裁判官の仕事内容とは?やりがいや魅力について解説
裁判官の仕事内容は、ひとことで言えば裁判を進めていくことです。しかし、その裁判にも様々な種類がありますし、審理だけが裁判官の仕事ではありません。裁判官の具体的な仕事内容について、以下に解説していきます。
裁判官の仕事内容とは?
裁判というのは、人生において経験することが少ないイベントですが、人々の権利関係の確定を行う民事裁判、そして犯罪行為に対する法的判断を確定する刑事裁判など、いずれも社会的・法秩序的にも重要な役割を持つイベントです。
裁判官は、自身の判断がそのまま裁判の結果を確定させることも珍しくなく、その判断により人々の人生を左右することも多くあることから、重大な責任を持つ職業であるといえます。以下に、裁判官の具体的な仕事内容について解説していきます。
裁判官の仕事内容:民事裁判
民事裁判では、まず他人の権利を侵害したり侵害されたりといったことによって生じた損害賠償請求といった裁判が、代表的なケースのひとつであるといえるでしょう。この他、金銭を貸した、借りたといった使用貸借の契約関係の処理、また相続に関するトラブルを解決する裁判が挙げられます。
また、私たち一般市民に最も身近な裁判としては、離婚などの法的身分に関する裁判がそれに当たるでしょう。裁判による離婚や調停なども裁判官の仕事です。これらの裁判に際して、双方の言い分を聞き、それらを法律・法令に当てはめ、また過去の裁判例、つまり判例に当てはめるなどの判断を行い、民事裁判の決着を導きます。
民事裁判の例
民事裁判は、我々一般市民同士での権利関係の処理を行います。民事裁判の難しいところとしては、やはり双方に言い分があり、どちらも法的に「裁かれる立場ではない」というケースもあります。裁かれる立場ではなかったとしても、法的関係を確定したり、与えた損害について、賠償したり補償したりといったことが必要になる場合があります。
金銭関係だけではなく、たとえば離婚の訴訟などにおいては、子どもとの面会関係など、お金以外の部分でも整理しなければならないことは非常に多くなります。また、刑事事件と関連して民事裁判が同時に訴訟されることもあり、たとえば暴行や傷害などの結果、怪我をしたり入院したりといったことで損害が発生した場合には、犯罪者の刑を確定させる刑事裁判とともに民事裁判が行われます。これらの判断を行うことも裁判官の仕事内容のひとつです。
裁判官の仕事内容:刑事裁判
刑事裁判の判決を行うことは、裁判官のイメージにぴったり合うという方も少なくないでしょう。刑事裁判というと、法を犯した犯罪者について、その犯罪の態様や違法行為を確定し、被害者の存在、量刑(刑罰の量)などを確定することが裁判官の仕事です。
刑事裁判においては、刑法や刑事訴訟法といった法が用いられますが、刑法や刑事訴訟法というのは一般規定といい、解釈の余地を多く残した形で法文が定められています。そのため、これらの法を解釈することもまた、裁判官の仕事です。裁判官は法文を解釈し、その事件にもっとも適当と考えられる判決を下します。
刑事裁判の例
刑事裁判では、およそ刑法において犯罪とされている行ため、違法行為について判断します。刑法の中で私たち一般市民にもなじみの深い犯罪行為としては、暴行や傷害などの行為が挙げられます。これらの刑事事件については、それぞれのケース、事件ごとに事情が異なるため、それらの背景も判断したうえで、過去の裁判例、法学会の学説、そしてなにより今回の事件の事情などを総合判断して判決を下すということが裁判官の仕事ということになります。
刑法の判決は、被害者と加害者、なかでも被告人の犯罪の量刑を確定するのがもっとも重要であるため、事件に関連のない方々にとっては関連が薄いともいえますが、その後の裁判への影響や社会への影響も大きいため、裁判官にとって重要な仕事のひとつです。
刑事裁判の特殊性
刑事裁判は日常的に多く行われている裁判ではありますが、特にメディアにも登場するような世間的な注目度の高い裁判においては、上級裁判所への、いわゆる控訴や上告がなされる場合もあります。
このようなケースでは、裁判官の判断がそれぞれ審理の基準となり、上級裁判所では下級裁判所の判断をベースとして検討されることもあり、それぞれの事件を担当する裁判官の責任も、とりわけ重要なものになります。世間的な注目度によって職務の重要度が変わるわけではありませんが、控訴・上告に発展する事件では、その後の審理の経過にも影響を与える可能性が高いという特殊性が、刑事裁判にはあるということです。
その他の裁判官の仕事
裁判所で判断される事件は大部分が民事事件・刑事事件に分類されますし、事件数もこれらの数が合わさったものが多くなりますが、それ以外にも法的関係を確定する仕事というのは多数あります。たとえば家事事件や少年審判などがその代表例ですが、民事事件・刑事事件に含まれない裁判所・裁判官の仕事とはどのようなものがあるのでしょうか。
以下には、それらの裁判の仕事について解説します。
家事事件の審理
家事事件というのは、裁判の中でも離婚などの家庭内の紛争を解決するための裁判のことをいいます。これらの家事事件というのは、基本的に家庭裁判所の裁判官が担当します。
家庭裁判所で審理される家事事件においては、法解釈や法審理だけではなく、家庭裁判所調査官の意見、当事者から提出された証拠書類などを調査したうえでの判断が求められます。そのため、家事事件審理においては刑事事件・民事事件の審理とは若干異なる技能やスキルが求められます。私たち一般市民に馴染みの深いのが家事事件でもあるため、裁判官にとってはこれも重要な職務のうちのひとつであるといえます。
少年審判の審理
裁判官は、少年審判の審理という仕事もあります。少年審判とは、非行少年の処遇を決定する仕事です。少年事件の特殊性というのは、一般の刑事/民事事件に比べて非行少年の将来を考える必要があるということです。
現在は非行を行っている少年であっても、将来的にその経験を生かしていくことができるよう、どのような判断が必要かというようなことまで考えたうえでの判断が求められます。この国の将来を担う少年たちの未来を決定するための要素のひとつとなる判断で、これもまた裁判官の重要な仕事のひとつといえます。
知財裁判の審理
知財裁判とは、知的財産関係の裁判であり、知的財産高等裁判所ではこれら知財関連の審理を専門に取り扱います。一般には、特許権や実用新案権、著作権などについての訴訟事件を審理する場です。このほか、「非技術型」と呼ばれる事件として、意匠権、商標権、出版権、著作隣接権などの審理も行います。
これらは知的財産関係の商業を営む業界にとっては馴染み深い裁判であるほか、近年では著作権などについての話題もたびたびメディアで取り上げられるケースがあるため、徐々に一般市民にとっても馴染み深いものとなっています。複雑かつ慎重な判断が必要となるこれら権利関係の確定も、裁判官の重要な仕事です。
裁判官の仕事のやりがい
裁判官の仕事というのは、法律・法令や社会情勢に対する深い理解と高い見識が求められる非常に難しい仕事です。また、一時的な感情や人情に流されてしまうようでは、裁判官は務まりません。このように、非常に重要な役割を担う裁判官という仕事のやりがいとは、どのようなものがあるのでしょうか。
裁判官の仕事のやりがいについて、以下に解説していきます。
法律関係の争いに決着をつける
法律関係というのは、訴訟に至るまでは書類のやりとりなどで片付く場合もあります。しかし、それぞれに言い分があり争いに発展した場合には、誰かがそれを判断する必要があります。その最後の判断を行うのが、裁判所・裁判官の仕事ということになります。
裁判所・裁判官が判断して初めて、日本国の法律によってその判断が正当であるというお墨付きを得るということになるわけです。裁判官自身としては、それだけ重い意味を持つ決断となるわけですが、それがなければ当事者の争いは終わりません。これこそが、裁判官の仕事のやりがいのひとつといえます。
感情ではなく、しっかりと理論と正義を通す仕事
誰にでも感情があり、とくに争いがあるような場合には、どちらかに肩入れしてしまいがちです。しかし裁判官という立場では、そのような感情や片一方への肩入れは許されません。あくまで冷静に、正当な法律評価をすることができなければいけません。反対にいえば、それができるのは裁判官だけです。これもまた、裁判官の仕事のやりがいのひとつといえるでしょう。
裁判官の仕事内容まとめ
法律関係においては、裁判官にしかできない仕事
裁判官という仕事は、法律関係の争いを解決するという重要な仕事があります。様々な事件を担当する裁判所の裁判官は、法律に関する単純な理解だけでは足りず、過去の判例や事件の知識、社会情勢への理解など、求められる能力も非常に多岐にわたります。だからこそ、裁判官の仕事にはやりがいがあるともいえます。
法律関係の仕事においては、裁判官にしかできない仕事を担当できるというのが、裁判官の仕事のやりがいであるといえるでしょう。
裁判官の参考情報
平均年収 | 400万円~1000万円 |
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必要資格 |
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資格区分 | 国家資格 |
職業職種 | 法律・政治 |
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