弁理士の資格・試験とは?弁理士 資格試験の概要と合格の秘訣
知的財産を保護するために特許などの出願代行を行うのが弁理士という職業です。弁理士はどのような試験を受け、資格を得る必要があるのでしょうか。弁理士に必要な資格・試験について紹介します。
弁理士の資格とは?
国家資格である「弁理士」
弁理士は特許などの申請・出願の代行や異議申し立てを代行する職業です。それらは弁理士だけが行える業務として認められており、弁理士として活動するためには国家資格を取得する必要があります。
弁理士試験は3段階に分けて行われる
弁理士試験は年に1回、年間を通じて3段階に分けて行われます。受験資格には一切の制限がなく、年齢・性別・国籍・学歴など一切の条件が問われません。
それぞれの段階において、特定の条件を満たすことで試験内容が一部免除される制度が設けられています。条件によって免除期間が一定期間に定められているものと、無期限となるものがあります。
1次試験の試験形式は短答式
5月ごろに1次試験が行われます。試験形式は短答式であり、合格者のみ2次試験に進むことができます。
試験科目は下記の科目となっています。
- 特許法・実用新案法
- 意匠法
- 商標法
- 条約
- 著作権法
- 不正競争防止法
1次試験では、下記の条件を満たすことで一部の試験科目を免除することができます。
条件 | 免除対象 | 免除期間 |
---|---|---|
1次試験に一度合格 | 全ての試験科目 | 合格日から2年間 |
工業所有権に関する科目の単位を修得し大学院を修了 | 工業所有系に関する法令・条約の試験科目 | 課程修了日から2年間 |
特許庁において審判又は審査の事務に5年以上従事 | 工業所有系に関する法令・条約の試験科目 | 永続 |
2次試験の試験形式は論文式
7月ごろに2次試験が行われます。内容は論文式であり、合格者だけが3次試験に進むことができます。
試験科目は必須科目・選択科目に分かれており、それぞれ下記が出題されます。
■必須科目
- 特許法・実用新案法
- 意匠法
- 商標法
■選択科目
- 理工Ⅰ(機械・応用力学)
- 理工Ⅱ(数学・物理)
- 理工Ⅲ(化学)
- 理工Ⅳ(生物)
- 理工Ⅴ(情報)
- 法律(弁理士の業務に関する法律)
2次試験では、下記の条件を満たすことで一部の試験科目を免除することができます。
条件 | 免除対象 | 免除期間 |
---|---|---|
必須科目に一度合格 | 必須科目 | 合格日から2年間 |
特許庁において審判又は審査の事務に5年以上従事 | 必須科目 | 永続 |
条件 | 免除対象 | 免除期間 |
---|---|---|
選択科目に一度合格 | 該当の選択科目 | 永続 |
選択科目に関する修士または博士の学位 | 関連する選択科目 | 永続 |
選択科目に関する専門職の学位 | 関連する選択科目 | 永続 |
指定された公的資格 | 資格に対応する選択科目 | 永続 |
特許庁において審判又は審査の事務に5年以上従事 | 選択科目 | 永続 |
3次試験の試験形式は口述式
10月ごろに3次試験が行われます。内容は口述式であり、本試験に合格すると弁理士試験合格とみなされます。
試験科目は下記の科目となっています。
- 特許法・実用新案法
- 意匠法
- 商標法
3次試験では、下記の条件を満たすことで一部の試験科目を免除することができます。
条件 | 免除対象 | 免除期間 |
---|---|---|
特許庁において審判又は審査の事務に5年以上従事 | 口述試験 | 永続 |
弁理士試験合格後に実務修習を受けることが必須
弁理士は試験に合格した時点では弁理士としての活動をすることは認められていません。試験合格後に「日本弁理士会」への登録が必要ですが、登録のためには指定修習機関における実務修習を受ける必要があります。
現在存在する指定修習機関は「日本弁理士会」のみです。試験合格後の毎年12月ごろより実務修習はスタートし、e-ラーニングによる通信講座と、直接講座を受ける集合講習が行われます。
e-ラーニングは46.5時間(93単位)、集合講習は27時間(54単位)のボリュームがあり、12月から3月の間で順次行われていきます。この実務修習を修了すると、晴れて弁理士として登録が行われます。
弁理士の資格の難易度・合格率
弁理士試験の合格率は7%と非常に低い
弁理士の試験は大変難関として知られており、その難易度は公認会計士試験に引けを取らないとまで言われています。
特許庁が公開した平成30年度の弁理士試験の合格率は7.2%。受験者数3,977人に対し合格者260人という結果となっています。
理工系出身が8割
合格者の出身大学・大学院の割合は、理工系が82.3%と大半を占めています。法律を扱うことから法文系が強いと思われがちですが、工業製品の仕組みを理解する必要があることから、理工系の知識がなければ対応できない職業です。
法文系は12.7%にとどまりましたが、商標権を専門に扱う弁理士は、法文系の専門知識が生きる分野といえるでしょう。
高偏差値の大学出身者が多い
弁理士試験は受験資格がないことから、受験者の学歴にはバリエーションが多いイメージがありますが、実際の合格者は高偏差値の大学出身者が上位を占めています。
平成30年度の合格者の占有率上位8校は以下の通りです。
大学名 | 占有率 |
---|---|
東京大学 | 13.8% |
京都大学 | 11.2% |
大阪大学 | 6.7% |
慶應義塾大学 | 4.2% |
北海道大学 | 4.2% |
東京工業大学 | 3.8% |
早稲田大学 | 3.5% |
特に東京大学と京都大学は、ほとんどの年で合格者数上位トップ2を独占しており、高偏差値の大学出身者が目指す職業であることがわかります。
その他の弁理士に関連する資格
試験科目免除となる資格
2次試験の選択科目免除対象には、「指定された公的資格」があり、以下の資格を取得することで対応した選択科目が免除となります。
資格 | 免除される論文式筆記試験選択科目 |
---|---|
技術士 | 理工Ⅰ(機械・応用力学) |
理工Ⅱ(数学・物理) | |
理工Ⅲ(化学) | |
理工Ⅳ(生物) | |
理工Ⅴ(情報) | |
のいずれか | |
一級建築士 | 理工Ⅰ(機械・応用力学) |
第一種電気主任技術者 | 理工Ⅱ(数学・物理) |
第二種電気主任技術者 | |
薬剤師 | 理工Ⅲ(化学) |
情報処理技術者 | 理工Ⅴ(情報) |
電気通信主任技術者 | 理工Ⅴ(情報) |
司法試験 | 法律(弁理士の業務に関する法律) |
司法書士 | 法律(弁理士の業務に関する法律) |
行政書士 | 法律(弁理士の業務に関する法律) |
独立開業にもつながる資格も多く含まれており、弁理士の資格と合わせることで業務の幅が広がることも期待できます。
知的財産翻訳検定
近年では特許などの出願数は全体では減少傾向にありますが、国際特許出願は年々増加しています。特許には通常の英会話やビジネス英語には出てこないような、特殊な用語の理解が必要になるため、特許に特化した翻訳の技術が求められます。
「知的財産翻訳検定」は英文(和文英訳・英文和訳)・中文(中文和訳)・独文(独文和訳)で検定試験が設けられています。特許の訳者は常に人手不足といわれているため、特許に関わる仕事につく際には非常に有効な資格といえるでしょう。
知的財産アナリスト
特許の出願よりも、所有した知的財産をどう生かしていくかを提案するための知識を求める資格です。
主催する「知的財産教育協会」のホームページでは、知的財産アナリストを
企業経営・ファイナンス・知的財産という少なくとも3つの領域の専門性を持って「経営活動と知的財産活動を結びつけられる人財」、「知的財産の価値評価をできる人財」
と評しています。
特許の出願だけでなく、ビジネスとして活用する方法のコンサルティング業務も視野に入れる場合には、有用な資格といえるでしょう。
出典元:知的財産教育協会ホームページ
弁理士の資格が取れる学校
大学は理工系
平成30年の弁理士試験において、最終学歴が専門学校・短大・高校卒の合格者はわずか1名のみとなっていました。弁理士試験合格には、大学で専門分野を学ぶことが有効であることが伺えます。
また合格者の大半を理工系が占めていることから、弁理士を見据えた進学を考えるなら、理工系の学部へ進むことが求められます。
専門学校・通信教育
平成30年の合格者の平均受験回数は3.78回となっており、高学歴といわれる大学出身者でも簡単に合格できないことがわかります。試験合格に特化した対策を行うためにも、専門学校に通い対策を立てることは必須といってよいでしょう。
また弁理士の試験に合格するためには、一般的に3,000時間の勉強が必要といわれています。大学や専門学校の勉強時間だけでは当然足りませんので、独学の時間を持つことも必要です。
多くの専門学校では通信講座も行っているため、自宅学習用に通信講座を並行して受講することも合格への近道となるでしょう。
弁理士の資格・試験まとめ
超難関資格だが、取得できれば一生モノの職に就ける
弁理士の資格は合格率わずか7%前後という難関資格です。受験者は東京大学や京都大学といった、日本を代表するような高偏差値大学の出身者が多くを占めていることからも、その難易度が伺えます。
試験は3段階に分かれていますが、特定の条件を満たすことで一部の試験を免除することが可能です。上手に免除制度を活用し、3年程度かけて合格するという方も多いようです。
理工系の大学への進学が近道
弁理士は工業製品の知的財産を扱うことから、理工系大学出身者の合格者が大半を占めています。試験対策は専門学校や通信教育を上手に活用しつつ、理工系大学で工業製品に対する専門的な知識を学ぶことが弁理士合格への近道でしょう。
弁理士の参考情報
平均年収 | 700万円~1000万円 |
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必要資格 |
|
資格区分 | 国家資格 |
職業職種 | 法律・政治 |
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