがあり、ひとつは法科大学院に合格し課程を修了するコース、もうひとつは司法試験予備試験に合格するコースです。

法科大学院に進み、カリキュラムを修める

法科大学院は法曹に必要な学識や能力を養成することに特化した教育を行う専門職大学院で、ロースクールとも呼ばれています。

法科大学院に入るためには5月と6月に実施される適性試験を受けた後、各大学の入学試験を受けるという流れでしたが、法科大学院の志望者が減少しており、志望者の確保に障害になるとのことから平成30年度の適性試験は行われず、以降の試験を行うかについても未定になっているため、適性試験は廃止される方向に向かいつつあります。

法学部以外の出身者でも入ることができ、入学前に法学を学んでなかった人は3年間かけて法学を学ぶ法学未修者コースに進み、法律基本科目を修得済みの法学部出身者は2年間の法学既修者コースに進みます。

司法試験予備試験を受け合格する

司法試験予備試験は、法科大学院を修了した人と同程度の学識や能力を持っているか判定する国家試験です。司法試験の受験資格を得るためには法科大学院を修了しなければいけませんが、時間や金銭などの理由で法科大学院に通うことのできない人のために作られた試験です。ちなみに受験資格などはなく、学歴や年齢関係なく受験が可能な試験です。

法科大学院に進学すると2年から3年以上の時間と学費が必要になるのに対し、早ければ大学1年生の段階でも受験して合格すれば司法試験の受験資格を得られるので、本来は予備的な制度ですが、能力の高い学生はむしろこちらのコースを辿って司法試験に臨むような流れにもなってきています。

試験は5月に行われる短答式試験、7月に行われる論文式試験、10月に行われる口述試験の3段階に分けられ、論文式試験を受験できるのは短答式試験の合格者のみ、口述試験を受けられるのは論文式試験の合格者のみと、だんだんふるい落とされる形式になっています。

司法試験を受ける

司法試験は受験資格だけでなく受験を受けられる期間と回数も決まっています。法科大学院を修了した人は修了後最初の4月1日から5年間の間5回まで司法試験を受験することができ、司法試験予備試験合格者は、合格発表後最初の4月1日から5年間の間5回まで受験することができます。

試験内容は短答式試験と論文式試験のふたつにわかれ、短答式試験の合格ラインを達成した人のみ、短答式試験と論文式試験の成績を総合して合否の判定が成されます。各科目の中で最低ラインを下回った科目がひとつでもあればその時点で不合格となる厳しい試験です。

司法修習を受け、修了試験の考試に合格する

司法試験に合格しただけではまだ法曹の資格を得ることはできません。司法試験合格者は司法修習を受けることになります。裁判官、検察官、弁護士どの志望者も同じ課程を受けるようになっています。司法修習生は全国各地の裁判所で1年間の修習を受け、この間は給費も支払われます。

司法修習の最後には司法修習生考試という修了試験があり、この試験に合格すると法曹になることができます。法曹になるためには司法試験と司法修習生考試のふたつの試験に合格しなければならないことから、二回目に受ける司法修習生考試のことは「二回試験」と呼ばれています。

裁判官の資格の難易度・合格率

法科大学院

法科大学院は設置されている大学によって特徴があり、入試の概要・難易度も大学によって異なります。

どうしてその法科大学院を選んだかなどの志望理由を書く自己評価書、語学、小論文試験、面接、法律科目試験などが試験科目になります。志望する大学の試験科目や出題形式を事前によく把握しておかなければいけません。

司法試験予備試験

短答式試験、論文式試験、口述試験の3段階の試験がある司法試験予備試験は、最終合格率4%前後と極めて難易度の高い試験です。

短答式試験

憲法、民法、商法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法、行政法の基本7法に加え、一般教養科目が試験科目になります。基本7法が各30点ずつ、一般教養科目が60点の合計270点のうち、6割強の160点以上を取れれば合格できるといわれています。合格率は毎年20%ほどです。

科目数が多い上に、各科目から出題される問題の範囲が幅広く、試験範囲すべてを押さえておく学習量の多さが求められます。

論文式試験

憲法、民法、商法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法、行政法の基本7法に加え、一般教養科目と、民事実務、刑事実務、法曹倫理からなる法律事務基礎科目が試験範囲になります。基本7法と一般教養科目、民事実務、刑事実務が各50点ずつ、合計500点のうち、5割強を取れれば合格できるといわれています。

短答式試験に比べれば出題範囲が限定されているとはいえ、短答式試験の合格者のうち20%ほどしか合格できないレベルの高い試験です。

口述試験

民事実務と刑事実務の2つが問われる試験で、2人の面接官と1人の受験生との面接で行われます。合格率は9割ほどですが、極めて難易度の高い試験を2つ突破した人だけしかこの試験を受験できないので、そもそもの分母がハイレベルゆえに高い合格率になるのだと思われます。

司法試験

司法試験の合格率はその年によって変わりますが、平均すると25%ほどで、受験資格の厳しさを考えるとかなり難しい試験だと言えます。

また、法科大学院別の合格率ランキングを見るとどこの法科大学院より予備試験合格者の合格率が高い状況がありますが、これはそもそも予備試験の合格が非常に難しい試験であり予備試験合格者はすでに高い能力を持っている、予備試験の形式と司法試験の形式は近いので予備試験対策がそのまま司法試験対策になっているなどの要因があると思われます。

短答式試験

憲法、民法、刑法の3科目が試験科目になります。憲法が50点満点、民法が75点満点、刑法が50点満点の配点です。各科目で40%以上の点数が必須になり、総合して65%以上の点数を取らなければ短答式試験の合格にとどきません。

司法試験の受験者は短答式試験、論文式試験の両方を受けますが、短答式試験で合格の点数を取らなければ、論文式試験は採点されない仕組みになっています。

論文式試験

試験科目は憲法・行政法の公法系、民法、商法、民事訴訟法の民事系、刑法、刑事訴訟法の刑事系と、倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際関係法(公法系)、国際関係法(私法系)から1科目選択できる選択科目からなります。

配点は公法系が200点満点、民事系が300点満点、刑事系が200点満点、選択科目が100点満点の合計800点満点です。

その他の裁判官関連資格

弁護士からシフトするコースも

今まで紹介してきたのは司法試験に合格し、裁判官になるコースでしたが、「非常勤裁判官」という制度もあり、これは弁護士としての身分を持ちながら、週1回裁判所に行って民事調停や家事調停について裁判官としての仕事を行うというものです。

非常勤裁判官から常勤の裁判官になるというコースもあるので、弁護士から裁判官になるという可能性もあります。

裁判官の資格・試験まとめ

受験資格を得て司法試験に合格し、司法修習の考試に合格してはじめて法曹になれる

裁判官、検察官、弁護士の法職に就くためには、まず司法試験を受験できる資格を得ることからはじめなければいけません。受験資格は法科大学院で課程を修了する、もしくは司法試験予備試験に合格することで得られますが、司法試験を受けられるのは修了あるいは合格後5年間の間5回までと制限があります。

司法試験に合格した後は司法修習という1年間の研修を受け、研修の最後にある司法修習生考試という2回目の試験に合格してはじめて法曹の資格を得ることができます。

裁判官の参考情報

平均年収400万円~1000万円
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  • 法曹資格
資格区分 国家資格
職業職種法律・政治

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