弁理士の仕事内容とは?やりがいや魅力について解説
世の中には多くの知的財産があり、それらの権利を保護するための手続きを代行するのが弁理士です。弁理士は具体的にどのような仕事をする職業なのか、その仕事内容をご紹介します。
弁理士とはどんな仕事?
アイディアを権利という形にする
知的活動により、日々多くのアイディアや創作物が生み出されています。そういったものは「知的財産」として財産的な価値が認められることがあります。
知的財産はその形状、方法を他者に知られることで簡単に真似されることもあり、勝手に商品を発売されることで、発案者が損失を被ることもあります。そういった問題を防ぐため、知的財産を法的な権利として保護する手続きを行うのが弁理士の仕事です。
特許庁への出願
知的財産はその条件によって特許権・実用新案権・意匠権・商標権に分類され、それぞれ特許庁へ出願し、登録されることで権利として保護されます。
それぞれの出願は個人でも行うことができますが、その手続きは非常に複雑なため、弁理士を通さずに承認を得ることは大変困難です。弁理士は専門的な知識と豊富な経験によりその手続きを代行し、出願に必要な複雑で膨大な量の書類をまとめる手助けをします。
国際的な特許出願や権利侵害に対する対応
弁理士の仕事は知的財産に関する出願書類の作成だけにとどまりません。近年では国際的な特許出願が増加しており、その手続きが業務の主軸となってきています。
またクライアントの代理として、知的財産に関する契約の締結交渉や、契約書の作成、特許侵害の訴訟を行うことも弁理士の業務に含まれています。
弁理士の仕事の具体的な内容
知的財産権取得のための出願手続き
弁理士の代表的な業務は知的財産権の登録に関する出願手続きです。弁理士が対応する知的財産権は「特許権」「実用新案権」「意匠権」「商標権」に分類されています。
特許権
特許権は、物品そのものやそれを製造する方法、何らかの行為に関する手法といった「発明」を独占して使用することを認める権利です。商品として役立てることができるアイディアを、他人が無断で使用できないように保護することを目的としています。
特許権は恒久的なものではなく、期限が定められています。原則的に出願した日から20年間と決められており、それ以降は誰でも使用することが認められます。
なお、特許権の申請には大変時間がかかることがあり、長い場合には出願から数年以上の時間を必要とすることもあります。
実用新案権
実用新案権は、物品の形状や構造に関するアイディアを独占して使用することを認める権利です。
特許権は出願された発明が従来に存在しない新規性について審査され、その結果権利を得ることができますが、実用新案権は出願するだけで、審査が行われずに取得することができます。
そのため特許権の出願に比べて短い時間で取得することができるというメリットがありますが、反面権利侵害に対する差止・損害賠償請求を行う際に初めて審査が行われるため、場合によってはそこで内容が無効とされることもあります。
意匠権
意匠とはデザインのことで、特定の物品の形状、模様、色彩の組み合わせを独占的に使用することができる権利です。特徴的な意匠の商品に関して権利を取得しておくことで、模造品の発生を防ぐことが期待できます。
意匠権は商品や製品、それに関する部品といった工業的デザインに関する権利を保護しており、文章や画像、音楽といった文化的デザインに関する権利は著作権により保護されます。
意匠権は特許権と同様に、特許庁による審査が必要です。そのため権利の取得には長い時間が必要とされ、また内容によっては拒絶されることもあります。
商標権
商標権は、自社の商品やサービスを他社のものと区別するために使用するマークや名前を、独占的に使用することが認められる権利です。商標権の権利は基本的に「名前・ロゴが類似している」「商品・サービスが類似している」という点が判断されます。
しかし、パソコンのブランドとして商標登録された「A」という名前を他社がオートバイの名前としてつけて販売した場合、「A」という名前がパソコン名として広く世間に知れ渡っている場合、消費者を勘違いさせる恐れがあるためバイクの「A」は認められないこともあります。
商標権は社会的な認知度なども影響するため、対応には弁理士の専門的な知識が求められます。なお、商標権も特許庁への出願申請が必要であり、内容によっては否認されることがあります。
否認後の対応
特許庁による出願申請に対する審査が行われる場合、審査結果によっては否認されることがあります。
その場合、特許庁から否認となった理由が「拒絶理由通知」として通知されます。弁理士はその内容を分析し、特許として認められるためには何が必要なのかをクライアントに提案していくことが求められます。
国際特許出願の増加
ビジネスの国際化に伴い、世界各国で自社の商品を販売したいという企業は増加しています。多くの国で商品を販売する場合、同時に考えなければならないのが模倣品の防止です。そのため、出品希望先の国で特許を取得する国際特許出願が増加しています。
特許庁発表の「特許庁ステータスレポート2018」において、各年の特許出願件数の推移が公開されています。
それによれば2012年には特許全体の出願件数は342,796件、そのうち国際特許出願は53,058件でしたが、2017年には全体の件数が318,479件と減少傾向にあるのに対し、国際特許出願は62,530件と大きく上昇しています。
国際特許出願には語学力だけでなく、各国の特許に関する知識も必要とされるため、対応できる弁理士も限られる業務ではありますが、今後さらに需要が高まっていく分野として注目されていくでしょう。
弁理士の仕事のやりがい
社会の発展に貢献
弁理士の業務は特許の取得が主軸です。特許はクライアントのアイディアを権利として法的に保護するために必要であり、権利が守られる社会への発展につながっていきます。
クライアントからも感謝され、社会の発展に貢献できることに大きなやりがいを感じる弁理士も多いようです。
アイディアを形にする手伝いができる
クライアントが弁理士に特許出願の依頼に来る時点で、その発明のアイディアが出願できるほどまとまっていることは多くありません。特許の出願には細かい決まり事が多く、必要な書類の書式にアイディアを落とし込んでいくだけでも手間がかかります。
クライアントに話を聞き、すり合わせをしながら書類を作ることで、徐々にアイディアが形となっていきます。長いやり取りの末に書類が完成したときには、とても大きな達成感を感じることでしょう。
国際的な知識や語学力を生かせる
国際特許出願の増加にともない、弁理士にも語学力が求められることが多くなっていきます。そのため語学力や海外の特許事情に関する知識は、今後ますます弁理士としての活躍の場を広げてくれるでしょう。
努力により身に着けた能力が仕事の場を切り開いてくれることは大きな喜びと達成感につながっていくでしょう。
一生ものの仕事になる
弁理士が勤務する特許事務所では、中小企業からの依頼の割合が大きくなっています。扱う商品やサービスもさまざまで、広い知識と豊富な経験がなければ対応が難しいものも多く存在します。
弁理士として一人前になるには10年の修業が必要といわれており、年を重ね経験が増えるごとに対応できる案件が増え、信頼性も高まっていきます。一生働ける仕事として、安心感もあることが弁理士として頑張ることができる理由の一つになるでしょう。
弁理士の仕事内容まとめ
アイディアを権利という形にする
弁理士はクライアントのアイディアを特許権や意匠権といった権利の形にし、クライアントの知識財産権を守ることが仕事です。模倣を防ぎ、クライアントが持つ財産を守ることは社会的な貢献につながる仕事として、広い業界から求められています。
国際的な活躍の場が広がる
近年では企業の国際進出の増加に伴い、国際特許出願の割合が増加しています。世界で戦う商品やサービスの権利を守るため、弁理士は語学力と国際的な特許知識の取得が求められる時代に入ったといえるでしょう。
弁理士の参考情報
平均年収 | 700万円~1000万円 |
---|---|
必要資格 |
|
資格区分 | 国家資格 |
職業職種 | 法律・政治 |
弁理士の関連記事
「フォロー」をお願いします
最新情報をお届けします